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やみ

「私は…親友の恋春を殺したんです」


 これで何度目か。殺害を交番に申出る。

 警官は怪訝そうな顔をして、疲労した様相の墨坂ひかりをくまなく上から下まで眺めた。そして当たり障りのない笑みを浮かべ、言う。


「う~ん、君、何か悩み事でも?」


 恋春は私を唯一救ってくれたクラスメイトで、親友で…そして裏切り者だった。私を救ってくれる存在から転落したのだ。

 だから手をかけて殺めた。

 これで何度目の反応だろう。誰も、恋春を殺しあの()に食べられた事実を信じてはくれなかった。ひかりを頭のイカれた人だと哀れみ、または嘲り、相手にはしてもらえなかった。


 親友だった恋春の血痕が付いた凶器、土がこびりついたショベル。証拠は残っているのに、被害者の一人だと世間から認識された。

 事件に巻き込まれたショックから自らを加害者だと勘違いしてしまった可哀想な女の子。


「私は…被害者なんかじゃない。私は被害者なんかじゃ……」

 ブツブツと呟き、自身の正気を保つひかりを道行く人々は奇妙そうに見つめやがて興味を逸らしていく。早朝に学校に投稿するのも放棄し、衣食住を疎かにした少女は薄汚れ、一目で常軌を逸していると分かるのだから。


 神で、宇宙人で、悪魔で。何者でもない。

 空から降った光はそう言った。


「神で、宇宙人で、悪魔で…」 

「もしかして君、アレに出会ったのかい?」


 ふいに声をかけられ、ひかりは顔を上げた。黒ずくめの衣服を揃え纏った女性だった。彼女の瞳にはひかりは映らない。全てを吸い込む深淵だけがそこにあった。

「お話聞くよ」

「え…」ぐい、と腕を捕まれ連れられる。抵抗する気力もなく、彼女に連れられる。




「私は()。でも呼び名は幾万にも及ぶ。つまる所、私は何者でもなく何者でもあるんだよ」

 どこかで聞いたことのある謳い文句を口にすると、ハイボールをぐびりと流し込んだ。チェーンの中華料理店の一席で二人は向かい合っていた。

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