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落ち着いて下さいアイン様



「急に押しかけて悪いわね」



 僕は今ヘルマナと2人でカフェに居る。落ち着いた雰囲気のお店で客の数も少ないから大事な話しをするにはいいかもしれない。



「僕は暇だったし大丈夫だよ」



「カエデに私の話しを聞いてほしいの」



 話しを切り出すヘルマナ。こうやって人に頼ってもらえるのは嬉しいかも。



「うん、僕で良ければ話しを聞くよ」



 力になれるかは分からないけど、僕なりに頑張ってみよう。



「ありがとう」



「この前会った時にした話しの続きなんだけど」



「うん」



 嫌いな男と結婚したくないって言う話しだよね。



「本格的に結婚する事で話しがまとまるかも知れなくて」



「うん」



「だから自分の考えをまとめるためにも誰かに話しを聞いてほしくて」



「やっぱり私は結婚したく無いし、家からも出て行きたい!」



「うん、分かった。じゃあ家を出るとしたら何が問題になるのかな?」



 まずはどんな問題があるのか知らないとアドバイスがしにくいからね。



「そうね、まずこの街からは出て行かなくちゃ」



「両親に連れ戻されるから?」



「えぇ、あとはどうやってバレずに街を出るかね」



「それと、街を出た後にどうやって生活をして行くかだね」



 どっちも難しそうだな。



「ウェイトレス、冒険者、受付嬢が今の第一候補ね。とにかく私が働ける場所を探さないと!」



「良いと思う。街に行けば何かしら仕事は見つかるかも知れないし。でも、冒険者は危なくない?」



「私は魔法が使えるから、最初はゴブリンなんかの低ランクの魔物を狩って生計を立てようかなって」



 そもそも冒険者ってどれぐらい儲かるんだろ。


「なるほど」



「あとは適当な理由を付けて家から出て、馬車に乗って隣町に向かおうと思っているの」



 ちゃんと考えてるんだなぁ。

 当たり前か自分の人生における大事な分岐点だもんね。



「お金はどれぐらい持ってるの?」



 最低限のお金は持って無いと馬車にも乗れないし、宿にも泊まれない。



「地道に溜めたお金が少しだけあるから、1週間ぐらいは働かなくても何とかなると思うわ」



「そう言えば、今さらだけどヘルマナって貴族の令嬢とかなの?」



「違うわ、商家の娘よ」



 政略結婚って言うから貴族の令嬢なのかと思ってた。



「隣街まで追手が来たりするのかな?」



「分からないわ、でも隣街からもすぐに移動しようとは思っているわよ。だから隣街で職を探そうとは思ってないわ」



「でも、色々考えてはいるけど不安なの」



 今まで親元で暮らしてきた人が自立を始めようと思ったら不安だよね。



「何に不安を感じてるの?」



「多分、本当に私は家を出てツテも無く1人で生きていけるのか不安なの」



 あったばかりの僕に大事な話しをしてしまうぐらいヘルマナは不安を感じてるんだろうな。



「今思うと親に指図されるのは嫌だったけど、言われた通りに動くのは楽だったわ」



「だから不満を持っても反抗しようとは思わなかった。だからもし作戦が上手くいって自由を手に入れられたとしても、それはそれでどう生きればいいか不安なの」



 そうか、何となくヘルマナに親近感を抱いたのは僕に似ている部分があるからだ。



 仕事を辞めたいけど経済的な理由や未来への不安なんかで行動に移せない僕を見てるみたいだ。



 でも、僕なんかよりも深刻な問題が攻めてきて戦うしか無くなったのか。



「何かやった事が無いことを新しく始めるのは不安になるよね。僕も失敗したらどうしようって世界の終わりのような気持ちを感じた事があるよ」



「ましてや、ヘルマナは本当に自分の人生がかかってるわけだから不安を感じても当たり前だよ」



 失敗したら死ぬかも知れないし、運が悪ければもっと酷い事になるかも知れない。



「そうよね、不安なのは普通よね……」



「うん」



「ウジウジ悩んでもしょうがないもの! 私は家を出て冒険者として生活してみるわ!」



「ヘルマナが決めたなら僕は応援するよ」



「ありがとうカエデ!」




「おー、こんなとこに居たのか。俺の妻になれてそうで良かったな!」



 ヘルマナの相談が終わって緩い感じに雑談をしていたら急に後ろから知らない男たちに声をかけられた。

 そして、そのうちの1人を見た瞬間にヘルマナの表情が一瞬だけ固まった。



「アイン様」



「女は優雅に昼からカフェでティータイムってか、本当に暇そうで良いよな」


 

 ヘルマナは「あはは」と苦笑いしながら男の言葉を濁す。



「それで、本日はどのようなご用件でしょうか」



「別にお前に用なんてねぇよ!」



 確かにこんな奴と結婚とか絶対に嫌だな。明らかにこちらを見下ろしてるし。



「そこの女はお前の連れか?」



 何か嫌な予感がするんだけど



「はい」



「そうか。喜べ、この俺の妾にしてやるぞ! 感謝しろよ」



 ウザ。



「不細工が何言ってるの」



「あ!!」



 煽り耐性低すぎない?

 なんかプライドが高そう。


「ちょっとカエデ」



 慌てたヘルマナに声をかけられる。

 つい、本音が出てしまった。



「テメェ! 誰に向かって口を開いてんだ」



「落ち着いて下さいアイン様」



 ヘルマナが男に落ち着くように促すが、


「うるせぇ! ちょっとツラがいいからって調子に乗るよなヘルマナ」



 逆効果だったみたいだ。


「ねぇ、喋んないでよ。あんたの息が臭すぎて空気が汚染されるから」



「ちょっと! カエデ!?」



 更に僕が男を侮辱した事にビックリするヘルマナ。



「俺に楯突いた事を後悔させてやるよ!!」



 そう言って男は拳を握りしめた。


 



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