猫のみーちゃんと空中散歩
カクヨムにも掲載しています。
一
わたしが飼っている猫のみーちゃんはとてもかわいい。わたしが布団で寝ていると、みーちゃんも枕の横でまるくなっている。のどをごろごろ鳴らしておなかの上にのってきたりする。わたしはみーちゃんが大好きだ。
わたしは今日も学校に行けなかった。泣きながら自分の部屋にこもっていると、みーちゃんはこっちを見つめて心配そうに、にゃあと鳴く。わたしは頭をなでる。気持ちよさそうに目を細める。
「有菜、ごはんだよ」
そう母が言うので昼食をとる。
焦燥感に駆られて日々を過ごしていた。このままじゃいけない。そう思っていたが、どうしようもなかった。学校に行くくらいなら、死んでしまった方がよかった。
「有菜、起きて」
うとうとしていると、そんな声が聞こえた。時計を見ると、深夜二時だった。
また幻聴だろうか。わたしは布団から起き上がろうした。しかし足が重い。何かがのっている。見ると、女の子だ。
「えっ」
わたしは驚いて声が出た。同い年ぐらいの女の子が布団の上にのっている。
「驚いた? 有菜、みーだよ」
わたしは混乱した。みーちゃん?
その女の子の目をよく見ると、右の目は黄色く、左の目は青かった。みーちゃんと同じオッドアイだ。
「神様に頼んで人間のかたちにしてもらったんだ。今日だけの特別だって! だからさ、今日は空中散歩でもして、ぱーっと楽しもうよ」
二
みーちゃんはそう言うと窓を開けた。わたしの手をとると、ふわーっと浮かび上がった。そして窓から外に出た。
わたしたちはぐんぐん上昇していった。わたしたちの家が小さくなっていった。まばらに光る深夜の街が広がっていた。やがて雲を突き抜けた。
雲を見下ろしている。わたしたちは星々に照らされている。
「どう、有菜。爽快でしょ?」
わたしは幸せな気分になっていた。もう地上になんて戻らなくていい。このまま雲の上でみーちゃんと一緒にいられたら、それでいい。
「わたし、ずっとこうしていたい。地上になんて戻りたくない」
「有菜、聞いて」みーちゃんが言った。「そんなに学校に行くのがいやなら行かなくてもいい。でも、死なないで。有菜は生きて」
沈黙が続いた。
「みーはいつでも有菜のこと見守ってる」
みーちゃんの手は温かかった。
三
気づいたら家の中にいた。わたしは布団で寝ていた。布団の上にはみーちゃんがもとの猫の姿でいた。わたしはみーちゃんをなでた。しかし反応がなかった。
みーちゃんは息をしていなかった。