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無彩色な世界 ~記憶喪失な転生者がおくる人生という旅~  作者: 空乃
アリア魔剣学園 〜初等部〜 編
5/12

ロットの友達作り

アリア魔剣学園に入学して数ヶ月が経った。

この頃はロットの度々聞く喧嘩騒動も落ち着き、僕も魔術に専念するようになっていた。

学び気づいたのだがこの学園は本当にすごい。

座学では人族以外の言語や魔術の理論など前世の世界の6歳には到底理解できないような高レベルな授業をする。

実技では主に個別の訓練。とにかく個人の精度や質を上げようということらしい。

なのでクラスも全体的に元々のスタートラインが実技もレベルが高い。

さて、俺もこれで安心して学生生活を送れる。


「アル!帰りましょ!!」


ただ一つ。未だにクラスや周りとうまくやれていないロットへの心配を除いて。


〇〇〇


ロットは強い。そして他人に興味がない。

最初はその強さに近づく者もいたが今はこの通り誰も寄り付かない。

本人は全くそんなこと気にしてはいないが、やっぱり友達はいたほうがいい。

いつまでもおんぶに抱っこだとロットにとってよくない。


「ロット」

「なに、アル」

「今日も訓練ですよね」

「えぇ、そうよ!」

「前にも言いましたが剣術科の訓練場では魔術の訓練ができません」

「いいじゃない、剣術の訓練をすれば!」

「僕にもやりたいことがあるんです。ですので今日はご一緒できません」

「なんでよ!いつもは付き合ってくれるじゃない!」

「ロット」

「なによ」

「ロットは強くなった。この学園の剣術科でも上位には入るでしょう」

「それがなによ」

「いいですか?その強さは他人と共有できるんです」

「…」

「ロット、友達いますか?」

「うっ…」

「同じ剣術科の磨き上げれる仲間が必要です、それはロットのためでもあります」

「きらいなの…邪魔なの…?わたしが」


気づくと牙が抜け、目をうるうるさせたロットが聞く。


「そんなはずないでしょう。ロットは唯一無二です。だからこそ心配なのです」

「…」

「僕もできる限りのことをします。だからロットも努力してみませんか?」

「…」


ロットは背を向ける。


少し言い過ぎたかな。


「…手伝って、くれるのよね」


ロットは背を向けたままもじもじしてそんなことを言う。


「当然でしょう。お手伝いしますよ」

「なら、いいわ…付き合ってあげる…」


え?これロットのためなんだが。

まぁいい、ロットがその気になったのなら。

ロットも人だ。人は孤独には勝てない。


「では早速ロットの教室へ行きましょうか」

「なんでよ」

「まずは身近なクラスメイトからだと思いましてね」

「友達…なってくれるのかしら…わたし今までめちゃくちゃしてたから」

「安心してください。きっと大丈夫」


俺は不安がるロットの手を握った。

少し震えていて、小さくゴツゴツした暖かい手。


〇〇〇


恐怖はそんなに簡単にぬぐえるもんじゃない。こういうのは長期戦だ。

俺はあれから毎日ロットの教室に通い、ただ世間話をした。

ロットも普通に笑ったりする。そういう普通を見せ自然に話しかけやすい空気を作るのがいいと思ったから。

そんなある日。


「ロット。今日は…」


いつも通り教室へ赴くとロットが数人の女子に囲まれていた。


「へぇロットちゃん。いつもそういう訓練してるんだ!」

「確かに私それやったことないかも!」

「わからなかったわ!ありがとうロットちゃん!」

「い、いいのよ!これくらい」


見てる感じ和気あいあいと喋っていた。

安心した。ロットも顔を赤くして満更でもないようだ。


「アルトくん」


呼ばれたので声のするほうを向くと隣に先生が立っていた。


「彼女は少し尖りすぎてて周りを寄せ付けませんでした。私も教師として恥ずかしながら接し方に苦悩していたところだったのですが君のおかげでクラスにも無事打ち解け始めているようで安心しました。」


本当に感謝しているみたいだった。実際今日はクラス全体の雰囲気が明るい。


「いえいえ、僕は彼女と幼なじみなので。当然のことをしたまでです。」

「ははは。やはり話を聞いた通りですね」


教師は笑ってそう言った。


はて、話通りとは?


俺が首を傾げていると教師は「あぁ」と続けてわけを話し始めた。


「彼女は君を信頼しているみたいでしてね、君の話ばかりをするものだから私たちはかなり君について詳しくなってしまったよ」


ロットめ、そんなことを。


「恥ずかしい限りです。」

「あ、ロットちゃん!彼よ!」


教師との会話をしているとロットを囲む女子が俺を指さす。

すると瞬く間に女子の黄色い歓声が聞こえ始める。


「アル!」


ロットはパァっと明るい表情になり、走ってこっちに向かってくる。


「ロット、よかったですね」

「う、うん…これもアルのおかげよ…」

「一歩踏み出したのはロットです。僕は何もしてませんよ」

「それでもよ、ありがとう…」

「では、僕は今日は用があるのでお先に」

「え、えぇ…じゃあね」

「はい、また明日」


とりあえずロットに友達ができた。それが自分のことのように嬉しかった。

これにてロット、友達作ろう作戦完了だ。


「はあ…俺も友達、作ろう…」


これじゃあロットのことも言えないな。


一人寂しく歩くアルトであった。

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