桃太郎 THE NEXT ~ 英雄たちの邂逅 ~
「力太郎」は東北出身の英雄で他の「垢太郎」、「こんぴ太郎」という名前で呼ばれている。桃太郎の亜種だが神様の垢を丸めて生まれるとか、武器は金棒とか実は神話の系統としては桃太郎より由緒正しい。皮膚も初期設定では赤。桃太郎、金太郎と同じだ。ちなみに岩コ太郎は岩子太郎、石コ太郎は石コ太郎と表記されることもあるがそもそも「コ」が「子供」なのかどうかわかっていないので「コ」にしておいた。この小説によって注目を集め、「放置少女」や「FGO」で大活躍することを期待する。児童図書で推薦されているんだぜ‼
昔あるところに…犬が歩いていた。
名前は剣牙虎、桃太郎のお供の犬である。
犬はおばあさんに頼まれておじいさんを迎えに行く途中だった。
「おい。見ろ、あれは桃太郎の家来の犬じゃねえか」
鬼たちに見つかった。鬼たちは鬼ヶ島を滅ぼされた後、コンビニ店員や工事現場の警備員として真面目に働いていた。
桃太郎は鬼退治の後に家来への待遇がどうとかで周囲に文句を言われたせいで家で寝込んでいた。
「明日から、明日から本気出す。金山で働くフリをして草鞋についた砂金を…」
これが今の桃太郎だった。
ざざざっ‼
風呂敷を背負った犬の前に鬼たちが殺到した。犬は身を翻して鬼たちと向き合う。
「お前らは鬼ヶ島の鬼ども‼」
「そうでーす、鬼ヶ島の鬼でーす。あの時はどうもでーす」
鬼たちはマイバッグから犬用のジャーキーを取り出した。犬は愛玩動物としての悲しい習性を発揮してか、お座りをしてしまう。鬼たちは全員にへらと笑った。
「お前をエサに桃太郎をボコってやろうかと思ったが予定変更だぜ。これから俺たちの宿舎に連れ帰って飼ってやる‼」
「きびだんごなんてもう飽きたろ?これからはサイエンスダイエットのドッグフードを食わせてやるからな‼」
「散歩は交代で朝、晩に連れて行ってやるぜ。へへへ…」
犬は小さな額に汗を浮かべながら後ずさった。ついこの間までは雉と猿の散歩を犬がしていたわけだが、流石に他種族の散歩などをしても全く楽しくは無かった。特に雉とは折り合いが悪く「もう少しゆっくり歩いてくれ。俺とお前じゃ歩幅が違うんだよ」とクレームをつけられる始末。
犬猿の仲とは言うけれども猿はおじいさんとおばあさんからふさぎ込んでしまった桃太郎に関する相談を犬が受けていたことを知っていたので最近は「犬君。散歩する役だけど、今日は俺が変わろうか?」と心配されていた。
(猿と散歩するとしょっちゅう猿仲間のところで鬼退治の話ばっかさせられるからな(猿への配慮の為、猿の活躍を水増ししている)。ストレスで俺が禿げるっつーの‼)とそういう複雑な事情を差っ引いても鬼たちの提案は魅力的だった。
「はあはあ…。さあ、おとなしくこの首輪に首を通しちまいな」
「うちも年齢食った両親とか大勢いるからよ。じいさんとばあさんも連れて来てもいいんだぜ?」
鬼たちは次々と魅力的な話を持ち掛けては犬を惑わす。犬は自身の名前と自分のHPにアーサー王や孫悟空の悪口しか書かなくなった桃太郎と、日々桃太郎からアヴェンジャーズのどこが悪いとかばかり聞かされてすっかりやつれてしまったおじいさんとおばあさんの事を思い出す。
(所詮はきぶだんごで成立していた主従関係。破棄するなら今かもしれない)
犬は少しだけ迷っていた。
「待てい‼」
ざざん‼その時、都合よく小高い丘の上から三つの影が現れる。
「貴様らの悪事、天が見逃しても我ら三兄弟が見逃さん‼行くぞ、兄弟たち‼」
「おう、力の兄さん‼」
「ハッハァ‼ワシが一番乗りじゃあ‼」
三人の男たちが飛びおりてくる。どすんッ‼どすんッ‼弟分二人は華麗に着地したが三人目はどうなったかというと…。
「ぐおおおおッ‼」
着地のショックで下半身が砕けていた。
「兄さん‼大丈夫か‼今ワシの垢で下半身を作り直すからな‼」
男は垢すりを使って大根おろしのように大きな身体から××を出した。ようはオッサンの垢である。豚骨スープを出すラーメン店の裏口から漂う匂いがした。
「よくも力の兄貴を…ッ‼この身を修羅に食わせても、この石コ太郎が許さんわい‼」
「げえええええッ‼お前らは力太郎一味かああああッ‼」
鬼たちは恐怖のあまり泣き叫んだ。彼らこそは日本の昔話のダークヒーロー、力太郎と力自慢の義弟たちだったのである。
「ぎゃひんっ‼何だこのバルミジャーノ・レッザーノ(パルメザンチーズのこと)みたいな臭いは‼鼻が曲がりそうだワンッッ‼」
石コ太郎は石のように固い肉体でポージングを極めて次々と鬼たちを追い払った。
その間、力太郎の義弟岩コ太郎は得意の粘土造形技術を使って力太郎の肉体を修復する。
「兄さん、出来ましたぜ‼」
「流石は岩コ太郎だ。まるで生まれ変わったような気分だ」
力太郎は大股で歩こうとしたが岩コ太郎に止められた。
「その動くのは接着剤が固まってからで、お願いしやす」
「がははははッ‼まるで昔のゲルググのプラモ(股の関節の部分)だな‼」
結局、力太郎は手すり付きの台に乗せられた状態で犬のところまで移動することになった。足元には”接着中につき”という立札が置いてあった。
「おい、石コ太郎。鬼どもはどこに行った。これから俺がやっつけてやろうと思ったのによ」
力太郎たちが現場に到着するとサイドチェストを極める石コ太郎と口から泡を吹きながら気を失った犬が横たわっていた。
「うお⁉くせえ‼誰かと思ったら力太郎の兄貴か。鬼ならこの通り、力太郎の弟分である俺様のポージングを見て逃げ出しちまったぜ。奴等今頃ライザップに申し込んでいるはずだ」
「がははははっ‼そうかそうか‼流石は石コ太郎よ、褒美にトレーシングペーパーでも買ってやろう」
「ヒャッホウ‼これで全身がさらにツルツルになることだろうぜ‼…田宮模型ので頼むぜ」
二人が怪しげな会話で盛り上がっているところに岩コ太郎が現れる。彼は気絶した犬を抱っこしていた。
「桃太郎の家来ともあろう者が他愛ない。兄者、これからどうしますか?」
「知れた事よ、弟よ。どちらが日本最強太郎か決める為に東京ドームで試合を…」
力太郎は大晦日に東京ドームで桃太郎と戦う予定だった。すでに複数の腕自慢の”太郎”たちに声をかけている。
「兄貴、岩コ太郎ッ‼でかい熊が来たぞっ‼…うおッ‼熊の上にハイレグの水着みたいな服を着たヤツがいやがる‼」
金太郎、参戦‼
金太郎は熊に乗って東海道(この時代にあったかはわからない)を北上していた。このまま日本一周をする予定だったが熊の野性の勘により盟友にして最大のライバルである桃太郎の家来のピンチを知ったのだ。
金太郎は現場に到着するなり駐熊場所にリードをつけた熊を置いてくる。話の通りに赤い腹かけしか身につけていないが、中身は常識人だった。
「おい。その犬をどするつもりだ。ここはペットの放し飼いは禁止されているんだぞ‼お前らみたいな奴らのせいでペット飼ってる奴が迷惑するんだ。ちゃんとリード線をしておけ」
金太郎は三人を睨みつけた。
「おうおうおうおうッ‼変な服着た兄ちゃんよう‼ここにおられる太郎をどなたと心得やがる…‼しばらく風呂に入っていない爺さんの垢を固めて生まれた力太郎さまだぜ‼」
「はんっ‼岩手じゃチャグチャグ馬コくらい人気者なんだぜ⁉」
早速、石コ太郎と岩コ太郎が会話のマウントを取りに来る。
「けっ‼物を知らない野郎は道理も知らねえってわけか‼知らねえなら教えてやるよ、俺の名前は金太郎。川からどんぶらこって流れてきた金塊を坂田蔵人っていうど偉い侍が割ったら出てきた赤ん坊が俺様よ‼」
「金塊だとぉぉぉッ‼」
そして、新しい伝説が生まれていた‼
三人は相撲とかして決着をつけようとしたが途中で力太郎の体に致命傷になりそうなヒビが入って中断した。
「…次はダイキャスト製のボディにしてくる」
「ハッ‼また会おうぜ、兄弟‼」
こうして桃太郎、金太郎の兄弟の中に力太郎が加わった。彼らは後に行われる真・英雄大決戦で再会して共闘することになるのだがそれはまた別の話である。
「剣牙虎」という文字を見て果たして何人の人間が「○○の守護者」の事を思い出してくれただろうか…。