騒音
「な、なんだ今の音は!?」
「敵襲だ!敵襲に違いねえ!」
「俺確認してくる!」
亜人狩り達はカロロの爆音で一斉にひっくり返り、混乱して大騒ぎしていた。
「亜人だ!音の発生源は亜人!見てくれから奴隷じゃない、野良だ!数は最低6匹!門番は伸びてやがった!」
ざわめきがより強くなっていった。
だがそれはすぐに収まることになる。
「6匹程度で何騒いでやがる……」
「ボ、ボス」
「うるせえ、うるせえんだよお前ら、今何時だと思ってんだ……え?」
部屋の入り口に立つ強面の男を前に、全員が青ざめ、姿勢を正す。
男は葉巻に火をつけ加えてから、ボロボロのソファーに深く腰掛けた。
「『全員で』黙らせてこい、生け捕りにしたやつは小遣いをやる、女で100男で200だ、ほらいけ、まだ寝てる馬鹿も起こして行け」
「……うお」
「うおおおお!」
亜人狩りたちは雄叫びを上げ、揺動班に向かって我先にと部屋を飛び出した。
「チッ……うるせえっつってんだろ」
葉巻を加えたまま悪態をつく男に、一人の背の低い亜人狩りが近寄ってきた。
「あのボス……奴らの正体もよくわならねえのに、戦っていいんですかい?」
「お前は他の馬鹿より多少マシだな、安心しろ、亜人な時点でお国の連中じゃねえ、大方革命とか夢見た馬鹿だろ、ただあの爆音、亜人の癖にいっちょ前に魔術を覚えてくるくらいにはやる気だ、まあうちの連中が10人死んでから本番ってとこだな」
背の低い亜人狩りは顔を引きつらせる。
無理もない、目の前の男は正体不明の敵を前に部下が死ぬ前提の突撃をさせたのだから。
「そんな顔すんなよ作戦のうちだ、ああマシとはいえ馬鹿なお前に一つ教えてやる、ここにいれば最悪死なずに済む、なんて考えるなよ」
「……と言いますと?」
「『邪魔だ、俺に巻き込まれて死にたくないなら、あっちで10人死ぬまで隠れて見てろ』って事だ」
「ひっ……」
背の低い亜人狩りは慌てて部屋を飛び出した。
彼は偶然にも男の『狩り』を見たことがある。
男の言う通り、下手に巻き込まれれば命を落とすと知っていたからだ。
それなら大勢で6匹の獲物を囲む方がよっぽど命を大切にできると考えたからだ。
「ふぅ……さて、こっちは『何匹』かかるか」
ボスと呼ばれた男は葉巻を踏みつけ火を消し、部下の亜人狩り達が向かった方向とは逆方向の廊下を歩き出した。




