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亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
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錬金術師の弟子

入り口まで引き返したコル達は、先程までと別の道を使って錬金術師の工房へ向かうことにした。

階段を降りて地下を通った先程とは真逆に、次は螺旋階段を登って風通しのいいベランダを進む。

「ここからもりがみえるから、もりがももいろのときはこっちをとおるのがすきなの、いまは……うん、みどり」

ミクノがベランダから体を乗り出して迷路の森を眺める。

「ミクノちゃーん、あぶないわよー」

「はははいいじゃないか、あんなにはしゃいでるミクノちゃんはそう見れないよ」

下からの声へ視線を向ける、そこには草むしりをしている二人の亜人がいた。

ミクノは注意を受け、軽く手を振ってから床に足をつける。

「あ、あのふたりは『ひせんとーいん』だけど、いつもおにわきれいにしてくれる」

「そういえば今のノヤリスには非戦闘員も合わせて50人だから……そこから俺を除いて49人の亜人がいる訳だよね」

「ああ、数えてねえけど多分まだそのうち十人話したか?ってくらいだろ、ここは人が多いな」

(多い……かな、団長が言うに8人で立ち上げて3年で41人……『開放』を『革命』にするために、まず少しづつ組織を拡大していく……それで間に合うのか?こうしてる間にも……)

「コルにい?」

「早く行くぞ、お前置いてったら意味ないだろ?」

気がつくとミクノとラニは少し先にいた。

(……今俺が考えてもしょうがないか、あの時目の前でノヤリスの……誰かを助けるための戦いを見た俺が、信じなくてどうするのか)

コルは拳を握りしめた。

「戒めぇ!」

「「!?」」

そしてその拳で自分の頬を殴った。

「ど、どうしようラニねえ、コルにいおかしくなっちゃった」

「いや、前に一回見たことあるぞ、そうあれは二人で逃げてるとき山奥で変なきのこをコルが食ってな、あん時も私をぼーっと眺めた後ああ叫んで……」

「あれは忘れてくれ、さあほら!行くぞ!」

コルは腫れた頬で何事もなかったかのように小走りで二人に追いついた。



そのままベランダを進み、緑の生い茂る森と昼下りの風は長い移動の疲れを和らげた。

「遠回りも悪くねえな、これが風情ってやつか?」

「風情か……ああ、それもそうだな」

景観を楽しみつつ、再び屋内へ入ろうとラニが扉に手をかけた時。

「そこまでです!」

三人が振り返るとそこには一人の少年が息を切らして立っていた。

「ぜえっ……ぜえっ……じっ……はぁ……ですよ……っ!」

「なんて?」

少年の背には白の混じった茶色の翼があったことから鳥系の亜人と断定できた。

「あ、コルにい、このひとがクムルにい、ラックおじちゃんのおでし」

「ふぅ……そうです!僕がラックさんの一番弟子のクムルで……顔すっごい腫れてますけど」

「これは気にしないで」

「いやでも痛そうだし応急処置を……はっ、じゃなくて!」

クムルはどこからともなく包帯を取り出して歩み寄っていたが、寸前で何かを思い出して後ろに飛び退いた。

「噂の新人が師匠を探してるって聞いて拠点じゅう探し回りました、これ以上は……進ませませんよ!」

大声を上げると同時に、クムルのくたびれた袖から縄が飛び出し、ラニの腕ごとドアノブを縛り付けてしまった。

「ん……これじゃ開かないぞ」

「待ってくれ、俺はラックさんと話が――」

「師匠が言ってました!きっとあの純人僕にクレームつけにくるんだって!師匠は繊細だからそんなことさせませんよ!」

「クレームだなんてとんでもない!」

「おっとそれ以上進まないでください!」

縄の飛び出た袖と逆の袖から、赤いコインのような物が転がり落ちる。

「それは踏むと爆発するコインです、そして!」

クムルがさらに腕を振る、すると次は釘のような物が宙を舞い、ピタリとその場に留まった。

「これは空中に刺さる釘!コインを飛び越えると痛いですよ!」

「クムルにいまたあぶないものつくってる……」

「そして足を止めたところをこの早く走れる靴とすごく硬い籠手で気絶させる!回避不能!完璧!うりゃりゃー!」

コインも釘もない場所を縫うようにクムルが殴りかかってくる。

彼の言う通りコル達は大きく動けば負傷は免れない状況での、高速の拳。

「ふんっ」

「りゃっ……」

しかしそれはラニが空いた片手での拳骨で止まる程度のものであった。

そしてよろけたクムルがコインを踏む。

爆発と言うには小さな破裂音が鳴り、更に姿勢を崩したところに、浮いた釘の先がこちらを向いていた。

ギリギリのところでラニが腕を掴む。

「っと危ね、やりすぎたか?」

「あ……ありがとうございます……あれ?縄は……?」

「千切った、鎖と同じくらい硬かったが、今の私の敵じゃねえな!」

「釘は危ないよ釘は……さて、やっと話聞く気になってくれた?……あれ?まだ聞いてない?」

コルはこの後しばらく、赤面のまま放心するクルムの意識が帰ってくるまで声をかけ続けた。

これを書いてるのは12月中旬頃ですが年始は忙しいきがするので

次回更新は1月13日に投稿します

それでは良いお年を

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