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無彩色な世界 ~記憶喪失な転生者がおくる人生という旅~  作者: 空乃
アリア魔剣学園 〜中等部〜 編
11/12

戦いの後に残る想い

決着が着き、すぐに教師たちが飛んできた。

こんな広い大森林でよくすぐ駆けつけられたものだ。もっとももう何もかも解決した後だが。


「ゲバルト・テュラーン。立て。」


三人の教師が駆けつけた。

二人がゲバルトの肩を持ち、立たせる。


「自分のしたこと、わかっているんな。この試験では事故で亡くなってしまう生徒は珍しくない。だがお前はそれを利用し、殺害を行った。」


体術科の生徒がただ魔術科の交流戦に出たんじゃない。

殺したんだ、人を。


「あぁ…わかってる」


負けたゲバルトは潔かった。


「ゲバルト・テュラーン。まずお前はこの学園から退学となる。そしてこのシーマーン王国から永久追放だ。」


国からの追放。

俺はまだこの世界の法を知らない。

それが重いのかも。決して軽くはないだろうが。


「へっ…承知しましたよ」

「さ、行くぞ」


二人の教師はゲバルトを連れていく。


「…ゲバルト」


連れてかれるゲバルトを俺は無意識に呼び止めていた。

ゲバルトは一度ポカンとし笑った。


「へっ…アルト。俺は旅をしようと思うよ。色んな世界を知っていつか俺も師匠のように誰かの「師」ってのになってみてぇんだ…」

「いい夢じゃないですか。復讐なんかよりよっぽど。今のあなたは誰がなんて言おうと立派な戦士です。」

「へっ…お前にそこまで言われるなんてな…戦士冥利につきらぁ…」

「おい、そろそろ行くぞ」

「へいへい」


ゲバルトは再び教師たちに引っ張られ歩き始めた。

ゲバルト・テュラーン。最初は怖くてわらかないやつだったが本当は芯があってまっすぐな男だったんだ。


「また…またきっと会いましょう!」

「へっ…だな」


あいつのおかげで俺は限界を越えられた。

強くなれた。

殺しは殺し。許されないことをしたのは確かだが、俺はゲバルトに感謝していた。


「くそっ!」


後ろで声が聞こえる。

ライナが何やら怒っていた。


「ラ…ライナ?」


いつも冷静なライナらしくない。


「すまない…今回の戦い。俺はただ指をくわえて見ているだけだった。」

「そ、そんなことは…」

「くそ…正直何をしているのかさえ分からなかった…こんなにも遠いのか…」

「いいえ、ライナ。あなただって…」


ピキッ。


ピキッ?

何か音がした。おろらく俺の中で。


ドロドロ。


「カハッ…」


口から、目からとみるみる血が溢れ出てくる。

呼吸するのさえだんだん難しくなっていく。

全身から激痛が広がり、過呼吸になる。


さっきの反動か…忘れていた。


「お、おい!アルト!」


俺は膝をついた。

止まらない。血が止まらない。


やばい。思考が…意識が今にも途切れそうだ。


あたふたしているライナ。

もう一人の教師が気づいた。


「おい君!大丈夫か!おい!」


耳からも血が…


声がエコーのように何重にもなって聞こえてはっきり聞き取れない。


「まずい!急いで学園に!!」


まさかここで退場か?


だめだ。

まだツヴィとリングとの約束…が。


そこで俺の意識はプツリと切れた。


〇〇〇


…アル。


聞こえる。誰かが呼んでいる。


アル!

アル。


目を開く。


「父さん!母さん!ロット!」


目の前に三人がいた。

テルズ・カイネファルベ。ティラール・カイネファルベ。ロット・バーミリオン。

目をつぶりたくなるくらい真っ白な空間。

どこだ、ここは。

でも今はそれよりも。


「父さん、母さん」


テルズとティラール。二人に会えたことが嬉しかった。

そして隣にはロットもいた。

俺は三人の元へ歩いた。


「父さん、一体ここは…」

「アル…?いいや、違うな。誰だ」

「え?」

「誰?」

「母さんまで、何を。」

「アルを返しなさいよ!」


近づくやいなや三人から飛んできたのは拒絶。


「みなさん、一体何を言って…」


訳が分からなかった。

でもドッキリとかでもなさそうだった。

三人とも顔が本気だった。


「お前は…誰だ。」

「僕はアルト・カイネファルベですよ…」


テルズの睨みに怯んだ俺は無意識に手を前にかざした。


違和感。


俺の手…こんなに大きな手だったか?


俺…こんなに身長高かったか?


嫌な予感がした。


ピタッ。


空か天井かは分からないが上から水が垂れてきた。

雨?

足元には水溜まりが出来ていた。

そして映り見えた、自分の顔。


「…は?」


自分の顔だった。

でもそれはアルト・カイネファルベのじゃない。


前世の俺の顔だった。


「一体何が…」


意味がわからない。


「もう一度聞く。お前は、誰だ。」


テルズがもう一度解いた。

俺は口を開く。


「父さん…僕はいったい誰なんですか?」


〇〇〇


「………俺は…いったい…」


優しい風が頬に当たる。

そしてそれに反応するように目が開く。


「学園の…医務室…」


ここは俺が転生し、育った世界。

知ってる世界だ。

戻ってきた、あれは夢だったのか。


ボーッとする。

どうやら俺はベットにいた。

あの後すぐに意識が途切れて記憶はない。


「…ん?」


起き上がろうとしたら、左の肋あたりに何か載っている感触があった。

目線を向けるとそこに載ってたのは物とかじゃなかった。


「…ロット。起き上がれません」


ロットの頭だった。

眠っているのだろうか。スー、スーと音を立てて反応がない。


「心配かけてしまったな…」


優しく俺はロットの頭を撫でる。

サラサラで綺麗な赤い髪を。


「…ん、うぅん〜?」


撫でているとロットが起きた上がる。

そして半目でこっちを見てる。


「おはよう、ロット」


俺は笑顔でロットに言った。

身体は何ともないがとにかくだるい。相当寝ていたのか。


「…え?」


ロットがすっとぼけている。数秒の沈黙の間が生まれた。

そして…


「アルー!」

「うわっ!」


意識がはっきりしてきたのだろう。ロットは思い切り俺を抱きしめた。

とても力強く、右肩に服を通して水の広がる感覚があった。


「わたし…アルがもう目を覚まさないかもって…」

「ご心配をおかけしましたね」


その後俺はしばらく抱きしめられ続けロットが落ち着くまで待った。

俺が寝ていた期間は一週間。

交流戦はあの事件で中止。

学園はもう一度科同士の関係等の見直しに入った。

結局ツヴィ、リングとの決着も着かず、ロットの試合も見に行けなかった。

結構めちゃくちゃな数日だったな。


「大変でしたね。」

「えぇ、でもわたしはアルが無事ならもういいわ」


安心した。優しいロットに。

夢ではあんなにも拒絶されてしまった。


いや、もしかしたら夢でもないのかもな。

ロットが信じてくれるのはアルトであって俺じゃない。


お前は…誰だ。


夢の中でのテルズの声が響く。


俺は…誰なんだ。


俺は俺自身について死ぬ時のことしか覚えていない。

知らなくちゃいけないんじゃないのだろうか。

俺自身のこと。なんで俺が転生したのか。

いや、知らなきゃいけない。

まだ俺はテルズとティラールの子供でもロットの友達にだってなれてない。

全部知らなきゃ行けないんだ。

ゲバルトは言った。「色んな世界を知りたい」と。

俺もこの世界を知りたい。

だったら俺も同じことをすればいい。


「ロット」

「なによ」


目的…生き方は決まった。あとは進むだけ。


「僕はこの国を出ていこうと思います」

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