五十一と十九
「前提として、今ここにいる団員17名が参加しますが……ああそうだ、一応彼を紹介しておきます」
ロナザメトに手招きされ、1人の男が団員達の前に立つ。
その体は壁と見紛うほどに大きく、ノヤリスの中でも長身なチャシやオリセに並ぶ程だった。
「彼は先日のカトリスから解放された後に我々と戦うことを志願してくれました……自己紹介を」
「団員番号51……デー……くぁ」
熊の亜人である彼は名乗りの途中であるにも関わらずに大きな欠伸をしていた。
「はふ……失礼、団員番号51、名はデールと言う」
こいつほんとに大丈夫?という10人以上の視線がロナザメトを襲う。
「ガハハ、心配すんな!ソイツはこの作戦に充分ついてこれる!ワシが保証しよう!」
そう太鼓判を押したチャシは、あいも変わらずカロロに取り上げられた酒を取り返そうと手を伸ばしており、これはこれで信用しづらい。
「……コホン、では改めて参加団員の確認をします」
参加者は前回の『カトリス襲撃作戦』の参加団員からコルとヤカを引き。
バハメロ、ロナザメト、チャシ、カロロ、アリッサ、クド、ベーズ、リッキー、ラッシー。
そしてラニ、エミイ、オリセの計12人が引き続き参加。
そこに『鋼華』から隊長のナノン、錬金術師ラック、その弟子のクムル。
『弾犬』からヨンヨン、『酔鳥』からデール。
計5人が加わる。
ヨンヨンは太った体型が目立つ狸の亜人で、ラニ達が加入する以前からノヤリスにいた、団員番号19番。
長らく非戦闘員であったがノヤリスの『新体制』発表時に決意。
デールと同様、戦闘員に志願しそれ以来破竹の勢いで任務をこなす自称『動けるデブ』。
新たな戦力も加わった総勢17名が今作戦の全参加団員だ。
「先程、『今作戦は短期決戦ではなく複数回の襲撃による消耗戦』と言いました、それについて説明をします」
そう言いながらロナザメトはマップに3つのマーカーを貼り付ける。
「まずこの地点を抑えます、以降この三箇所を『狙撃地点』と呼びます」
「狙撃……ですか?」
「はい、狙撃地点からは敵拠点の出入り口、そして逃走経路を一方的に遠距離から攻撃できます、ここに飛び道具が扱える僕、ナノンさん、ヨンヨンさんを配置、敵を一人も逃さない事で援軍要請を封殺します」
マップ上のマーカーから矢印を書き足している間に、エミイが質問を投げかける。
「かなりの距離がある様だけれど、本当に『全員』止められるの?」
「心配無いっす!私のナノンロイド5号は精密射撃に特化した完全新作で……」
「ここで出さないでください邪魔なので、僕の魔術弓もヨンヨンさんの『投石』も作戦に組み込めるだけの精密さがあります、それに数人を止め、『退路を塞がれた』と思わせるだけでも有効だと予測されます」
「投石って……はあ、そこまで言うなら信じるわ」
「アタシからも質問いいかしらん」
エミイに変わり、次はベーズが手を上げる。
ギラギラとした青色の袖が目に悪い。
「『カトリス』の書類、読んだわ、アレ書いたのエミイちゃん?すっごく読みやすかったわ♡字も綺麗でまるで物語みたいにスルスル……」
「ごほん……」
「あらヤダ脱線脱線、本題は書類に書いてた機関砲?だったかしら、ああいう『最新の物』があったら困るわぁ、遠距離から返り討ちだったり、そもそも通信機?とかいうヤツを持ってたなんてなった酷い目に会っちゃう!」
「前者……機関砲の方は有効射程の外から一方的に撃てる様狙撃地点を設定したのでご安心を、そして後者、通信についてですが」
「その解決の為に僕がここに呼ばれたのよね……クムル」
「はい!師匠がナノンさんと共同開発したこの錬金術と機構の合作、『妨害人形』が外との連絡を遮断します!僕は見習いなので理屈はよくわかりませんが師匠とナノンさん曰く確実だそうです!」
等のナノンとラックは二人揃って鼻を高くしたりふんぞり帰ったり自慢気な態度で座っている。
「通信機は純人の中でもかなりの最先端技術らしいっす、そう簡単に持ってるとは思わないっすけど、不安の芽は徹底的に潰していくのが今回の方針っすからね」
「ちなみに人形型なのは?」
「デザインミクノちゃんっす!可愛いでしょう!?」
「コレを起動している間は魔術だろうと科学だろうといかなる手段でも拠点の外への連絡は断ち切られるのよね、だから錬金術も同じなんだけど……正直コレがデメリットになるのは渡り月組だけなのよね」
渡り月が連絡手段に用いる鈴は他でもないラックの作った錬金道具だ。
通信を遮断する理屈を理解できているのはラックとナノンだけだが、二人の技術力に関しては誰も疑う余地がない。
(じゃあ出発する前にコルに連絡しねーとな)
ラニと同様に、エミイとオリセも作戦会議を終えたらコルに一言伝えようと考えていた。
「さて、これで亜人狩りを拠点に縫い付ける準備は整いました、次はその拠点をどう『潰す』かです」




