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記憶

「──で、なんの用」

 無表情な彼女はこちらを内側から睥睨していかのようだ。そこがまた癪に障る。

 だから私は殴ってつき飛ばそうと──





「うっ!」


 先手をうってきたのはあちらだった。

 全身から汗が吹き出し、視界がスローモーションになる。フラついた体がバランスを崩し、階段へ浮遊する。


(──なんで、なんで? )


 まるでこちらの心中を読んでいたかの如し俊敏さだった。



 落ちていく。

 私は、死ぬのか──







 雷がひっきりなしに轟いている。雷鳴と吹きすさぶ、雨の中、息を切らしながらズリズリと何かを引きずってどこかへ向かっていた。


「ひかり、もう少しだから。がんばろう」

 隣から敵意をむき出しにしていた恋春の温かな声色がして、泣きそうになる。


「早く、公衆電話に」

 彼女の声が震えていた。雨に混じって血の臭いがする。それは自分自身からもしており、口内に鉄の味がして喉が焼けるようだ。


 2人とも傷だらけでもはや死に絶えそうだった。(え? )

「こはる、わたしは、いいから」


 バスの人たちを


 ゼーヒュー、と呼吸しながらも私は立ち止まった。もうダメだと分かっているから。

「バスの人たちなんて気にしないで! 今は、助けを呼ぶの! 私たちで!」

 豪雨の中、思い出す。私たちは帰宅するために路線バスに乗っていたのだ。


 その日は少しだけ喧嘩してしまった。きっかけは二人で制作していた写真集だった。

 写真部に入部していた私たちはコンクールに出す写真を選別するために、机をつきあわせはしゃいでいた。どの写真を出すか、とか、写真集にはこっちも良いよね、だなんて話を弾ませていた。

 その際に不気味なものを見つけてしまい、空気が凍る。


「これ、生首だよね」

「な、何言ってんの。こんな所にあるわけないじゃん。まさか、幽霊?」

 2人共、目をまん丸にして声を合わせて単語を発してしまう。


「死体かもしれない、警察に言おうよ」

「こはる。死体があったら気づくって、大丈夫だよ。お寺にいったりしてお焚き上げしてもらおう」

「でも」


 意見が食い違い、邪険な空気になって──クラスメイトたちが気づいて。

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