戦い、終えて
目を覚ますと、そこは天国でした。
まぁ、イメージしていたお花畑や三途の川ではなく、柔らかいラウラの膝の上でしたけどね。天国には変わりない。
「良かった・・・、気がついて・・・」
ラウラはすごく嬉しそうな表情でボクを見つめていた。
涙ぐむ瞳に見つめられ、思わずドキッとさせられる。
そんなに見つめないで、惚れてまうから。いや、惚れちゃうのはいかがなものか。
ボクは21歳。彼女は15歳。中学生に手を出したら犯罪ですよね?
いや、世の中にはもっと年の差があるカップルはいるだろうけど、ラウラはまだ子供、ラウラはまだ子供・・・。
ボクはそう暗示をかけていると、ラウラは申し訳なさそうに頭を下げた。
「ヒロト・・・ごめんなさい。私が力不足なせいで・・・ヒロトを危ない目に遭わせてしまって・・・」
「ま、待って! ラウラは悪くない」
泣き出す彼女にボクは慌てて慰める。
そうだ、ラウラは悪くない。本来であれば、ボクらの立場は逆なのだ。
差別するつもりはないが、ボクがラウラを守る側でなければならない。
「でも、私は、守ろうって・・・そう決意、したのに・・・」
「それは一方的すぎないか?」
名残惜しかったが、ボクはラウラの膝枕に別れを告げ、起き上がって相対する。
「ボクらは仲間だ。助け合っていけばいい。まぁ、情けないけど、ラウラに頼る部分が多くなるかもしれない。でも、ボクにも頼っていいんだ。ボクは、ラウラの重荷になりたくはない」
「重荷、なんて」
「顔、上げて」
未だ俯いているラウラの頭を、そっと撫でる。
「それとも、ラウラはボクを仲間だと思ってない?」
ボクのその言葉に、ラウラは泣き顔のまま顔を上げた。
「そんな、わけ、ない」
「ありがとう」
ボクは笑顔で礼を言う。
立派な神様になれるかは分からない。この世界を守ることができるかは分からない。
だけど、目の前の少女。ラウラの隣に立てるくらい、強くなりたいと思った。
「ボクはラウラと一緒に戦う。守られるだけじゃない。ラウラの力になれるように戦っていきたい」
「でも」
「ボクは絶対に死なない。だから一緒に戦わせてほしい」
物事に、絶対なんて存在しない。この世界では、スライムにさえひとりで立ち向かうことができない。
筋肉質な山賊に対しても、逃げ腰になってしまうボクだけれど、そう決意する。
「約束しよう」
ボクはラウラに向かって小指を差し出す。それを理解できていないラウラに対し、ボクはラウラの手を持ち上げながら説明する。
「これはボクの故郷にある、様式みたいなものだけどね」
互いの小指を絡ませる。恥ずかしいけど、顔には出さない。いや、もしかしたら出ていたかもしれないけど。
「指きりげんまん、嘘付いたらハリセンボン飲―ます、指切った」
そして指を離す。
「これでボクはウソをつかないことを誓ったことになる」
「本当・・・に?」
「ああ」
ラウラはまだ癪を続けていたが、ボクの顔を見て、ニコッと微笑んだ。
「ヒロトの言いたいこと、分かりました。でも、ヒロトを守れるように、私はもっと強くなりますから」
「ボクだって、もっと強くなるさ」
自信ないけどね。成長率低そうだけどね! 頑張るよ!
互いにそう誓ってから、山賊のことを思い出して周りを見渡した。
山賊は全員木に縛り付けられている。どうやら抜かりはないらしい。さすがラウラさん。
「よし」
ボクのその言葉に、ラウラが涙を拭う。
「王子様、救出しないといけませんね」
「うん、だけどその前に」
ボクは再び天国、もといラウラの膝枕に頭を沈めた。
「え」
「もうちょっとだけこのままで」
「でも、救出を・・・」
「ラウラの膝枕、やわっこい。気持ちいいなー」
「も、もう」
ラウラの頬が真っ赤になる。耳まで真っ赤だ。
・・・かわいいなー。中学生に手を出すと犯罪者?
もう犯罪者でもいいような気がしてきた。神様だもん。少しくらい大目に見てもらえるよね?
あかん。それじゃ職権乱用だ。
ボクは真面目な神様を目指します。
「~♪」
ラウラの嬉し恥ずかしそうな顔を見ていると、気持ちがブレブレになりそうです。
そして救出を待つ王子様、後回しにしてしまってすいません。
悪いとは思っています。ただ、優先順位的にラウラの膝枕が優ってしまっただけなのです。
うん、こんなこと王子本人には説明できそうになさそうだ。
文字数バラバラかも。バランスって難しいと思うの。