【第14話】 地下迷宮②
【前回のあらすじ】
ママ「むむ……また新しい女の気配が……」
「めぇぇ……。なるほど、それでパオちーは、ブタさんのパーティーに入ったわけですかぁ」
「は、ハオ。勿論やさしい若様の御慈悲だとはわかっておりますが、パオみたいなゴミ屑ウジ虫をオビィ様の端女として召し抱えていただけて、パオはまるで、天にも昇る気持ちでした」
「ふぅーん。でもしょせん、オークなんでしょ? じつはいろいろと、陰でイタズラされていたりしない? 必要なら相談に乗るわよ?」
「めめめ滅相もない! パオのようなゴミ屑キモ虫に若様がお手付きしてくださるなんて、天地がひっくり返ってもあり得ませんよ!」
「そうかなぁ……。パオちゃん、前髪を上げたらふつうに美人系な顔だと思うんだけどなぁ……」
そのように姦しく言葉を交わすのは、金等級クラン〈蕾の守護者〉に所属する羊鬼のメイリー、闇精人のエミリア、夢精鬼のユンファに、先ほど合流したばかりの蟲人の少女――パオヘイを加えた、四名の可愛らしい少年少女たちであった。
「う~ん……でも、やっぱり納得いかないわ! 貴方みたいな可愛くて才能ある子は、是非うちのクランに入るべきよ! そして華麗なるワタシの引き立て役になりなさい!」
「めえぇぇ~、パオちーが加入してくれるなら、メイリーのユニット強化間違いないですぅ~。これでまた、新しいファン層を獲得できますよぉ~」
「団長だってパオちゃんみたいな子なら、文句は言わないと思いますし!」
「そそそそそんな、おっ、畏れ多い! ブーハオ! パオはただ、若様にお仕えできるだけで満足で……」
「……まあ価値観とは、人それぞれです。あまりパオヘイさんを、困らせてはいけませんよ」
にわかに盛り上がるクランメンバーを窘めたのは、この薄暗い洞窟内においてもまるで美貌の損なわれた様子のない桃金髪の一角鬼――ローズだった。
「めぇぇ~、副団長、ノリが悪いですよぉ~。ぶぅぶぅ~」
「ブーブー、ですわぁ~」
「だ、ダメだよ二人とも! 副団長に失礼だよ!」
「まったく、この状況下で貴方たちは、図太いというか豪胆というか……」
唇を尖らせる羊鬼と闇精人を、慌てて押し留める夢精鬼。そんな少女たちの普段と変わらない調子に苦笑しつつ、しかしどこか励まされている自分に、一同の先頭を務める女冒険者は気付いていた。
(平気なわけ……ありませんよね)
なにせ自分たちは現状、古代魔法によって創造された〈地下迷宮〉に、囚われてしまっているのだ。つまりは敵の勢力圏内。そのうえ魔法の発動時に仲間たちとは引き離され、ふたたび合流できる確証もない。
そんななか、迷宮への転移時に近くにいた彼らとともにいることが、ともすれば挫けてしまいそうなローズの心を、なんとか支えていた。
(そうです。わたくしがこの子たちを、守らないと)
改めて自分を戒める女冒険者の脳裏に浮かぶのは、彼女の所属するクランを率いる金等級冒険者の横顔。
常より『可憐で繊細な蕾たちを、僕たちの手で守りたい』と口にする幼馴染みの姿は、緊張に強張ったローズの頬を、わずかに弛緩させるだけの効果があった。
「あ、副団長が笑っていますわ!」
「めぇぇ~。どうせまた、団長のことでも考えていたですよぉ~」
「そ、そそそ、そんな! どうしてわたくしが、ホーリーのことなどを考えなければならないのですか!? 事実無根ですわ! 変な言いがかりはよしてください!」
「あの、もしかして副団長、自分の気持ちが周りに隠せているとか思っています……?」
夢精鬼のあまりに残酷な質問に、今度こそローズの美貌が硬直した。
「な、何故、そのことを……っ!?」
「いや普通に、見ていればわかりますわよね?」
「たぶん気付いていないのは、本人だけですよぉ~?」
「だ、大丈夫ですよ副団長! 団長だって、いつか副団長の魅力に気付きますって!」
すでに十年以上にもおよぶ恋心の暴露に、初恋を拗らせている自覚のある女冒険者は、状況も忘れてその場に「うぅぅぅ~っ!」と頭を抱えて座り込んだ。その背中をポンポンと叩いたのは、この場で唯一のクランメンバーではない目隠れ少女である。
「あの……差し出がましいことかもしれませんが、よろしければ良く効く媚薬でも、調合いたしましょうか?」
「……なかなか貴方も、見かけによらず大胆なことを言うのですね。しかしその情け、有り難く頂戴させていただきます」
自分もすでに二十代の半ば。冒険者生活に不満はないとはいえ、婚期を逃しつつある自覚が強まっていた女冒険者に、薬物に頼ることへの忌避感はない。なんなら排卵剤や精強剤もセットでお願いしたいところだ。
「そのためにはまず、仲間たちと合流して地上に戻らなくてはいけませんね。パオヘイさん、方向はこちらでよろしいですか?」
「は、ハオ。少々お待ちを!」
ローズの問いかけに応える少女の背中には、変異魔法によって、四枚二対の美しい蝶翅が生み出されている。そこから溢れて洞窟内を漂う〈揚羽蝶/エメラルドパウダー〉が見通しの悪い迷宮において、探知魔道具の役割を果たしていた。
不運にも自身のパーティーメンバーから引き離され、単身で迷宮内に転送されてしまったパオヘイが、早々にローズたちと合流できたのも、彼女自身のそうした能力によるところである。
「……大丈夫、です。進路上に魔人教や魔獣の気配はありません。それとは別に、もう少し先にドワーフらしき人影をひとりぶん、探知いたしました」
「そうですか。おそらく〈大槌〉のメンバーでしょうね。迷宮内で彼らと合流できるとは運がいい。そこまでの案内、お願いできますか?」
「ハオ! お任せください!」
「……う~ん、やっぱり有能よねぇ。ぜひともうちのクランに欲しいですわぁ」
「めぇぇ~。まあまだ、勧誘のチャンスはありますよぉ~」
「だ、ダメだよぉふたりとも、無理強いしちゃぁ……」
依然として状況は好転の兆しを見せていない。
それでも希望を絶やすことなく、冒険者たちは前へ進んでいく。
●
一方で、そのように探索能力を有する者、あるいはそうした者と運よく合流できた冒険者などは、敵対勢力との遭遇を避けることで、比較的安全に迷宮内を探索することができていた。
だがそうでない者にとって、残された選択肢はふたつ。
危険を承知でその場に留まるか、
危険を覚悟して前に進むか、だ。
「きぃえええええええいっ!」
そして後者を選んだサムライがひとり、迷宮の暗がりや死角から突発的に襲い掛かってくる魔獣たちを、猿叫とともに斬り伏せている。その雄叫びがさらなる魔獣を誘っているのだが、本人がそれを気にした様子もない。堂々とした足取りで、金等級冒険者が洞窟内を進んでいく。
「待て、そこまでだ!」
「抵抗は無意味!」
「大人しく投降して、我らの慈悲を受け入れよ!」
魔獣たちが相手では一向に止まる気配のないサムライの進行に、痺れを切らしたのか、じきに三角頭巾の邪教徒たちが姿を現した。一直線の通路で金等級冒険者を挟み込むように展開する彼らは、手にする宝玉の埋め込まれた魔導書で魔獣たちを使役している。圧倒的な地の利、数の利に、彼らはまるで自分たちの優位を疑っていない。
「……ふっ、笑止」
だからどうしたと、初老の金等級冒険者――ワビスケは嗤う。
「たかだか敵の罠に嵌められ、敵陣にて孤立し、援軍の見通せない戦場に身を投じることになったからといって……まさか『その程度のこと』で、ヒノクニのサムライが、戦意を喪失するとでも?」
初老武士の顔に浮かんだ獰猛な笑みに、ようやく懲罰使徒たちは、彼と自分たちとで、狩る者と狩られる者の認識が異なっていることを理解する。
「……っ!? き、貴様、正気か!?」
「この状況で、生き延びられるとでも!?」
「狂人め! 見苦しいぞ、潔く魔人様の裁きを受けろ!」
世間では邪教徒として認知されている三角頭巾たちに、狂人認定されてしまった金等級冒険者。だがそんな糾弾の声は、初老武士の歩みを留めるには至らない。
「狂人結構。討ち死に上等。戦場で狂い、首級を討ち、難敵に討たれることこそ、武士の誉れ。武士道とは死ぬことと見つけたり。不肖ダンジョウ・ワビスケ、参るっ!」
「チェストォオオオオオオッ!」
高々と名乗りをあげて、前方の魔獣と懲罰使徒たちに突撃していくワビスケ。その背中側から響いた声は、聞き覚えのあるサムライのものだった。
「おぉクロガネ、生きておったか!」
「ワビスケどんこそ、ご無事で何より!」
不意をついた懲罰使徒を瞬く間に斬り伏せたのは、顔に横一文字創を刻んだ若武者――クロガネだった。予想外の乱入に、動揺したのは金等級冒険者と対峙する懲罰使徒だ。
「な、コイツ!?」
「どこから湧いてきた!?」
「……なんて、スキありにゃっ!」
「……油断大敵、なぁーご」
一瞬の隙を逃さず、懲罰使徒たちの背後をとったのは、闇に紛れていた猫人姉妹――カトラとタルマ。ヒノクニの忍者たちが敵の首元を掻っ切ると、支配者を失った魔獣たちの統制が乱れる。あとは魔獣討伐に手慣れた、サムライたちの独壇場だった。
「……はっ、他愛なか! もっとマシな首級をとらんと、ヒビキどんに面目が立たんぞ!」
「ぬ……してクロガネよ。そのヒビキ殿は何処へ? 御姿が見当たらんが」
「知らん! はぐれてしもうた!」
「……」
堂々と己の失態を口にする若武者は、一片の迷いもなく告げる。
「じゃが無事じゃあ! テッシンどんの愛弟子ともあろうもんが、この程度の不覚で窮地に陥る道理はなか! じゃっど、おいは主の刃として、ただ敵兵を討つのみ!」
「……ぬぅ、確かに。一理ある」
「え、ワビ様、納得しちゃうのにゃ!?」
「所詮スケ様も、ガネ様と同類なぁーご……」
クロガネの謎理論に同意を示したワビスケに、魔人教を相手にしているときよりもどんよりとした表情を浮かべる猫人姉妹。
「良し、ならば先へ進むぞクロガネ。敵将とは常に、敵陣の奥に構えておるもの。おぬしもそれを目的として、ここまでやってきたのであろう?」
「ん? んん、無論じゃ!」
「クロ様クロ様、余計な見栄は張らないほうがいいのですにゃー」
「無闇に突っ走ろうとするガネ様を、ウチらがここまで引っ張ってきたのですなぁーご」
増々、表情の苦みを濃くしながら告げ口するクノイチたちである。とはいえ、そうした索敵能力や隠密潜行に秀でた猫人姉妹を同行者に引き当てるあたり、やはりこの若武者は、並々ならぬ悪運を天から与えられているのだろう。
(さてさて、ヒビキ殿との巡り合いで、こやつの強運がどう転がっていくことやら……)
そんな期待を胸に抱きつつ、答えを得るためには、とにかくこの場を切り抜けねばならない。
「クロガネ、タルマ、カトラ、参るぞ。当然他のサムライたちも、各々で大将首を狙っておるじゃろう。しかし一番首級を挙げるは、我らぞ! 皆に後れをとるでない!」
「応ともワビスケどん! じゃっどん大将首は、オイのもんじゃ!」
「……にゃー。タルマこれ、合流して逆効果じゃないのかにゃー? さっきよりも不安がマシマシなのは気のせいかにゃー?」
「おねえちゃん……愚痴は、帰ってからにして欲しいなぁーご」
かくして意気揚々と、サムライたちは歩を進める。その背後に、げっそり頬が窪んだ、猫人姉妹が付き従った。
●
「……もう嫌だ……っ」
そうして士気を高める冒険者たちがいる一方で、当然のことならが、この望まぬ状況下において心身を弱らせている冒険者もいる。彼もまた、そのうちのひとりであった。
「ん? なんだいなんだい色男。怖いんだったら、オレっちに抱き着いてきてもいいんだぜぇ?」
「かー、最近の若者は、情けないのう! 冒険者ならこの程度のピンチ、笑って乗り越えんか!」
「ハオ。敵地で弱気は、命取りヨ。逆境こそ、笑顔が大事ネ」」
後方から漏れた同行者の弱音に、全身が獣毛に覆われた筋肉隆々の猿鬼――ゴクウと、蟲華国風の衣装をまとう緑鬼――バクウン、大斧を肩に担ぐ禿頭の土精人――モッソが、それぞれの反応を見せる。
しかしながら単独冒険で知られる銀等級冒険者の賢鬼――モリィシュタルの求めていた答えは、そのどれでもなかった。
「あああああ! なんでっ、なんでこの僕が! こんなムサ苦しい筋肉達磨どもに囲まれないといけないんですか! 美少女を! せめて女性を誰か、寄越してください!」
「おいおい、ツレねぇことを言うなよ色男ぉ~」
「たまたまワシらに拾ってもらっておいて、贅沢を言うな」
「嫌ならワタシたち、別行動でも問題ないネ」
つれない緑鬼と土精人の物言いに、表情を歪ませて「……ぐぅ」と続く言葉を呑み込む賢鬼。事実、索敵能力が乏しい彼が単独でこの迷宮攻略に挑むのは、自殺に等しい無謀であった。
「まあまあ、そう冷たくすんなよおふたりさん。冒険は道連れ世は情けって、言うじゃねぇか。こんな状況だ。せっかく合流できた戦力を、分散させるのは愚策だぜぇ~?」
「それはまあ、のぅ」
「べつにワタシは、どちらでもいいネ」
あわや一同に漂いかけた不穏な空気を払ったのは、底抜けに明るい猿鬼の声だった。金等級冒険者の前向きな提案に、前衛のふたりは不満を引き下げる。それを確認したゴクウは、後衛を担うモリィシュタルのもとへと移動した。
「色男もそう片肘張らず、リラックスして行こうや。なに、はぐれた仲間が心配ってぇのは、オレっちも同じさ。でも、だからこそ、テンパって突っ走った挙句に自爆ってぇのは、一番笑えねぇだろぉ?」」
「……」
ごく自然に肩を組み、気安く語りかけてくる金等級冒険者。仮にも同じ組織に属する上位者からそのように気を遣われては、常識ある銀等級冒険者として、不満を呑み込まざるを得ない。
(そうです、ここは忍耐のとき。それにピンチはチャンス。この状況下、あわよくば魔獣に襲われている女性冒険者のもとへ、颯爽と駆け付ける展開も――)
――むんずっ、と。
なかば現実逃避していたモリィシュタルの思考は、自身の臀部を力強く揉みしだく、肉厚な掌の感触によって呼び戻された。
「……それにお前さんには、前々から目をつけていたんだ。この際だ、たぁーっぷりと『親交』を深めていこうぜぇ?」
「…………」
「ウホッ」
「い、いやぁああああああああっ!」
冒険者の口から、乙女のごとき悲鳴が迸った。
●
「……むむっ」
「ん、どうしたでありますか、ミミル。旦那様の声が聴こえたでありますか?」
「いや……微かに、スケベ眼鏡の悲鳴が聴こえたような……」
「なら放置で問題ないでありますね」
「ですピョン」
「アハハ。この状況でふたりとも、ブレないねぇ~」
あっさりと一応は顔見知りである賢鬼の窮地を切り捨てて、迷宮探索を再開するウサギ耳を生やした兎人――ミミルと、光源である〈発光〉を発動した魔法杖を掲げる森鬼――シュレイに、同行する青鬼の魔法士――ヒューリーが、頼もしそうに笑声を漏らす。
「サクヤ殿。どちらだ?」
「おそらく左、ですね」
そんな彼らの前方には、迷宮内の岐路にて進路を相談する、褐色肌の女蛮鬼――オビィと、魔法によって人型の紙を空中に浮遊させた巫女少女――サクヤの姿があった。東方にて『式神』と呼ばれる魔法触媒は、風もないのにゆらゆらと揺れて、分岐路の左手側に反応していた。
「そちらに、婿殿が……」
「申し訳ありませんオビィ様。この迷宮内には侵入者の魔力探知を妨害する魔法回路が張り巡らされているようなので、わたくしの拙い占術に、あまり過度な期待をされましても……」
「……いや、すまない。ダメだな、気が急いている」
「いえ、全てはわたくしの未熟ゆえ。至らぬこの身を、どうかご寛恕くださいまし」
恭しく腰を折る巫女少女とて、従者たちと引き離されたことに不安を抱いているはずだ。そんな彼女にすら気を遣わせていることに、残された隷妹たちを率いる主人として、女蛮鬼は逸る自分の心に喝を入れる。
(大丈夫、婿殿のことだ。オレが心配するほど、婿殿は脆弱でも薄弱でもない。今もこの迷宮内のどこかで、オレたちと合流する手立てを探っているはず)
そう自分に言い聞かせるオビィに、こんな状況下でもいつも通りの呑気さで、声をかけたのはヒューリーだ。
「アハハ、そんなに、思いつめないほうがいいよ~。現実なんていつだって、なるようにしかならないんだからさぁ~」
「……ヒューリー殿は、心配ではないのか?」
「ん? ボクかい? そーだねぇー。まあうちの場合、リーダーはあのとおり殺しても死なないような男だし、バクはむしろ、そのへんの魔獣を捕まえて舌鼓をうっているかもしれないからねぇ~。あんまり心配はしていないかなぁ~」
はたしてそれは仲間への厚い信頼なのか、はたまた上位冒険者としての現実主義なのか、あるいはただの楽観論なのか、まだ冒険者として日の浅い女蛮鬼には判別しかねる。しかしそのいずれだとしても、こういった危機的状況においてまるで平時と変わらないその姿は、確実に同行者たちの精神安定に一役買っていた。
(……本来ならそれは、オレの役目だ)
まだまだ至らないな、と自分の未熟を噛みしめる副団長。
「まーでも、オビィちゃんたちが不安になる気持ちもわかるよ、うんうん」
そのような同行者の胸中を慮っているのかいないのか、ヒューリーはあくまで気楽な調子で話を続ける。
「なんたって、『あの』ヒビキくんだからねぇ~。滅多なことはないと思うけど、またどこかの女鬼士や女冒険者や女邪教徒あたりにラッキースケベを炸裂させている可能性は、十分にあるよねぇ~。アハハハハ!」
「……」
「……」
「……」
「……ふぇ?」
突然高笑いを始めた青鬼に、首を傾げる巫女少女。一方でその意味を的確に理解した女蛮鬼とその隷妹たちは、能面のような真顔を浮かべていた。
「……みんな、先を急ぐぞ」
「ですピョン」
「旦那様のことであります。確実に、また何かやらかしているでありますよ。旦那様の過ちを正すのは隷妹の役目であります」
「え? あの、皆様? えっ?」
「アハハ! やっぱりキミたちは、面白いねぇ!」
なお愉快そうに笑う青鬼。ただひとり状況が理解できずに狼狽える巫女少女。そんな同行者を引き連れて、女蛮鬼たちは迷宮探索の速度をにわかに引き上げるのであった。




