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無彩色な世界 ~記憶喪失な転生者がおくる人生という旅~  作者: 空乃
アリア魔剣学園 〜中等部〜 編
10/12

ゲバルト・テュラーン

「ゲバルト・テュラーン…やはりやつだったか。」

「ライナ、やつをご存じなんですか?」

「あぁ…有名人だよ…知らないか?」

「存じないですね…」

「はぁ…意味は違えど同じく有名人は他人を気にしないか…」

「はぁ、言ってる意味が…」

「あぁ~?お前か!アルト・カイネファルベ!」


ゲバルトは俺を指差してそう言った。


「はい…そうですが…そんなに有名になった覚えはないのですが…」

「あのなぁ…剣術科のスーパールーキー、ロット・バーミリオンがいつも周りにいれば逆に周りが低レベルに感じるだろうよ…だがお前らは異常だ。気づけ」


ひどい。誰か敵か分からなくなってきた。


「さてお話もこの辺にして…」


ゲバルトが重い腰を上げた。


「殺すか」


ゲバルトが消えた。


来る。


「廻転!」


どこだ。どこに行った。


「後ろだ!」


回転する風の中からライナが接敵をする。


後ろ。


「突風!」


俺は自分たちの後ろを広範囲かつ強風で吹っ飛ばした。


「甘いな…」


ゲバルトはすでに俺たちの前に回り込んでいた。

こいつはとにかく速い。普通の状態じゃとても追いつけない。

それに魔術は剣術と体術には弱い。個人の強さではなく相性の問題。

本来、中衛や後衛で活躍する魔術に対し、前衛を担う剣術や体術とでは対面で戦う場合圧倒的に魔術が不利だ。


未完成だが仕方ない、あれを使うしかない。

現状俺の中で最強の魔術。

ハイリスクだけど勝率をグンと上げてくれる。


風を作り出す。俺自身の体内で。

神経を想像し、そこに風を送り込む。

そして神経を風圧で刺激。脳の活性化。危険察知能力や危機感のリミッター解除。


ドクドク。ドクドクドク。


鼓動がはやくなる。息も苦しい。

一歩間違えれば不整脈でそのまま死。

だがそれによって爆発的な身体能力を得る。

その全てを視力に集中。


ゲバルトの手とうが飛んでくる。

今なら見える。


「鎌鼬!」


刃と刃のぶつかり、相殺し衝撃波が起きた。

ゲバルトが笑った。


「おいおい、嘘だろ?見切れるのか?お前が師匠についで二人目だよ。見切れたのは」

「はぁ、はぁ…それはどうも」

「おい、アルト。様子が変だぞ、大丈夫か?」

「僕のことは気になさらず。次が来ます」

「へっ…じゃあ行くぜ」


来る。

右。

次は後ろ。


ゲバルトの手とうと俺の鎌鼬がぶつかり合う。

一瞬でも気が抜けない。

垂れてくる汗が邪魔だ。ゲバルトは確実に俺を狙ってくる。


「へっ…俺は今までいくつもの魔術師を殺してきたがお前が今までで最強だろう」

「それは…どう…もっ!」


互角だ。渡り合えている。


ゲバルトの鋭い手とう。体になって当たったら紙のように簡単に切れるだろう。

それをこんなにも高速で次々と繰り出していく。

流石魔剣学園。上を見ればキリがない…か。


「はぁ…はぁ…」


息が…


「くっ…」


まずい。今にも倒れそうだ。


「踏ん張りなさい!アルト!」


そう聞こえる。

実際には聞こえない。でも響くんだ。心の中に。


負けられない。


「う、うわぁぁぁぁああああ」


少しずつ鎌鼬の速度が上がる。

ここで決める。


「なっ…やるなー!」


ゲバルトもそれに対抗する。

次第に目視じゃわからない程に。

もう完全に感覚に全てを。


「うわあああぁ!」

「ああぁぁ!」


意識が…もう…。


前世の俺はきっとこんなに死ぬ気でやったことはないんだろうな。

すごくしんどいし、なによりまじで死にそう。

でも一度くらい。

一度くらい自分がこれをやったみせたんだって。

そう胸を張りたいんだ。


「お、わりだぁあああぁぁぁああっぁ」


一歩。俺の鎌鼬がゲバルトの速度を上回った。

それが俺の勝利。


○○○


「はぁ…はぁ…はぁ…」


ゲバルトが大の字になって倒れている。


「はぁ…殺せ…俺の負けだ」

「はぁ…はぁ…殺しませんよ」

「甘いな。俺はまたお前を殺しに来るかもしれないぞ…」

「はっ…それは勘弁…してほしいですね」

「へっ…変なやつ」


俺もその場に倒れ込む。

もう立てない。


「聞いてもいいですか…」

「…なんだ…」

「先ほどの話などからなぜそこまで魔術師に固執を?」


ゲバルトは黙った。

やはり何か事情があるようだ。


「師匠が魔術師に殺された。」


ゆっくりとゲバルトは語り始めた。


「俺には親がいない。捨て子だったのさ、それを師匠は身元も知らない俺を拾って親のように育ててくれた。そして自分や大切なものを守る術…体術を教わった。毎日朝から晩まで修行して…死にかけたことなんて数え切れない。でも俺は逃げなかった、俺はいつか師匠をも守りたかったから…でもそれは叶わなかった。師匠には昔、俺より前に弟子がいたらしい。そいつはちょっと有名な魔術師の家のやつだった。めんどーなことには首を突っ込まないほうがいい。そうに決まってるのに師匠は違った。魔術師の家系とか関係なしに教えてと頼まれたから体術を教えた。でもだめだった。魔術師の身体に体術が耐えられなかったのさ。不慮の事故…つーか自殺だった。精神的にも病んじまったのさ」


自殺。そのワードを聞いてビクッとなる。

前世の俺と一緒だから。


「それを聞いた魔術師の家のやつらはそれまでたいして心配してなかったくせにそういう時だけ金だ金だと言ってきた。師匠も教えたことを悔いていた。だから気持ちで払っちまってたのさ。それが続いて金を取りに来た時、俺を見つけた。これはいいと思ったんだろうな。金はいらないからその子供をよこせ、とな。」


「師匠もそれには大反対。そこからはあまり覚えてなくて気づいたらボロボロの師匠が俺を守って戦っていた。きっとハメられたのさ。師匠がそう簡単に負けるはずがない。」


「やがて師匠は息をするのもやっとな程に弱っていった。それで弱々しい声で言ったんだ「生きろ」と。だから俺は誓った。もっと強くなって憎き魔術師を…俺が潰すってな。遺伝子ごと消してやるってな。」


仰向けのままゲバルトは悲しそうな目をして天に手をかざした。

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