始業式
始業式後、教室に戻るとすぐ、今年の担任になった若い男の先生が入って来て、現在軽く喋っているといった状況だ。
「えー、さっきも聞いていたように、転校生がこのクラスに来る」
聞いてねえよ。心の中で突っ込む。
そんな風にしていると、がらりと教室の前の扉が開いた。
ざわり、と空気が変わる。
「見吉早苗です、よろしくお願いします」
さっきと同じ挨拶。俺は思わず顔を手で覆って空を仰ぎたかったが、それだと不自然になるので、わざと欠伸をして机に突っ伏すことにした。幸運なことに一番後ろの席なのでバレないだろう。
「じゃあ席は葉里の隣なー」
一瞬にして視線が俺の方に集まる。しょうがないから顔を上げると、視線に上乗せして興味津々な顔、顔、顔。勘弁してくれ、折角隣もいなくて寝放題だと思ったのに。
溜息を押し殺していると、隣からがたん、と音がする。そして見吉はこっちを向いて、「よろしく、ハサトくん?」と俺の名前を確認するようにして微笑む。
俺は軽く会釈しながら、見吉を――失礼な言い方をすると――観察する。茶色っぽい髪をおさげにして、リップが塗ってあるようで、唇が少し光っている。イメージとしてはよくいる女の子、といった感じだ。今は。