第4話 初案件!そして、しくじる
数週間後―
学のもとへ相良が急いでやってくる。
「社長、『川辺製作所』さんから正式な発注を頂きました!」
「川辺製作所さんから!?」
現場の空気が、微かに変わる。
『川辺製作所』は中堅企業だが、大手メーカーとの取引実績が多数あり、業界では名の知れた企業だ。今回の取引が成功すれば、内匠部品の今後の業績回復にむけて大きなはずみになることは間違いなかった。
「すぐに製造会議をしましょう!」
会議室―
濱岡が腕を組んだ。
「小ロットだな」
「ええ。テスト発注でしょう」
相良は淡々と説明する。
「数量も少ない。単価も安い。ですが——」
「……やりましょう」
学は言った。
自分が社長になってから初めて掴んだ案件。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
仕事を受けると決まったときから準備は順調に進んでいた。
学は、現場を信じることにした。
濱岡をはじめ作業員たちの技術を信頼していたし、
社長の自分には他にもやるべきことがあると考えていた。
それに、自分が余計なことをすればかえって邪魔になるかもしれないと思ったからだ。
だが——
トラブルは、唐突に起きた。
「社長!」
作業員の一人が、事務所に駆け込んでくる。
「加工精度、合いません!」
「……え?」
相良がすぐに立ち上がる。
「どの工程です?」
「後工程です。
前工程の寸法が——」
濱岡が舌打ちした。
「くそ……」
原因は、ほんの小さな確認漏れだった。
だが、それが積み重なり、ズレは広がっていた。
「納期は?」
相良が問う。
「……このままだと、間に合いません」
学の頭が、真っ白になる。
(初めての仕事で……?)
「違約金は?」
「小ロットとはいえ、取引先との信頼は——」
相良は、そこで言葉を切った。
学には、それで十分だった。
夜。
工場には、まだ明かりがついていた。
「……すみません」
学は、作業員たちに頭を下げた。
「俺が、何も見ていませんでした」
濱岡が厳しい顔つきで言った。
「信じるってのはな、丸投げすることじゃねえ」
胸に刺さる言葉。
「社長なら、最低限“流れ”は見とけ」
「……はい」
相良が、資料を机に広げる。
「まだ、間に合います」
「え?」
「工程を組み直します。
全体じゃない。
間に合う部分だけ、先行させる」
濱岡が目を見開く。
「……できるか?」
「他に方法はありません。しかし、あくまでも先方に納得して頂かないことには…」
学がゆっくりと口を開いた。
「俺が先方に謝罪にいきます。それで先方を説得します」
「社長…」
「これは俺がやるべき仕事です!」




