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亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
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印象

薄暗い団長室。

コルは緊張した様子で椅子に座っていた。

それだけならここまで固くなることはないが、団長直々に場所と時間を指定された上、わざわざ『一人で来るように』と付け加えられた事がその理由だった。


何か咎められる事をした覚えはない。

ならば任務だろうか。

だとすれば一人で来いと言われる事も無いだろう。

バハメロの意図が読めず、コルは素直にきいてみることにした。

「えーっと、何用でしょうか」

不思議と緊張で思わず言葉が固苦しくなる。

当然、それを感じ取れないバハメロではなかった。

「安心せよ、大したことではない、コルに聞きたい事があるのである」

「うむ、ずばり王国、大陸の三国についてである」

コルはそれが文字通り、自分の立っている大地で繋がっている3つの国についてであることを察し、その上で答えた。

「国?どうして俺に?」

「今更こう言うのも変ではあるが、純人であるコルの『印象』を聞きたくてな」

「はぁなるほど……?印象印象、近所の噂話とか、新聞の隅の他国情報くらいの知識で……ちょっと偏見も混じるかもしれないけど、それでも?」

「良いぞ、ざっくりとでいいから聞かせてほしいのである、亜人狩りについてもあればそれも」

「じゃあざっくり言うと……うーん、ノイミュは勉強熱心、ミスタルは冷たい、レマンは……おっかないって感じ?どこも亜人狩りは黙認してるけど一応目立つと捕まって……それが少ないのがレマンで、一番捕まりやすいのがミスタルなのかな……?ノイミュは普通、というか犯罪自体少ない印象……と、こういう話?」

「ふむ、一つずつ聞いくのである、勉強熱心とは?」

コルは自分の例えにしっくりきつつ、脳内で整理しながらバハメロにもそれが伝わる様に組み立て直した。



「新しい燃料が!とか、この道具がすごい!みたいな話は、大体ノイミュから出てたし、今の機械の時代もノイミュがやり始めた事だから、先進的な印象とも言えるかな。戦争とかあんまり興味ない感じで三国の中で一番小さいけど一番平和だと思う」

「ふむ、何故先進的だというのに小さいままなのであろう?」

「積極的に自国を広げるより、国の中をもっと発展させようみたいな、自分の国の中で作りたいもの作れれば満足みたいな人……例えばナノンみたいな、ああいう人が沢山いるんだって、昔ノイミュに行った知り合いの手紙に書いてた」

「ふむ、ナノンが沢山……納得である、では次に……『ミスタルは冷たい』であったか?」

コルは再び脳内で整理し、話を続けた。


「昔ここに来る前、ラニとしばらくルヘラン街ってとこに隠れてたんだけど、あそこはかなりミスタルに近くて、何回か耳がちぎれるかと思うくらい、北側ってのもあってそのせいかなり冷たいってイメージがある……」

「うむ、その街周辺の亜人狩り拠点で出会ったのであったな」

「その節はどうも」

コルは少し昔を思い出しつつ、色々聞きそびれた事もあった気がしたが、一度その話は置いて本題に戻ることにした。

「で、冷たいってのは物理的な話だけじゃなくて、俺が子供の頃に聞いた先代国王の話が印象深くて……」

「先代国王、であるか?」

「そう、ミスタルの先代は氷の皇帝って呼ばれたくらい冷酷で、家臣を何人も死刑にしたせいで暗殺、犯人はまだ見つかってなくて、その後当時まだ子供だった第一王女……今の国王が王座につくことになったっていう話」

「ふむ……それでコルは、冷たいと感じたか」

「……でも今はいい国だと思う、俺が物心ついた頃には国王も大人な訳だし、冷たいなんて言ったけど、新聞では明るい話題が多くて、国王も綺麗で聡明で慈悲深いって聞いたことがある」

「随分と持ち上げられているのだな」

「記者は美人に弱かったんだろうね、でも聡明ってのはなんとなくわかるよ、ここ数年は特に魔術文明も機械文明も、どっちもうまく取り入れて発展してる感じがする、慈悲深さは……」

コルは慈悲深いなら亜人に対するあれこれにも触れてくれと思ったが、それが慈悲の上であると考えるのも嫌だったため、笑って濁すことにした。

「それでなんとなく最後に回したけど、レマンについても必要?一応俺達が今いるとこだけど」

「無論である!吾輩もこの国に関しては『弾犬』の団員達に情報を集めてもらっているが、その上で聞かせてほしい」



「レマンはおっかない、これはミスタルよりもっとわかりやすく言葉通り。生まれ育ったから他より詳しいけど、常に軍事力の事を考えてる感じがする、ノイミュの作り始めた機械を真っ先に兵器利用し出したのもこの国」

「そういえばチャシに聞いたのだが、先日のカトリス襲撃作戦にて、大きな兵器に直面したそうであるな」

バハメロが腕を広げて大きさを表現しているが、それがなくともあの機関銃の事だと理解できた。

「あれもそう、異獣が襲ってきた時の対策みたいな名目だったけど、そう人里に現れるものじゃないから方便だよ完全に、まあ実際何回か目にしてあのくらいないと戦えない気はしたけど……」

「とは言いつつも、これまでに2度、異獣との戦いから生還しているではないか、すごいことである!」

「ナノンや渡り月の皆、あとは……不思議な力に助けられただけなんだけど」

コルは首から下げている歯車のお守りを握りしめた。

(そういえばあれは結局何だったんだろうな、いまだに何もわかってない)

「っと、脱線脱線……レマンは兵器とか軍事力に力を注いでて、俺の故郷みたいな田舎ですら4割くらい機械を取り入れてるくらいには発展してる国で……あっ、あと大事なのはつい最近国王が変わったって事」

コルはノヤリスに来てからは極稀にしか新聞を読んでいない、というより新聞の入手が稀な為、王位が第一王子に譲られる事を、その当日の数日前に知った。

「ミスタルみたいに、レマンもこれで変わったりするのかな……」

「吾輩には政治はよくわからないのである、が、この機に亜人について目を向けてくれればと、願うばかりである」

そういったバハメロの表情はどこか物憂げで、まるで今までのバハメロではないように思えた。

「……?バハ――」

「よし!大体わかった!メモも取ったから大事に使うのである!感謝!」

一言何か声をかけようとした所を脅かすように、突如大きな声を張り上げコルの手を固く手を握る。

その様子はまさに、いつものバハメロであった。

「ち、力になれたようで何より……?ところでどうして急にこんな話を?」

「うむ、コルにも協力してもらう必要がありそうであるからな、今のうちに話しておく事にしよう!」

コルはこの後、硬い握手を緩めない彼女よりも大きな声を上げる事になるとは、まだ考えてもいなかった。

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