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今はただ包まれていたい



「おはようカエデ」



 目が覚めると目の前にイデアルがいて、にこやかに挨拶をしてくれる。



 どうやら昨日起きた出来事は夢じゃ無かったみたいだ。

 夢の方が良かったのかどうかは分からないけれども。


「うん、おはようイデアル」



 僕も挨拶を返す。

 挨拶をするのもされるのも懐かしくて嬉しくてなる。



 実家に住んでいた時は何となくで挨拶をしていたけど、一人暮らしをしてから人とコミュニケーションを取る機会が減少した。



 だから挨拶もそうだし、些細な会話なんかも当たり前じゃ無くて大切な事だったんだなって知ることが出来た。



 しかも、イデアルは笑顔で挨拶をしてくれるからより幸せな気分を味合う事が出来るし、良い1日を送れそうな気分になる。



 ただ、1つ言いたい事がある……



「あの、なんか近くない」



 何故か僕とイデアルの顔の距離がだいぶ近くにある。

 少し顔を動かせばキスが出来るぐらいに。



「あ、ごめんね。ずっとカエデの寝顔を見てたんだ」



「ずっと?」



 そんなに人の顔を見てても飽きない?



「そしたらカエデが起きそうな事に気付いて、嬉しくて無意識に顔を近づけてたよ」



「そっか」



 そんな感じで朝の時間を過ごした僕とイデアルはホテル内にあるビュッフェを食べに行く事にした。



 普段は起きたらケータイをいじり始めるんだけど、こっちの世界にはそんな物は無いし、やる事が思いつかなかったからご飯を食べる事にした。



 ビュッフェでフルーツやプリンなんかのスイーツを口にする。

 朝からガツガツと食べる気分では無かったし、朝食をデザートだけで済ませるというのも少し特別な感じがして良い。




「僕はもう一回寝るね」



 部屋に戻った僕はイデアルに二度寝する事を告げる。

 予定の入っていない休日は二度寝するのが僕の楽しみの1つだ。



 今日からは仕事の事を考えずにぐっすりと眠れると考えると気分が良い。



 別に僕だって毎日仕事の事を考えてネガティブな気持ちで寝てるわけでは無いけど、もう行かなくてもいいって考えるとスッキリした気持ちで眠れる。






・・・






「あのさ、洋服を買っても良いかな?」



 昼ごろに起きた僕は、新しい服を買ってもいいかイデアルに確認する。

 実はブカブカのパーカーとスウェットパンツで過ごしていた。



「うん、大丈夫だよ。異世界から来たんだから服も持って無いよね」



 その通り。

 何たって無一文だからね。



「そうなんだ、今着てる服しか持ってない。だから、安い服で良いから欲しいなって。お金は後で返すから」



「お金なんていらないよ。むしろ、カエデが欲しいものをもっと教えて?」



 今まで人に奢ってもらった経験が少ないから「好きな物を買ってあげる」と言われてもどうするのが正解なのか分からない。



 そもそも、どちらかと言うと僕は物欲が無いタイプだし。



「うん、分かった」



 それでも、僕にお願いされた時のイデアルは嬉しそうだったから了承してしまった。



「番に尽くすのが俺の喜びだから。遠慮せずに好きなだけ俺に要求を出してよ」



 今泊まっているホテルを見ても分かるけど、多分イデアルは相当なお金持ちだと思う。



 そんなイデアルに好きなだけ要求すると言うのは少し怖さもあるし、一方的に尽くしてもらうだけの関係は僕が嫌だ。



「でも、貰うだけなのは嫌だからイデアルも僕にして欲しい事があったら遠慮せずに言って!」



 僕なんかに出来る事ならガンガン伝えてほしい。

 大した事は出来ないかも知れないけど、なるべく頑張るから。



「うん。じゃあ、ハグしてもいいかな?」



「え、ハグ? い、いいよ!」



 どうしよう、ハグなんてほとんどした記憶が無いし、少し恥ずかしい。



「ど、どうぞ!!」



 思い切って僕は両手を広げる。



 そうするとイデアルが近づいてきて、僕よりも大きい体に優しく抱きしめられる。

 身長差でちょうどイデアルの胸あたりに僕の顔があるせいで心臓の鼓動がドクドクと聞こえてくる。



 男に抱きしめられているのに嫌な感じは全くせず、むしろ安心感を感じる。



 イデアルが女装も似合いそうな爽やかイケメンだからなのか、僕たちが番だという事に関係があるのか、それとも身体に引っ張られて心も女性化しているのか。



 でも、正直そんな事はどうでも良い。



 この幸せな気持ちをずっと味わっていたいと僕の心が言っている。

 それが全てだし、余計な事は考えずに今はただ包まれていたい。




 


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