下
ラニとシーモは地下牢脱出のため、廊下を歩く警備をあの手この手で抜け、進んでいた。
地下牢というくらいだ、外に出たければ上に登って行くだろう。
しかしシーモは暗い階段を見つけると、指先から白い火を出し、そのぼんやりとした明かりを頼りに階段を下って行った。
「ここ広いな……なあこれって時間かかるか?早くしてほしいんだが」
「ふふ、どちらもNOさ、時間はかからない、しかしこれ以上早くはできない、待ちたまえ、もうすぐさ」
ラニとしてはすぐにでも外に出たいのだが、乗りかかった船、この胡散臭い男を残して行くのも後味が悪く、訳も分からぬまま『寄り道』に最後まで付き合う事にした。
階段を降りきると、ひとつ上の階と同じ、長い廊下に牢屋が並んでいる、奥には半開きのドアが見えるが、暗くて中は見えない。
牢は全てが空で開きっぱなし、真っ暗で音もせず、この階層は使われていないと一目でわかった。
階段はもう一つ下に降りれるようだったが、下からは明かりが漏れ、男の話し声も聞こえる。
恐らく亜人狩りは最下層を主な活動拠点にしているのだろう。
「せめて何がしたいかだけでも教えろ、できそうなら手伝うから」
小声で急かす、するとシーモはしゃがんで何やら石造りの床を撫で始めた。
「ワタシはここに捕まってるであろう亜人達を保護しに来たんだよ、ついでに罪人……亜人狩りの連中をね、ちょいと懲らしめて二度とこんなことできないようにしてやろうかと、まあ開放の戦士って事さ、いやワタシの場合開放の魔術使い、かな?」
「保護?亜人が安全な場所があるってのか?」
ジョークを無視し食いつく、亜人なら誰でも気になるだろう。
「少なくとも、こういう場所よりはね、詳しいことはここにいるはずの亜人達を助けてから、ね」
「……わかった、じゃあ早く行くぞ……何やってんだそれはさっきから」
話している間、シーモは床に白い筆で円を書き、円の中心にその筆を刺していたのだが、その筆をまっすぐ立てたいらしく、何度も立て直して調整していた。
「警備の数、空っぽの檻、亜人達の位置は掴めたからね、さっきはああ言ったけどワタシ一人ではこれ以上は難しい、だから本命に任せるのさ、はいはい三歩下がって、目がつぶれるかも」
ラニが言われたとおり三歩下がると、シーモは円に触れてつぶやく。
「光、目印、白の塔」
円に向かって小さな風が流れたかと思うと、建てた筆から光の柱が天井に向かって伸びる。
「これも魔術……これで本命ってのが来るのか、しかし純人間が魔術から科学に乗り換えてるのはこういう手間を嫌ったんだろうなぁ、術式だとか呪文だとか意味はわからんが、見てる分には中々面白いんだけどな」
「ワタシくらいになればもっと簡単に高出力でだせますがねぇ、余裕があるときには拘りたいタイプなのですよ、フフ、フフフ」
ラニが円の前にしゃがんで光を眺めているとシーモが軽く肩を叩く。
「いやあ見惚れてる所申し訳ないね、実はこの光下にも伸びていてね、誰にでも見えるんだ、つまり……」
言い切らないうちに、それが招く結果を理解した。
「なんだこの光!」「誰かいるぞ!」「そこの二人組!何者だ!」「侵入者!侵入者!」
「お前は!さっき檻にいれたは……ぐっ!」
顔に一撃。
真っ先に二人に近づいてきた男を即座にラニが蹴りで黙らせる。
「フフフ、思ったよりバレるのが早かった、ここなら大丈夫な気がしたのに」
「わざとらしい!」
廊下を走り抜け、半開きのドアの部屋に入る、ここは倉庫だった、偶然にも大きな棚が多かったので、それを使ってバリケードを作る。
「お前……言っとくが、今の私だと数人しかやれないからな……残りなんとかできるんだよな」
「勿論ワタシはいつでも絶好調!……まあ全員は無理ですね、はい、想定の倍はいました、いやあこの下は思ったより広かったみたいだ!」
シーモがパチンと指を鳴らすと、再び白い火が出てきた、それは先程階段を照らすのに使っていた物よりも勢いが強く、数も多い。
「ンーーお迎えがくるまで持久戦だねこれは!」