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亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
34/185

8→6=10

「コル!刺せるか!?」

「ムリ!」

「了解!」

「何か思いついたなら貴女達で完結しないでくれる?」

異獣との戦闘が始まってはや数分、戦況は異獣が圧倒的に優勢だった。

「コルの銃であいつに隙を作れるか聞いたんだ」

「この銃であいつに針を刺せば一瞬動きを止めれるんだけど、あっちの針が多すぎてこっちの針が体にまで届かなそう!異獣の針が刺さるぎりぎりくらいまで近づけばこっちの針が刺さるけどそんなに近づいたらあっちの針が――」

「ああもうわかったから、紛らわしいわ!」

これまで様々なパターンで攻撃を仕掛けたが、モグラの異獣の全身を覆う鋭い針がそれら全てを受け流す。

「……針山というより……剣山……ッ!」

ラニが岩を投げ気を引いているうちにオリセが詠唱を試みようとする、すると異獣はすぐさま首をぐりんと曲げ、その巨体でオリセに飛びかかる。

オリセは詠唱を中断し、異獣の攻撃を跳んで避けるが、飛び散る小石全てを躱しきることはできなかった。

四人はこれまでこの小石の追撃によってじわじわと消耗させられている。

「避けても喰らうのズルだろ!こっち向きやがれ!」

ラニが再び投石で異獣の気を引く。


戦闘力の低いエミイは他3人より少し離れたところで牽制と簡単な回復役を担っていた。

(このままだと同じことの繰り返しだわ、考えるのよ……異獣はオリセの魔術を止めに来る……よほど受けたくない、つまりこの勝負、オリセの魔術を当てることが鍵になるはず――)

「――オリセ、さっきから使おうとしてるその詠唱、どこまで『繋げる』気?」

「……8」

「8って……間に合わないわよ、拘束するだけならどのくらい減らせる?」

「……仕留めなくてもいいのなら……6」

「6……6ねえ、んー……」

考えこんで唸るエミイの前にコルが飛ばされてくる。

「いったぁ……君達の話もだいぶわかんないんだけど、何その数字」

「はあ……魔術講座をしてる暇はないの、オリセ、何秒欲しい?」

「……10秒……」

「ラニー!ちょっとだけ一人で頑張って!……つまり10秒稼げばいい?」

大声で何か訴えながら暴れるラニを背に、コルも相談に加わる。

「正確には10秒、地面を踏みしめ魔術に集中するオリセを異獣が邪魔できないようにしないといけないわ」

「難しくないか?」

「だから考えてるんでしょう、貴方の変な道具でなんとかならない?ならないなら戻ってくれる?」

「変じゃない!ちゃんとどれも便利な機能が付いてるんだ!……10秒なんとかなりそうなものはないからあっち行くけどね!とはいえあっちでも使えそうな物はない……便利とは?」

コルは自分と自慢の道具達の行き場を見失い肩を落とした。

「チッ、いいから早く行きなさい、自慢の伸びる棒でも振り回してくればいいわ」

「うん……」

カバンから発光機能を失ったカノヒ棒を取り出す。

壊れていない方のダイヤルを回すと、仕込んだ機構が正常に動作し、最長でコルの背丈と同じくらいまで伸びる。

(……結局伸びる機能使ってないな、深さを測るのにも使わせてくれなかったし……『振り回してくればいいわ』か、突き攻撃に使う予定だったけどここなら確かに振り回せる、試しにやればとりあえずなんか閃くかもしれない、よし行くぞここならもう引っかからな……い……)

「あ」

カノヒ棒をやんちゃに降り回す前に、閃きはやってきた。

「あああああ!」

「うるっさいわね!早く行きなさいよ!」

「ごめん、でも閃いたんだ10秒作る方法、聞いてほしい」



「おいまだか!?投げる石なくなってきたぞ、そうだ直接針殴って全部砕くってどうだ?刺さるのは我慢で……」

離れた位置の3人からは返事がない。

「なあ全部砕くって――」

ラニの提案もお構いなしに異獣は攻撃を続ける。

ぎりぎりで避けるも跳ねた石が体を掠めた。

そのうちの一つが頭に命中する。

「……ッだらあ!」

そのまま後ろ向きに倒れそうになるのを気合で堪えて構え直す。

「ははっ、道場での組手の成果が実感できるなぁ」

ラニの後ろには大きな針が数本落ちていた、攻撃を躱す瞬間、その後の石の追撃を受けるかわりに折ったのだ。

「なあお前、コル達がこっち向いた時、お前がツルツルになってたらびっくりすると思わねえ?」

獣ではない何かである異獣にも、本能がある。

モグラの異獣はここにきて初めて、恐怖した。

この女が一番強敵だと、本能で理解していた。


異獣は唸るような鳴き声で威嚇する。

不意に、異獣の背後に小石がぶつかる。

「もうちょっと待ってくれればツルツルだったのに……」

異獣が振り返る、石を投げたのはコルだった。

オリセに担がれカノヒ棒をしっかりと握りしめている。

「今日もまた担がれてんなあ……じゃなくて、なんか思いついたのかー!?ッ……!」

異獣は強敵との戦闘を避け数を減らすことを優先したのか、それとも魔術を扱うオリセを見たからか、後ろ足で土煙を起こし、標的をラニからオリセとコルに変えた。

「なんか思ったより簡単に来たな?オリセ!とにかく走れー!」

「……ああ、了解した……!」



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