#7 さようなら
次の日は暁の誕生日。パトナはもうこの世界から姿を消す。それを考えて、暁は一日学校を休んだ。この日だけは、学校を休学することが出来る決まりである。体調は一休みして回復し、動くことが出来た。
最後の一日。パトナはいろんな話をした。別れを惜しむかのように。その事に気を使ったのか、茜とキララは早朝から学校に出かけた。水入らずにはお邪魔かなと思ったらしい。
でも、そのおかげで、気兼ねなくなんでも話すことが出来た。
何故神は、私をこの世に産み落としたのか?パトナを遣したのか?それを考える。もしかしたら、常識を乗り超えた中で、真実の生き方を要求したのかもしれない。そう思い始めた。暁なら、これを乗り切ることが出来るかもしれないと言う試練。ならば、とことんその要望に応えてやろうかなって思った。
パトナはそんな暁の思ったことを言葉として受け取り前向きな暁を感じ取った。もう、自分の役目は終わったのだとそう感じ安心した。
時間は早く過ぎ去っていく。そして、別れの時がやってきた。
ポウッと七色に輝くシャボン玉にパトナは包まれ、浮き上がる。それは、茜の部屋の窓からゆっくりと飛び立ち始める。
暁はその後を追いかけた。いつまでも快晴の空を仰ぎ見る。手を振り続ける。そして、完全に消え去ったシャボン玉は、一粒の雫となって暁の掌に残ったのである。
「ただいま〜」
夕方、茜とキララが帰ってきた。
「パトナ君はもう行っちゃったんだ……」
茜は落ち込んでいるであろう暁にやさしく問いかけた。泣き出すんじゃないかって気を配ったつもりだった。しかし、暁は微かに微笑んでいた。茜は、まるで別人であるかのように見えた。
「心配する必要性はないようだね?」
茜はホッと息を吐く。自らの誕生日に、キララが居なくなる時、自分はこんなに冷静で居られるであろうか?ふと、脳裏にそれがよぎる。産まれた時から一緒。それがどれだけ酷なものか……考えると色々思い出される光景。それが走馬灯のように流れるに違いない。
「橘さん?」
いろんな事を考えていた時、暁から言葉を発した。
「あの……友達になってもらえないかな?あ、ううんなって欲しい!」
そんな言葉が暁の口から漏れ出した。
「え?」
一瞬聞き間違えたんだろうか?暁からそんな言葉が口から出るなんて思ってもいなかった。でも直ぐに応えた。
「勿論だよ!そんな風に言って貰えるなんてうれしい!大歓迎!」
キララが鞄から顔を出す。本気で喜んでいる茜を見てニコニコと笑っていた。
神が取り組んだこの『パトナ計画』はこうやって今でも根付いている。その判断は間違っているのかどうかは現時点ではまだ試作品であって、完全な物ではない。でも、ごく自然に育っている人間は依存することを放棄しなくてはならない。
まだまだ、完成を待つ必要性、有り。
でも、人間は強い生き物である。それは間違いない。
FIN―
このようなものを書いてたら、神の存在を肯定してしまう自分に吃驚デス。でも、居てくれたらイイナァ〜でも、人間のしてる事にちゃんと目を見張ってくれてる神様が良い。
じゃないと、この世界自身が物語みたいに感じるから。
と言う事で、パトナ計画はこれにて終了です。
おつきあいありがとうございました。
次回は。。。何をUPしようかちょっと考えてみます。では、またお会いしましょう。