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亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
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罠使いの狩人

19人の亜人を売りに出し、12人を殺害した、それもつい三日前。

髭面の男が明かしたその情報はにわかには信じ難いものだった。

しかし相手は亜人狩りであり、亜人を『商品』としてしか見ていない類の人物だ。

ここで嘘をつく理由も思い当たらない。


それを真っ先に理解し、誰よりも早く感情を表に出したのはベーズだった。

「貴様ァッ!」

「待てベーズ!」

ベーズは怒りに任せ拳を握りしめ、男に殴りかかった。

拳が男に当たろうとしたその時、踏みしめた床が輝き、灰色の模様が浮かび上がる。

ここまでに幾度も見た、魔術罠だ。

瞬く間に鋭い棘の様な鉄が、まるで溢れる様に飛び出し、ベーズに襲いかかる。

普段であれば避けることは容易いが頭に血の登っていたベーズは完全に交わすことはできず、棘は足と横腹を貫いた。

「があ……ッ!」

「ベーズ!クソッ!」

アリッサがよろめくベーズに向かって駆け寄るが、それすら計算のうちだと言わんばかりに、二人の足元は先程よりも強い灰色の輝きを放つ。

「クソッこっちが本命かよ……ッ!」

無数の棘が二人を襲う。

回避しようと試みたが、魔術罠は大の男一人抱えて避けるには大きすぎた。

(せめてこいつだけでも!)

アリッサはベーズを罠の範囲外に押し出そうとしたが、それすら間に合わない程に罠の展開は早かった。


ただ、バハメロは罠よりもっと、速かった。

二人を串刺しにしようとしていた無数の棘は、バハメロが振るった斧を前に粉々に砕け、床に落ちると同時に跡形もなく消滅した。

「団長……」

「……すまない、吾輩の一瞬思考が止まったばかりに……ロナザメト!」

「っ、はい」

「ベーズ、アリッサと共に後退せよ、ヤカとクドは向こうの班の支援に向かうのだ」

「……了解しました、団長は?」

「言うまでもない、あやつを打倒し、奥の亜人を開放する!」


五人が部屋を出て、牢の連なったこの部屋に残ったのはバハメロと髭面の男の二人だけになる。

バハメロ達の一連の動きを、男は眉一つ動かさずに眺めていた。

「何故止めなかったのだ」

「この部屋以外にも罠を張っているのは知ってるだろう」

「うむ、だが我々は殺す気のない罠など、冷静であればまず当たらない、そしてこの部屋を出た彼らは冷静である」

部屋中に静寂と緊張感が漂う。

「名を名乗ろう、吾輩はバハメロ、バハメロ・フラオリムである」

「亜人の癖に大層な名前だな、俺はラッパー、勿論通り名だ」

二度目の静寂。

どちらも仕掛ける気配がない。

「来ないのか?時間を稼いで有利になるのはこっちだぞ」

「否、これは様子見である、そして理解した、お前は我々が何をしようと攻めの姿勢を見せなかった、罠以外の攻撃手段を持たないのであろう!」

「だったらどうする?回り道でも探すか?」

「無論!全て乗り越える!」





同時刻。

揺動班は想定よりも多い敵を前に善戦していた。


ラニがチャシと最前線で大暴れする中、コルはとエミイはオリセの支援に徹して、最前線をすり抜けていた亜人狩りを対処していた。


「はあ……はあ……最初は無理だと思ったけど……案外なんとかなってる?」

「……恐らく、向こうは自分達を生かして捕まえようと……している……」

「ああ、気絶させるか戦意を喪失させる、で条件は一緒って訳ね!」

「貴方達……!こんな状況でよく喋ってられるわね……っ!」

以外にも戦闘に置いてほぼ役に立たなかったエミイが一番多くの亜人狩りを気絶に追い込んでいは。

理由は単純に、エミイの魔術は一般的に最低限の護身術として扱われる無詠唱の低下力魔術波である故に、対人戦闘であれば一定の力を発揮する。

この場においては峰打ちにまだ慣れていないオリセよりも戦力になる可能性すらある。

それでもエミイは戦いの素人。

視界の外から飛びかかる亜人狩りに気づかず、魔術を使う前に尻餅をついてしまう。

「ヘヘッ!おらよぉ!!」

「……!」

エミイの頭に向かって亜人狩りの棍棒が振り下ろされる。

しかしそれでも、エミイに傷がつくことはなかった。

「ァ!」

近くで大きな音がする、その音に気づいた頃には、亜人狩りの持つ棍棒は手から弾かれていた。

「何をしやがった!?」

「エミイさん!」

「……!感謝するわ!」

エミイはそのまま素手で襲い来る亜人狩りに、直接触れ、護身用の魔術をぶつけた。

全身にエミイにも少し伝わる程の衝撃が走り、亜人狩りは白目を向いて意識を失った。

「はぁ……はぁ……死んで……ないわね」

カロロが喉を擦りながら亜人狩りを縄で縛りに来た。

「こほ……エミイさん、加減が上手ですね……」

「はぁ?これが全力よ、それよりさっきから亜人狩りの攻撃が私達に当たらないの、貴女の力よね、一体何をしてるの?」

カロロは思わず失言をしたことに青ざめながらも手際よく気絶した亜人狩りを拘束している。

「そ、その、『音』をぶつけてるんです、小分けで使ってるので攻撃はできませんが……武器や体を弾いたりするくらいなら……」

「なるほど、音速の防御って事ね……」

「はい、出力を上げれば作戦開始の合図みたいに攻撃的にできますが……喉が痛くてしばらく使えなくなるので……撤退の時にもう一度あの出力を使う予定ではあります」

「……そう、ならしばらく使わなくてもいいよに、気をつけるわ、せっかくの綺麗な声が台無しじゃない」

「えへへ……たまによく言われます……」

カロロの顔が照れて赤くなる。

「青くなったり赤くなったり……忙しいわね」


倒した亜人狩りは全部で35を越えていた。

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