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ブギーテイル ~異世界豚鬼英雄譚~  作者: 陽海
第一章 豚鬼転生編
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【接続話】 新たな出会い 

【前回のあらすじ】


 ママ「なんだかとても素晴らしい夢を見ていた気がします」





「うっ……痛っ……」


 ズキズキと痛む頭。

 霞む視界。


 これはあれだな。

 魔力酔いだ。


(だがなんで、魔力酔い?)


 前世で初めてアルコールを口にした翌日の頭痛にも似た症状にうんざりしつつ、徐々に俺の意識は覚醒していく。


「昨日はそんな、師匠と無茶な訓練でもしたっけな……?」


 そんな間の抜けた疑問をきっかけとして、

 堰を切ったように記憶が蘇る。


 サウストン計画脱出計画の実行。

 浄火軍の介入による計画の失敗。

 俺を助けるため、自ら生贄となったマリアン。

 勇者から俺たちを逃がすため、立ち向かった師匠の背中。

 洞窟の奥で対峙したドラゴンゾンビと、覚醒した勇聖因子。


 それら全てを思い出した俺は、慌てて周囲を確認する。


「ここは、どこだ!? 転移魔法は成功したのか!?」


 はたして俺の視界には、青々とした緑が広がっている。


 浄火軍と戦ったあの森のような鬱蒼とした緑ではなく、

 瑞々しくも力強い生命力に溢れた緑。


 肌に触れる空気はじんわりと湿っていて、

 亜熱帯のような気候に感じられる。


 傍らには大木。

 それを中心として足元一面を鮮やかな野花が満たしており、

 さらにそれを囲うようにして濃い緑の木々が広がっている。 


 ただし大木だけは周囲の木々とは違い、

 今にも朽ち枯れてしまいそうな有様を呈していた。


 その根元には、見覚えのある深紅のカタナが突き刺さっている。


「……ふぅ」


 見覚えのない光景に、俺は胸を撫で下ろした。


(そうか……無事、転移魔法は成功していたんだな)


 おそらくあの巨木が、転移座標となっていたのだろう。


 だけど術式の発動が不完全だったために、

 魔力を術式に根こそぎ吸い取られたってところか。


「……うっ」

「っ! マリアン!」


 苦しそうな声。

 慌てて視線を落とすと、

 腕の中には身悶える少女の姿がある。


 呼吸こそしているものの、弱々しく乱れており、顔面は蒼白。

 いまだに血の滲む肩口の傷は生々しく、額には球粒の汗が浮いている。


「しっかりしてくれマリアン。今、誰か助けを呼んでくるからな」


 いったいどれだけ気を失っていたのかは不明だが、

 とにかくマリアンには時間がない。


 俺は息も絶え絶えなマリアンを地面に横たわらせ、

 ひとまずは周囲を探索して救援を求めようとした──


「××○ΔЖ*ッ!」


 そのときだった。

 凛とした、力強い声が響き渡る。


 視線を向ければそこには、

 俺たちに駆け寄ってくる人影の姿。


(助かった! 人族だ!)


 こちらから探す前に向こうが見つけてくれた。

 不意に舞い込んだ幸運に、思わず頬が緩みそうなる。


「*×▽ッ、〇✖△△✖**ッ!」


 ただ、人影が発している言葉はほとんど理解できなかった。


(ああ、そうか。これが大陸公共語なのか)


 たしか師匠から教わった話だと、なんでもサウストン大陸以外の人類はほぼこの公共語で会話をしているらしい。むしろサウストン大陸に引きこもり、独自の神聖語とやらを使用している真人ヒューマのほうが異端であるのだと。


(師匠はずっと、むこうじゃ浄火軍製の人造生命体ホムンクルスである俺に合わせて神聖語で会話してくれてたけど、今度は俺がこっちに合わせる番だ)


 大丈夫。

 公共語はずっと師匠から習ってきたんだ。


 まだ慣れないが、落ち着いて耳を傾ければ、

 あの人影がなんと叫んでいるのか少しくらいは理解できるはず。


「△✖▽ッ! *〇*△ッ!」


 俺は努めて意識を集中させ、

 駆け寄ってくる人影の叫びに耳を澄ませた。


「*△野郎×ッ、〇▽ニ、触レル▽ッ!」


 そして次の瞬間には、絶望的な現実に気が付いた。


 俺 → 醜い豚野郎。


 しかも〈強欲悪食/ザ・グリード〉の発動によって衣類が消滅。

 さらに副作用によって肉体が何歳か成長しているようだ。


 マリアン → 息も絶え絶えな美少女。


 昏睡状態。

 その貫頭衣の右肩部分は破れており、

 もしかすると第三者が強引に引き裂いたように見えなくもない。


 そんな俺がマリアンを地面に寝かせる姿勢をとっているため、

 見ようによっては気を失った美少女に襲い掛かる卑劣漢という、

 非常に拙い構図が出来上がってしまっている。


「ご、誤解だ! 彼女は俺の母親なんだ!」


 弁明を試みるも、焦って神聖語を使ってしまった。


 落ち着け俺。

 師匠に習った公共語を思い出せ。


「マ、待ツ! 話、聞ク──」

「黙レ✖▽、✖✖野郎△ァアアアアアッ!」


 そんな俺の言葉などそもそも聞いていないのか、

 たっぷり助走をつけた人影の飛び膝蹴りが、

 俺の豚鼻を捉えた。


「ぷぎっ!?」


 堪らず後方に吹き飛ぶと、

 人影はすぐさまマリアンを背に守るよう立ち上がる。


「貴様コノ〇△デ、女*乱暴、許セナイ! 死△覚悟×〇!」

「マ、待ツ! 俺、話、聞ク──」

「✖✖△!」


 そして人影は、

 強く透き通った声音とともに、

 鋭いアーモンド型の瞳で俺を睨みつける。


「〇△女蛮鬼アマゾネス◇戦士、オビィ・ハオル・ハガネ▽、成敗◇〇!」




お読みいただき、ありがとうございます。

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