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無彩色な世界 ~記憶喪失な転生者がおくる人生という旅~  作者: 空乃
アリア魔剣学園 〜中等部〜 編
7/12

開戦

「アル!」


俺はある場所へ向かっていた。

そう大森林の競技場。今日はついに交流戦。

その途中でロットに出会った。

交流戦への参加をロットに話すと腕を組んで「知ってたわ!だからわたしも出る!」なんて言い出し、まさかロットも剣術科の交流戦に出ることになっていた。

剣術科は魔術科の交流戦が終わってからの三日間。

一日目に上位数名を決める生き残り戦をし、二日目、三日目と残った選手同士の一対一のトーナメント戦。

ルールは簡単。相手が戦闘不能状態になるまで戦う。

ロットは中等部でもかなりの実力者だ。クラスはまだ初級だが強さだけなら中級に届いているだろう。

だからそれ程の心配はしていない。


「ロット」

「が、がんばりなさい!」

「?ありがとうございます」


ロットは顔を赤くしている。

後ろから数人の女子がやってくる。ロットのクラスメイトか。


「ほら、ロットちゃん。あれ渡さないと…」

「わ、わかってる…」


なんだかこそこそしている。

ロットは少しずつこちらに歩み寄り。


「こ、これ!」


俺に片手サイズではなく槍のように長い杖を差し出した。


「もらってあげてよ。ロットちゃん、アルトくんのことを思って必死に選んだのよ」


ロットのクラスメイトたちは笑顔でそう言った。

杖は元々持っていた。初心者用の安物。

こだわりがあったわけでもなかったので今までこれでいいと思っていた。

本来、魔術師にとって杖は剣士に剣くらいには大事なもの。

魔術の増加や制御など杖によって様々な効果がある。


「ロット」

「な、なによ…」

「ありがとう、大切にします」

「う、うん…」


ただ単純にうれしかった。

俺は自然とロットの頭に手を置き、優しく撫でていた。

ロットも照れくさそうに笑った。


俺はロットを支えてるようでどうやら俺もロットに支えられていたみたいだ。


ロットから贈られた杖を握る。


「負ける気がしない」


○○○


会場に着く。

周りは当然のことだが年上ばかり、そこにライナも来ていた。


「アルト、来たか」

「お待たせさせてしまいましたか?」

「いや、そんなことはない。それよりそれは?」


ライナは俺が持っていた杖を指して聞いた。


「ロットがくれたもので、これからの僕の相棒です。」

「はぁ…何年も何年もお熱いことだ…しっかしいい杖だな。魔術の才がなくても見る目はいいらしい。」


俺もそれには気づいていた。

持った時から力が溢れてくるようだ。やはり個の力だけでなくこういった道具も大切なんだと気づく。

やがて生徒たちが会場へ入場して行く。


「じゃあ俺たちも行こうか」

「はい」


〇〇〇


人数は各クラス二、三人程度。

相当な覚悟をした猛者たちなのだろう。

だけどライナとの勝利を誓ったあの日、ロットから声援とともにもらった杖。

簡単には負けられない。


「心配するな」


隣でライナが小声でそんなことを言った。

杖を強く握ったことで緊張してると思われたみたいだ。


「俺たちは強い」

「えぇ、ただ勝ちたいと再度思っただけです」

「ふっ…」


ここにいるのは俺たちが一番歳的にも知識的にも下かもしれない。

でもそれは決して不利ということではない。逆に上のみを見ていれるということだから。

それにライナの言う通り、俺たちは確かに強い。


「では揃ったようなので競技を早速開始する。ルールは簡単だ、なんでもいいから3日間生き残るがいい!以上!」


教師の一言にみんなの背筋がピンと張る。

始まるんだ。


「よし、準備が出来次第各々の入口の前に立つがいい!」


スタートはこの場を中心にしてクラスごと方向バラバラに出ていく。

俺もライナと自分たちのクラスの入口へと向かう。

大森林には幾つもの伝達の魔法陣があり、それが随時中継されているらしい。


「ねぇ」


入口へ向かう俺たちの横に二人の知らない人が来る。


「はい、なんでしょう」

「ぼくは高等部一年のツヴィ。」

「あたしは双子の妹のリング。よろしくね」


高等部。会ったことない人たちだ。


「中等部一年 アルト・カイネファルベです。」

「知ってるよ、あたしたち今日が楽しみだったんだ」

「は、はぁ…」


にこにこと笑うリング。


「変なやつですまない。だがアルト。君と戦えるのは僕も楽しみだったんだ」


横から謝罪をするツヴィ。


「お手柔らかにお願いします」

「ふっ…どうかな、楽しみなんだからぼくたちと戦う前に負けたりしないでくれよ」

「が、がんばります…?」

「んじゃーねー!」


二人はそう言って去っていった。


なんだったんだ。


「なんだったんだ、あれ」


ライナが不思議がっていた。


「いや僕も何が何だか…」


あの人たちに意識されるようなことしたか?


「ま、そんなことは今はいいでしょう」

「そうだな」


入口に着いた。


「では、これよりアリア魔剣学園 校内交流大会 魔術科部門の開始を宣言する!」


教師の声が響き渡る。

その一言を機に駆け足で入口を抜けていくもの。

ゆっくり歩きながら作戦などを話し合うもの。

単独で突っ走るもの。


「行くか。」


ライナが掛け声を出す。


「えぇ」


そして歩き出す。

グータッチを交わして。

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