きっかけ
「喧嘩って、2人とも昨日まで仲良くしてたじゃん」
クラスメイトの一人がひどく困惑していた。それは私もだった。
記憶に齟齬がある。
確かに彼女とは親友で、クラスメイトにも仲が良いね、と茶化されているほどであった。けれど私たちは不仲になった──出来事があったはず。
それは数人のクラスメイトが目撃していたし、その後の私を気遣ってくれたりした。なのに、仲良くしていた?
その言葉を放った子は確実に渦中の光景を目にしていたのに。
「えー? 寝ぼけてるんじゃないの?」
恋春がわざとらしい仕草ではぐらかしてくる。周りもホッとしたかのようで、何事も無かったようにまた談笑し始めた。
「寝ぼけてない。私は……」
「その話、後でしようよ。すんごい顔してるし、周りにも良くないし」
「な、何よそれ!」
脳裏に恋春を殴って、階段から突き落とした情景が浮かぶ。転がり落ち、ダラリと肢体が放り出され目が虚ろに宙を見ていた。
それは──学校の階段での事。
(また、できるかもしれない)
「……。わかった。後で話そう、4階の階段で」
「良いよ」
恋春は私を唯一救ってくれたクラスメイトで、親友で……そして裏切り者だった。私を救ってくれる存在から転落したのだ。
だから手をかけて殺めた。
呆気ないほど人の体と友情は──脆かった。
でも転落した記憶が曖昧になりかけている。
屋上の手前、4階の階段。二人で静かに対峙し、私はポケットに重たい文庫本を忍ばせた。それで殴ってしまい、恋春はバランスを崩し落ちていった。
きっかけは口論で、彼女が吐いた言葉だった。
「私と絶交して」
「な、なんでよ。いきなり、昼間から……わたし、何か酷いことした? 意味わかんないんだけど」
「前からウザいと思ってたんだよね。金魚のフンみたいについてきてさー。友だちって名目であやかり過ぎ、気色悪い」
心拍数が上がり、体がフラついた気がした。そこからは……さっきの通り。
久しぶりに更新しました。




