偶然の光
また、俺の人生から光が消えてしまった。
いつも通りの無気力な日々が戻ってきた。
ここ何日かはまともに飯も食べていなかった。
いつもの職場で書類整理をしている時、なんだか目の前が揺れた。
その瞬間俺は倒れていた。
次に目にしたのは真っ白な天井だった。
俺は、栄養失調で倒れたらしい。なんとも情けない。
同僚が近くの病院まで運んでくれたのだ。
救急車を呼べば良かったものを大の大人を担いで病院までいくとはそいつも気が動転していたんだろう。
普段は、無表情でただ仕事をこなしている俺がいきなり倒れたから。
ま、とにもかくにもその同僚には感謝しなければならない。
そんなことを考えていると、ナースがやってきた。
「目が覚めたんですね。どこか調子の悪いところはないですか?」
「ありがとうございます。今のところ大丈夫です。」
「そうですか。今点滴を打っているので、終わるまでは安静にしていてください。点滴が終わりましたら帰っていただいて結構ですので。」
「すいません、ありがとうございます。」
確かに、ナースというのは可愛く見える。
なんとも得な職業だ。
会社の制服を着るだけで何倍も可愛く見られるんだから。
点滴が効いてきたのかだいぶ視界もすっきりしてきた。
頭もだいぶ冴えてきた。
点滴が終わりちょうどいいタイミングでさっきとは違うナースが来た。
さっきの子の方可愛いなとかくだらないことを考えながら、病室を出た。
支払いを済まして外に出る。
その時、目の前に広がる広い庭をみてびっくりした。
ここは、あの車椅子の女性の病院だった。
俺は無意識にあの車椅子を探していた。
だが、どこにも見当たらなかった。
頭では、見つけたところでただ切なくなるだけだとわかっているのに、気持ちがついていかない。
病院の中に戻りさっき支払いを済ませたとこで車椅子の女性のことを聞いた。
だが、もちろん教えてくれるはずもない。
だけど、どこかあきらめきれなくて、受付の待ちあいのいすに座り姿を一目でも見れないかと祈るように座っていた。