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闇も光も同じもの

 恋春はまさか、階段から──やみから、死の淵から追いやろうとしたのか?

 なのに、私は空想か臨死の世界で一度、いや、何度も殺めてしまった。訳もわからずに。



「やっと直視できたね。ひかり」



 輝く光源から姿を現したその人は、こちらを見やる。声音は優しく、美しい(かんばせ)をした女性だった。煌びやかな発光した衣を纏い、宝石の装飾が夜闇を照らす──女神か、天女か……。


 この世のものでないのは一目で分かる。けれどもどこか既視感があった。

「死を恐るか、否か、決めよ」


 あの『光』は死神かもしれないし、本当に神様かもしれない。でも今はそんな事どうでもいい。あの日の罪悪感と、未知を超えなければ。


 恋春を連れて、光に打ち勝たなければ!

 階段を、バスの車内を転がる。恋春の手を掴み、一緒に奈落の底へ(・・・・・)道連れにする。


「私も行くよ! 私も、一緒に!」

 汗が滲む手を強く握り、渦巻く混沌へと身を放り出した。






「ひかり! ひかりっ!」


 揺さぶられ、まぶたを開けると私たちは林の中にいた。近くには錆び付いたシャベルが転がり、何か布のような物が散乱している。

 近くから沢の音がして、私たちはバスから放り出され、ここまで落下したみたいだった。


「こはる……? あれ、何で、ここに?」

「分からない。バスが事故を起こして死ぬかもって意識を失って、目を覚ましたら……」

 あの豪雨の中にいた記憶は何だったのだろう? 私たちは傷だらけで瀕死の状態だったのに。


「怪我も、そこまでひどくない……何で、あっ」

「これに当たったおかげで助かったみたい。クッションみたいになって」


 自然の中に謎の布とソファが不自然に置かれていた。嘘のような話だが劣化したソファが私たちを救ってくれたみたいだ。

 雨が止み、暗く重々しい雲の合間から月が顔を覗かせる。夜は更けやがて朝が来る。冷たい空気が立ち込めた林の中でそよそよと頬を闇が撫でる。


「あたしたち、生きてるんだよ!」

「うん、夢じゃないよね……」

「今度こそ本当に生きてるんだ」

 彼女は泣いている。あの冷たい瞳をした親友はいない。

「ごめんね」






 私は呆然としたまま空を見上げていた。突然起こり目まぐるしい出来事に、理解できないと脳みそが停止してしまう。あの後、警察官や救急車やらでちょっとした小山は騒がしくなった。


 加えて奇跡的に助かった私たちの、あのソファには遺体が隠されていたらしく、それもまた周りを驚かせた。

 交通事故と死体遺棄事件、静かな街はどよめいている。


「あの生首の人が助けてくれたのかなぁ」

 恋春がポツリと言う。

「……助けてくれた、って私は思えないけど……でもね、気持ちは強くしてくれたよ」


「なんの?」

「これからずっと恋春と仲良くしていきたいって」

天降る光はこれにて完結です。

ありがとうございました。

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