春休み
「うまー」
幸せそうにマフィンを頬張る透子。私はそれを見ながらコーヒーをすする、やっぱり美味しいものは砂糖を入れなくても美味しいよね。
現在時刻十二時過ぎ。現在場所ショッピングセンター、詳しく言えばそこのコーヒーショップ。お昼頃なので適当になにか食べようと言うことになり、今に至る。
「憂子ちゃん、それだけでいいの?」
首をかしげながら聞く透子に私は頷く。私はあんまり食べない方、だから痩せっぽちって言われるのだけれど。一方透子はサンドイッチを食べ、小さなマフィンを二つほど。
「あ、憂子ちゃんはどんなの買った?」
お腹が膨れたのか、果肉入りのオレンジジュースを飲みながら尋ねられた。ちょっと美味しそう。
「筆箱」
簡潔に答えてドラム型のバッグから袋を出す。シンプルな赤・白・黒のチェック柄で、レースがついているのも可愛いと思ったんだよね。
透子も手に持っていた袋をテーブルの上に置き、中身を出して行く。
「可愛いでしょ、アニマル柄だよー」
最近のお気に入りはそんな柄らしく、筆箱、ポーチなど、大体はそんなようなものだ。でもごちゃごちゃしているものではなく、普通に可愛い。
一通り眺めると、飽きたのかそれらをしまい、頬杖をついて本題らしきものに入る。いわゆるガールズトークなのだが、生憎と私はその手のものにうとかったりする。自分の話題にもうといのは私自身どうかと思うが。
「憂子ちゃんさ、蛍君とよく話題になるでしょ? そこのところどうなのかなーって」
ほら、いつも話そらされちゃうでしょ? やっぱり気になるな。
透子の言い方は無邪気そうで、それはこんな時、厄介なんだよね。