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亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
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都合が良くて怖い奴

強い風の音が寝耳に入る。

たちの悪いことにその強風はとても冷たい。

寝ている人間をたたき起こすために産まれたような風が、倉庫で寝息をたてるコルに直撃した。

「……さぶっ!!ラニが外に出たのか、扉ちゃんと閉めてくれよもー……」

外で彼女が何をしているのか知らないが、一言文句を言ってやろう、と扉から顔を出し辺りを見回す。

探した姿は見つからない。

不思議に思いながらも一度扉を閉めようとした時、地面いっぱいに積もった雪がそれを引き止める。

扉から始まり数歩、突如消えた足跡と、別の方向から始まり、終わりの見えない足跡。

(これは……ラニの足跡だろうな、じゃあこっちのは?なんでラニのは途中で消えて……)

「しまった!クソっ!」

よりによって今晩、偶然ラニが空腹と眠気で弱っているタイミングで最悪が起こってしまったことを理解した。

そんなタイミングなどほとんど無いのに、しかもそれでもなお、ラニは気が強い、戦う意志があれば普通の人間にはまず負けない。

ラニの知らない技で不意打ちでもしない限り。

「……魔術……!ああ全部最悪だ、魔術使いが亜人狩りとかしょうもないことを……!」

コルは顔を青くして自分の荷物をひっくり返し、中から『銃のような何か』と『針のような何か』を引っ張り出して、足跡を追った。



一方その頃。

ルヘランをしばらく離れた所に、小さな屋敷があった。

実はこの屋敷、建物自体はボロボロなのだが、手入れの行き届いてないキッチンの床下に地下への階段がある。

ここは賊の拠点、中でも亜人狩りと呼ばれる彼らの生業の一つ、それを重視した拠点。

所謂奴隷の保管庫である。


ラニはその地下牢で目が覚めた、服や所持品が没収されてない辺り、連れてきてそのまま檻に投げられたのだろう、後でいいと思ったのか、雑な仕事だった。

「なめやがって……ふっ!」

起き抜けの体で鉄格子に蹴りを入れる。

錆だらけでろくに手入れもされてないとはいえ、今のラニには十分な強度があり、少し曲がったが出ることはできなさそうだ。

「はぁ、駄目か」

少しでも様子を調べようと鉄格子の隙間から廊下を見ようと顔を押し付けていると。

「必死だねえ」

牢屋の隅から声が聞こえる。  

「うわいつの間に!?」

驚いて振り返ると目隠しをした銀髪の男がいた。

「君が投げ込まれるちょっと前から、かな。しかし君、たくましいな、起きたかと思えばワタシに目もくれず暴れ出すんだから、まるで嵐、いや君の場合はもっと猛々しい、熱風とでも言おうか?」

男は掴みどころのない喋り口で語りかける。

身なりが綺麗なのを見るに、自分と同じ状況なのだろうか。

「お前は、亜人なのか?」

ラニはひとまず疑問を投げた、男は一目見ただけでは亜人には見えない、目隠しを取れば別なのかもしれないが。

「ああ、座っていると見えないね、ほらこれ尻尾、というか他にも聞くことあると思うけどなあ、『それ、見えてるの?』とかね」

細長い尻尾がちろちろと動くのが見えた、悪魔系だろうか。

悪魔系は角か翼があると聞くがそれらしいのは見当たらない、謎だらけだがやはり目隠しの奥に何かがあるのだろう。

「……その口ぶりだと見えてるみたいだな……私は詳しくないんだが、魔術か?」

誘導されたようだが実際に気になっていたため、聞く。

「ふふ、知らないのなら秘密さ、この世は未知で溢れているから美しいのだよお嬢さん」

癪に障ったので思わず拳を振り下ろしたがたやすく避けられてしまった。

「まあまあそう怒らない、からかってしまったお詫びだ、鉄格子よりそっちの壁を蹴るといい、そっちのほうが壊しやすいよ」

「次も冗談だとか言うなよ……オラッ!」

目隠しの男のいった通り、壁は檻よりも簡単に崩れ、扉の開いた空の牢屋を通って廊下に出ることができた。


「よし、とりあえず外に出ないとな、ついでにお前も……」

壊した壁から檻の中を覗くとそこには誰もいない、男は既に檻の外だった。

「おうともさ、旅は道連れ、さあさ一緒にここから出ようか」

「……なんなんだお前」

「おっとこれは失敬、ワタシはシーモ、細かい事情はとりあえず省きますが、貴方の都合のいい味方ですとも、すくなくとも今はね」

男はわざとらしい仕草と口調で名乗った。

「私はラニ、お前怖いな色々……絶対に後ろ立つなよ、ただでさえ魔術使いにやられてここにいるんだ、また後ろからピリピリされるのはゴメンだね」

「ではワタシが前で、外への道もわかるし……あ、そうそうワタシの後ろを来るのはいいけど用事があるから、寄り道いたしま〜す」

「……手当り次第出口探して一人で逃げた方がいいのかもしれない……」


(少し寝たとはいえまだ力が回復しきってない、ただの人間数人くらいならいいが、あのパチパチコートがいると厄介だ、シーモはかなり怪しいが、体つきが違うからアイツではない、今は大人しく力を借りよう。それに、コルも心配してるだろうしな……早く、帰らないと)

少し俯いて寄り道と言って進むシーモの後を歩く。

ふと、顔を上げるとニヤニヤ顔のシーモと目があった。

「んん〜、愛的なオーラを感じますね、お兄さんは応援するヨ!安心なさい、乙女は必ず大事な人の元へ返してあげましょう」 

「前向け前、乙女ってガラでもそんな歳でもないしアイツとはそんな関係じゃな……お前それ首どうなってんだ!?っていうか愛的なオーラってなんだよ!やっぱ色々怖いわお前ぇ!」



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