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#5 思わぬ事件

 茜は、プリントを取りに戻り、大雨の中一時間かけて自宅に戻る。そして自らの部屋に駆け込んだ。だけど、いるはずだと思い込んでいた暁とキララはそこには居なくて、パトナが座布団の上で本を読んでいた。

「あれ?門倉さんとキララは?」

その言葉に、

「え?帰ってきてないよ?暁も一緒なの!?」

 一瞬、パッと表情が明るくなったパトナであったが、慌て始める茜に気が付き、小首を傾げた。

「そんな……戻ってないってどう言う事?」

 どう考えたって変だ。追い抜くなんて考えられない。外は大雨。ここまでの道のりには一つ小高い丘を越えなければならない。もしかして迷子になっているのか?それとも……事故?

 不安な気持ちがパニックを引き起こし始める。キララが居るからと安心していたのに、この有様では気が気で入られない。

「どうしたの?茜ちゃん……もしかして暁とキララちゃんの身に何かが有ったの!?」

 パトナは何かとてつもなく不安にかられ、茜に問いかけた。その言葉に、

「パトナ君!これから門倉さんとキララを捜しに行くから、ここで待ってて!」

「捜しに行くって!?じゃあ、僕も行く!」

 茜は、パトナの要望を聞き入れ、茜は大雨の中傘を差し自宅から飛び出たのである。


 その頃、暁とキララは森の中の小さな崖の下にいた。泥濘に足を取られた暁は、バランスを崩しキララと共に転がり落ちたのである。そして、暫くの間もとの道に這い上がろうとしたのだが、自らの身長より高い崖と、雨で濡れた土で上手く登ることが出来なけて途方に暮れていたのである。しかも、ここのところの徹夜が災いし、身体が熱っぽい。やがて眠気が襲い始めた。

「ダメだよ、暁ちゃん!起きて!」

 キララはその様子を見て必死で起こそうとした。もちろん、キララの背丈ではどうすることも出来ず、とにかく大きな声で助けを求めることもしてきた。が、普段ここを通る人など稀で助けは来ない。でも、頑張って大きな声で助け手を求めた。もう、声はガラガラである。

「パトナ……」

 横でうわごとのように暁が呟いている。キララは泣き出しそうになっていた。何でもっと注意してあげられなかったんだろうと思っても、後の祭りだ。キララはもう声が出なくなっていた。そして容赦なく降る雨は酷くなる一方であった。


 茜はパトナを肩の上に乗せ懸命になって暁とキララを捜した。ここまでは道は一本しかない。だからとにかく学校までの道のりを引き返していた。

「雨、酷くなってきたね……シッカリ掴まっているのよ。パトナ君!何か気がついたら教えてね!」

 茜は必死になって辺りに目を配った。しかし、今のところ何の手がかりも掴めない。根気強く注意深く。足元の泥濘を気にしながら歩いた。三十分は掛かっているだろう。もう半分近く歩いている。そして、やっと手がかりが見つかったのである。

 泥濘にずり落ちたかのような足跡。それを確認すると、まっすぐその下を見下ろした。

 すると、崖下に横たわっている人影が見えたのである。

「キララ!門倉さん!」

 必死で呼びかけた。すると、微かではあるが、か細い枯れかかった声が聞こえてくる。

「キララ!?」

 それはまさしくキララのものであった。しかし、こんな崖からどうやって二人を救出すべきであろうか?茜は考えていた。そんな時パトナが、

「縄!何処かにないかな!?」

 人里はなれたこんなところにそんな物はあるはずがない。と、思って一度家に帰ろうと思っていた矢先、近くに掘っ立て小屋が有ったことを思い出した。もしかしたら何かあるかもしれない?と思うとすぐさまその小屋へと足を向ける。すると都合よく自らをも支えることが出来るような太い縄があった。無断で借りますが、すみません……茜はそれを借りて元の場所に戻った。

 戻ると、傘を置き身近にある太い木に縄を結びつけ、自らの腰にもそれを巻きつけゆっくりと降りていく。そして、身体の大きい暁を抱きかかえると必死で縄を手繰り寄せながら登っていった。

 もう、体中の力を使い果たし感じである。身体の節々が痛くてしょうがない。でも、運よく通りかかってくれたこの道を通る近所の大人に出逢い、茜たちは助けてもらって、家までたどり着いた。

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