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ブギーテイル ~異世界豚鬼英雄譚~  作者: 陽海
第二章 会縁鬼縁編
34/83

【第05話】 新生活①

【前回のあらすじ】


 ラブコメさんがアップを始めました。





 俺が女蛮鬼アマゾネスの集落に居ついて、

 一ヵ月ほどが経過した。


 彼女たちの朝は早い。


 とはいえそれは「前世における俺の感覚」であって、夜間照明器具などが一般的に普及していないため就寝時刻の早いこの世界では、朝日とともに始まる一日というのはわりと普通のことだ。


 というわけでこの世界での人生も五年目に突入した俺である。


 太陽が顔を出し養鶏たちが鳴き始める前には、

 問題なく起床して身支度を整えていた。


「うっし、そろそろ行くか」


 水桶に汲んである水で顔を洗い、アマゾネスから支給された隷夫用の衣装を身に着ける。ついでに左右の豚耳に輝く金環ピアスに魔力を循環。魔道具が正常に作動することを確認してから、俺専用として与えられた隷夫れいふ簡易家屋テントを出発する。


「失礼シマス」


 そこから徒歩一分もかからない大型テントを訪れることから、俺の一日は始まるのだ。


「オハヨウゴザイマス、パトラサマ」


 少しでも早く上達するために、

 慣れない公共語で挨拶を行う。


 テントの主は自分のことを『様』付けする必要などないと言っていたが、せめて人目のつく場では礼儀を守っていこうというのが、俺のスタンスである。


「オハヨウゴザイマス、パトラサマ」


 二度目の呼びかけ。

 返答はない。


(……はあ。またか)


 この場合は入室可だと許可をとっているので、

 布地に細かい刺繍の施されたテントの内側へと踏み込む。


 直後に『むわぁっ』と、鼻孔をつく匂いがあった。


「酒臭ぇ!」


 思わず素で怒鳴ってしまうのも致し方ない。


 なにせ、

 黄金に輝く動物の彫像。

 不可思議な光を宿す水晶。

 フワフワと足裏を撫でる絨毯。

 うっすらと紫煙をたゆらせる銀細工の香壺。

 一見して格式の高さを思わせる品々で埋め尽くされた室内だが……


 足元に転がる、大量の酒瓶。

 それらが全てを台無しにしている。


「スー……うみゅぅ……」


そしてテントの中心には自身の背丈と同じくらいの抱き枕に両手両足でしがみつき、穏やかな寝息を立てる、白髪褐色肌の大族長様がいた。


「ああもう……こんなに散らかして。また夜遅くまで飲んでいましたね」


 なんでも鬼人オーガンとは、もっぱら酒好きな人種らしい。

 女蛮鬼アマゾネスもそれは例外ではなく、ほぼ毎晩あちこちのテントや広場で酒盛りが行われている。


(だとしても、この醜態はあんまりだよなぁ)


 初日に感じた大族長への敬意を返して欲しい。


「はぁ、また部屋の片づけか。……とその前に、ホッ、ホッ」


 腕を回す。

 膝を伸ばす。


 軽く身体を捻って柔軟しつつ、

 涎で寝顔をベタベタにした大族長様に近づく。


「ほら、パトラさん起きてください。じゃなかった……パトラサマ、起床、デス」


 おそるおそる、慎重に、

 大族長【パトラ】さんの肩を揺らす。


「……ゥ……うみゅぅ……」

「朝、デス。早ク、起床、オ願イ」

「……むぅ……朝ぁ?」


 警戒心を保ったまま呼びかけを続けていると、

 パトラさんがムニャムニャと反応し始めた。

 寝ぼけているのか語尾が伸びている。


「うぅん…あと五時間……」

「寝坊にしては大胆すぎますよ。とっと起きてください。じゃない……起床、オ願イ」

「むぅ……なんじゃあ、鬱陶しいのぅ……」


 重い褐色の扉が開かれると、

 黄金の瞳が俺を捉えた。


「スンスン……これは……雄の……匂い……」


 ひくひくと、小ぶりな鼻が鳴る。

 徐々に、瞳に感情が宿っていく。


 だがそれは理性的なものではなく、

 獲物を前にした肉食獣のそれだ。


(来たっ!)


 瞬時に強化魔法を発動。

 俺が構えるのと、パトラさんが飛び起きるのはほぼ同時。


「ちっ、えぇい抵抗するな! 大人しくせい!」

「落チ着イテ! 落チ着イテクダサイ!」

「よいではないかよいではないか!」

「落チ着イテ! お、落チッ……」

「ぐるぐるぅ! がう! がう!」

「だからなんで毎回逆にビースト化しているんですか!?」


 全く会話が噛み合わない。


 四足獣の姿勢で襲ってくるパトラさんに対して、

 抵抗する俺にもはや公共語を用いる余裕はない。


(この魔道具、翻訳機能が壊れてるんじゃないだろうな!?)


 ちなみに先ほどまでパトラさんの言葉を滑らかに理解できていた理由は、彼女が神聖語を使っているからではなく、俺の左耳で輝く環状ピアス型魔道具の効果である。


 これは俺の母親マリーが用意してくれたもので、

 なんでも──


『浄火軍が捕らえた亜人デミを尋問……ゲフンゲフン。ではなくて、神聖語しか話せない真人ヒューマが、他種族との交流を円滑にするために開発したものなのですよ』


 ──とのこと。


 途中でダークな背景が垣間見えたが、

 魔道具そのものは便利なのでスルーしている。


 効果は『他人が口にする言葉を「空気の振動」ではなく「言葉に含まれる魔力」=「言霊」として受信できる』というもの。


 つまりは魔力を用いた翻訳機だ。


「んもう、貴方あなた様の恥ずかしがり屋めぃっ! 燃えるぞぃ!」

「クソ、やっぱり寝ぼけているだけか!」


 よって残念なことに、寝ぼけた性獣との意思疎通機能は搭載されていない。


「あぁああ貴方あなた様ぁ! なぜ拒むのじゃぁ!?」

「違う! だから俺はアンタの旦那様じゃありませんって!」

「キス! ちゅー! ちゅー!」

「だぁああ酒臭い! 百年の恋も覚めるわ!」

「脱げ! 見せろ! 嗅がせろ!」

「させるか! 今日こそは下着だけは死守させてもらいますよ!」


 いちおう補足説明しておくと、

 パトラさんの旦那さんはすでにお亡くなりになられている。


 強く雄々しく逞しく目が合っただけで濡れる男……とは、故人を知るアマゾネスたちの言である。


 そんな旦那さんに操を立てていまだに未亡人を貫いているパトラさんには敬意を覚えるが、普段は押し殺した恋慕と性欲が寝起きに炸裂するところだけは勘弁してほしい。


 いったい何人の隷妹が毒牙にかかったことかと、

 俺にこの話を教えてくれたアマゾネスは嘆いていた。


 ともあれ数分後。


「すぅー、はぁー」

「うぅ……また勝てなかったよぉ……」


 乱暴に衣類を剥ぎ取られ咽ぶ被害者と、

 戦利品を顔に押し当てて深呼吸する加害者の姿があった。


「ヌゥ……この瑞々しくも青臭い香りは、童貞。すなわちヒビキか」

「その判断のされかたは毎回どうかと思いますが、そうです、俺ですよ」

「うむ、朝の務めご苦労であった。褒美をやろう。こっちへこい」

「行きませんよ!? っていうかごく自然に布団に戻らないでください! さてはまだ寝ぼけてますね!?」

「ん、わらわは正気じゃよ?」

「なおタチが悪いですよ!」

「なに、そうケチるな。ちょっとだけ。味見だけじゃから。のぅ?」

「酔っ払いの言うことなんて信じられませんよ! ほら出て! 出てきてください!」

「ふふ、よかろう。嬉しいくせに素直になれない童貞小僧めが。望み通り、引きずり込んでくれるわぃ!」

「迷惑以外の何物でもない!」


 そんな感じでパトラさんを引きずり出すのに、

 さらに十数分を要しましたとさ。

 まるっ。


        ◇◆◇◆◇◆


「え、えっと、それは、大変でしたね……」

「ハイ、ソノ通リ、デス」


 そんな朝の騒動から半刻後。

 回収した汚れ物を洗濯するために、

 俺は集落の近場にある川辺に足を運んでいた。


 ジャブジャブと布を洗濯板に擦り付けつつ、

 傍らの少年に相槌を打つ。


「毎朝、トテモ、苦痛、デス」

「で、でも、そうしたパトラ様の行動は、し、信頼の、裏返しですから、むしろもっと喜んだようが、いいのでは……?」

「ソウ、ナノデスカ?」


 そうかなぁ。

 そんなもんかなぁ。


「そ、そうですよ! だ、だって、パトラ様、気に入らない男が近寄ったときは、たとえ宴の最中であっても、その場で半殺しにして全裸に剥いて集落中を引きずり回して傷口に塩を塗り込んだあとで魔獣たちの巣穴へ放置なさると、は、ハミュット様も仰っていました、から……」

「うわぁ……」


 想像以上に酷い仕打ちにドン引きだ。


「だ、だから、自分に自信を持ってください。ヒビキ様は、よくお勤めを、果たされておりますので……」


 ゴシゴシと布を洗濯板に擦り付けながらそんなふうに励ましてくれるのは、いちおうは、まだ十歳そこそこの幼い少年である。


 なぜ『いちおう』と注釈したかといえば、

 理由は見た目。


 まずその頭。

 本来ならそこにあるはずの人型ではなく、

 彼は自身の頭部をすっぽりと覆う魔獣の頭蓋骨を被っている。

 そのせいでほとんど表情は伺えない。


 そして身体。

 彼の身体は俺よりも大きく、

 すでにヒューマの成人男性ほどもある。


 なにせ彼には大鬼オーガの血が流れているらしいからな。

 成人にもなれば優に二メートルを超える巨漢揃いのオーガ種であれば、この年齢でこの体格でも不自然はないのだという。


 だが頭蓋仮面と巨躯。

 奇異なるそのふたつを除けば、あとは年相応。

 むしろ年齢よりも幼く思えるくらいである。


 おどおどした態度。どもり気味な口調。頭蓋仮面から唯一見える口元には、常に卑屈な笑みが張り付いている。それらはきっと、彼なりの自衛手段なのだろう。その出自を考えれば、理解できないこともない。


「自信、デスカ……」

「は、はい」

「デモ、ソレ、言ウナラ、タウロクンモ、モット、自信、持ツベキ、デス」


 そう言うと少年【タウロ】くんは、

 両手と首を高速で左右に振りだした。


「と、とと、とんでもないです! ボボボ、ボっ、ボクが自信なんて、畏れ多いですよ!」

「ソンナコト、ナイ、デス。タウロクン、隷夫ノ、先輩。仕事モ、優秀。私、見習ウ、多イ、デス」

「いえいえいえいえいえめめめめ滅相もないです! そ、それに、大族長様に見出されたヒビキ様と、お、お情けで隷夫にしてもらっているボクとでは、た、立場が違い過ぎますから!」


 首と手が飛んでいっちゃうんじゃないかと心配になるほど、

 タウロくんは必死になって否定する。


 一方で俺は納得していた。


(あー、そっか。やっぱりタウロくんはそんな風に考えていたのか)


 鬼帝国に王族といった身分制度が存在するように、

 アマゾネスの集落においてもそれらは存在する。


 それは大族長を頂点として族長、大戦士、中戦士、戦士、非戦士というヒエラルキーを形成しており、俺たちのような隷夫、隷妹といった従者階級はさらにその下だ。


 そして『主人に見初められた』隷夫と、アマゾネスの掟で『仕方なく』隷夫にしてもらった自分とでは、立場が違うのだと、彼は解釈しているらしい。


(お情けという点では、俺もタウロくんも大差ないと思うんだけどなぁ)


 とはいえこの場でそれを言ってもタウロくんが余計に恐縮するだけなので、俺の対応は曖昧な苦笑いを浮かべるに留まる。


「そ、それにほら……ぼ、ボクは、出来損ない、ですから……」


 そんな俺の笑みをどう捉えたのか、

 タウロくんは恥じるように……嘆くように、

 そっと自らの頭蓋仮面に触れる。


 前世の感覚がある俺としては逆に違和感がないのだが……

 本来ならオーガンの証である鬼角がある頭部、

 そこには『有るべきもの』がないのだという。


 角無し。

 不鬼子。


 タウロくんは一般的に、そのように呼ばれる存在だ。


 これは一種の奇形であり、俺にはいまいちわからない感覚なのだが、鬼角に美意識を覚えるオーガンにとってそれは耳の短い精人アルヴ、尻尾のない獣人ライカンと並べられるほどに、嫌悪感を抱かせるものらしい。


 それそこ産みの親に捨てられ、親類であったアマゾネスに拾われて隷夫として生きていかなければならないほどに……


(だからこそタウロくんは余計に、自分を卑下しているんだろうけど……)


 自らの欠点トラウマに触れて卑屈に口元を歪める少年の背中を、ポンポンと叩く。


「気ニスル必要、アリマセン。タウロクン、立派、デス」

「で、でも……」

「タウロクン、作ル、食事、美味シイ。掃除、早イ。裁縫、丁寧。片ヅケ、上手。ソレニ、気ガ利ク。ハミュット様モ、褒メテ、イマシタ」

「そ、そんな……ハミュット様が……っ」

「ん、なんだアタイを呼んだかぃ?」


 声に振り返ると、そこには話題のアマゾネスがいた。


「は、ハミュット様!」

「……ハミュット様。驚ク、止メテ、クダサイ」

「キシシシ、気付かないほうがわりぃーんだよ」


 タウロくんの驚愕、俺のジト目を受けて楽しそうに笑うのは、アマゾネスの女性にしても大柄な部類に入る、百九十センチオーバーのアマゾネス。


 外見年齢は二十台前半といったところ。

 身体の大きさに比例して手足は長く、しなやかながらもしっかりとした筋肉がついており、腹筋は美しささえ感じるシックスパック。右頬に十字の傷があり、左腕には闘牛を模した刺青タトゥーを入れている。


 ボリュームのある髪をポニーテールにした、

 彼女の名前は【ハミュット・プレト・ホーンズ】。


 パトラさんの孫娘のひとりであり、

 アマゾネスでも指折りの大戦士。

 そして俺の教育係でもある。


「ハミュット様、狩リ、サボタージュ、デスカ?」

「なんだよ失礼な野郎だな。抱いちまうぞ?」


 本来であればこの時間帯、戦士階級以上のアマゾネスたちは森へ狩りに出かけているはずだ。それなのに大戦士のハミュットさんがここにいるなど、サボりか二日酔い以外は考えられない。


「ほれ」


 俺の冷たい視線に何故か笑顔のハミュットさんは、肩に腕を回してくる。頬に当たる圧倒的な質量は無視だ。視線を後ろに向けると、そこには彼女が仕留めてきたのであろう猪型魔獣を荷台に乗せて運ぶ、アマゾネスの隷妹たちの姿があった。


「『ストンプボア』、デスカ」

「おうよ、生意気な野郎だったから軽く揉んでやったぜ!」

「さ、流石ですハミュット様!」


 主人の活躍に、隷夫である少年が瞳を輝かせる。

 その瞳には純粋な憧れ以外のものも混じっている気もするのだが……

 まあ、茶化すような真似はしない。

 頑張れタウロくん。


(おっ)


 そのとき、ふと視界を見覚えのある姿が過った。


「……」


 燃えるような赤髪に、蜂蜜色の肌。

 気の強そうなアーモンド状の瞳は、

 まっすぐに俺を射抜いている。


 戦士階級である彼女もまた、

 狩りから戻ったばかりなのだろうか。

 担いだ棒には、何羽かの野鳥が括り付けられていた。


(あちゃー。また睨まれてるよ)


 俺が彼女の存在に気付くと……ギンッ!

 視線の鋭さが増した。


(……まあ、俺に非があるのは認めるけどさぁ)


 初対面が最悪に過ぎたため、

 彼女に嫌われていることは重々に理解している。


 だが集落ですれ違う度にこうして無言の圧力をかけられるのは、なかなか心にクルものがあるのだ。


(しかもそういう相手に限って、何故か遭遇率が高いんだよなぁ……)


 まるでこちらを待ち伏せしているかのように、

 彼女とは一日に何度も顔を合わせる。


 そのたびに何を言うでもなく、

 こうして遠巻きに威嚇される。


 とても不毛だ。


(それでもまあ、他の視線も合わせてくれない子たちよりはマシなのかな?)


 実は彼女以外からも、

 あちこちから遠巻きに視線は感じている。


 なにせここは集落の洗濯場。

 俺たち以外にも大勢のアマゾネスの隷妹たちが川辺に集まっており、遠巻きに視線を感じるものの、しかし声をかけてくるようなことはない。視線もすぐに逸らされてしまう。


 いくら大族長の隷夫とはいえ、

 やはりアマゾネスの集落に豚鬼オークがいることは異質なのだ。


 この一ヵ月でだいぶ露骨な嫌悪は減ったものの、視線に含まれる感情のほとんどはそれに準ずるものであり、あとはまあ好奇心とか怖いもの見たさとか、そんなところであろう。なんにせよ良い感情ではない。


 そんな中こうして気軽に話しかけてくれるハミュットさんやタウロくんは貴重な存在であり、彼女たちの存在には、精神的にとても救われている。


あねさま、お帰りなさいであります!」


 数秒ほど睨み合い……

 というか一方的な威嚇が続いていると、

 あちらにも迎えが来たようだ。


 アマゾネスよりもさらに暗い、暗褐色の肌。

 走る振動に合わせてピコピコと揺れる長耳は精人アルヴの特徴で、

 結われて左右から垂らされた三つ編みが、

 犬の尻尾のように跳ねている。


「シュレイか。洗濯の帰りか?」

「はいであります! 今日もお早いお帰りでありますね!」


【シュレイ】と呼ばれたオビィの隷妹……森精人ドルイドの少女はにっこりと笑い、つられて主人も薄く微笑む。


(なんだよ。笑うこともできるんじゃないか)


 だが俺の存在を思い出したのかすぐに表情は引き締まる。

 主人の反応から察した隷妹の少女は速やかに、

 俺という不快因子を発見した。


「チッ!」


 舌打ちされた。

 泣きそうだ。


「さあ行くでありますよ姉さま! さあさあさあ!」


 グイグイと隷妹に背中を押されて、

 少女はようやく視界からフェードアウトしていく。


「キシシ、相変わらずお熱いねぇ」

「嘲笑、止メテ、クダサイ」


 不機嫌な俺の返答に、ハミュットさんの笑みが深まる。


「なんでぇなんでぇ、好きの反対は無関心。それよりはよっぽど上等じゃねえかぃ」

「シカシ、限度、アリマス」

「んー、そうかねぇ。アタイとしちゃあ、けっこう脈アリだと思うんだけどねぇ。それにああいうタイプは、惚れたらとことん尽くす系のいいオンナだと思うんだけどねぇ」

「……騙サレ、マセンヨ?」

「よし、だったらいっぺん騙されたと思って、夜這いかけてみろよ!」

「ダカラ、騙サレ、マセンヨ」

「だったらせめてアタイを夜這ってみな!」

「何故、デスカ?」

「仕方ねぇ、アタイが夜這ってやるよ!」

「意味ガ、ワカリマセン……」


 嘆息するとやはり冗談だったのか、

 ハミュットさんが呵々と笑う。


「あ、あぅ……」


 その背後ではタウロくんが、可哀想なほどに狼狽えていた。




お読みいただき、ありがとうございました。

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