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百万杯のコーヒー

作者: 梢美果
掲載日:2013/06/17

 ある女は二十歳の誕生日にふと思った。

「私の寿命はどれくらいなの?」と。

 女は最近疲れ気味だったし、若く美しいままでいたいと思っていた。

 年老いた自分など想像できない。

 そこで、よく当たると評判の占い師のところへ行って尋ねた。

「私は何歳まで生きますか?」

 すると占い師は

「人の寿命に関する質問にはお答えしないことになっております」

という答えだった。そこで女は

「何かヒントになるようなことを教えていただけませんか?」

「例えば?」

 女は少し考えてサービスで出されたコーヒーを見た。そして

「例えば一生の間に何杯コーヒーを飲むかとか」

「それなら・・・」

と言って占い師は水晶玉を覗き込みしばらくすると

「大変珍しくきりの良い数字となりました。あなたが生涯で飲むコーヒーは百万杯ぴったりとなります」

 女にはぴんとこなかった。

 家に帰って計算してみる。

 その当時女は、とりたててコーヒー好きではなかった。

 一日一杯くらいのインスタントコーヒーを砂糖とミルクをたっぷり入れて飲んでいた。

 アバウトに計算してみると一日一杯で三年で約千杯、三十年で一万杯、九十年で三万杯。

 とても百万杯には届かない。

「私はよっぽどコーヒー好きになって、なお長寿ってこと?」

と首を傾げる。

 数年後、プレゼントにコーヒーメーカーと上等なレギュラーコーヒーを貰いコーヒーのおいしさに目覚めた。

 一日に何杯もブラックで飲むようになり、百万杯というのも間違いじゃないかもと思った。

 女はやりがいのある職業に就き、素敵な恋人ができて結婚して子供を育てた。

 いつも楽しく充実し、その合間にはゆったりとコーヒーを楽しむ豊かな時間があった。

 しかしたまに思う。「何杯飲んだのだろう?」と。

 さらに時が過ぎた。

 女は病室で親族に囲まれ、若い頃、占い師に言われた思い出話をしている。

 「・・・おかげでコーヒーを楽しめたわ。でもさすがに百万杯はありえなかったわね。そもそも占いを半分真に受けたことが間違いだったみたい・・・」

「・・・・・・」

「ってもっと早く気づけよ!」

と女は自分で自分に突っ込みを入れて、楽しそうに笑って生涯を閉じた。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  百万杯のコーヒー。  タイトルが短編らしくてステキです。  ちなみに。  私は毎日、だいたい四杯のコーヒーを飲みます。  朝、ファミレス三杯。  夜、ぽかぽか温泉で一杯。  これではとて…
[一言] 初めまして。 コーヒー好きの私にはちょっぴりドキッとする内容だったので、思わず感想を書いてしまいました。 毎日2~3杯飲む私。このストーリーと同じで一瞬計算しようとしてしまいましたが、確か…
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