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亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
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ただでさえ暗いのにさあ

暗い。

洞窟に入ってから数十分間が経過していた、そんな中で一番の暗闇。

今まで奥へ奥へと進むことができたのは偏に灯りがあったからだ。

「……つかないわ」

「貸して、うーんよく見えないけど光源石自体が割れたっぽい」

エミイの落としたカノヒ棒は、落下の衝撃で灯りとしての機能を無くしてしまった。

「曲がったりはしてなくて伸ばせはする、ピンポイントでいま必要な部分だけ壊れてる……」

「代わりになるものはないの?」

「無いなあ、魔術灯はラニ達が持って言ったし……魔術、そうだ!魔術でなんとかできない?こう光の線が〜みたいな」

「できたら最初から使ってるわ、生憎光の魔術とは相性が悪いの」

「相性とかあるんだ……じゃあ火をつけて松明にするとかは?」

エミイは罪悪感を感じているのか、どこか自虐的に答えた。

「あのね、私の魔術は護身程度なの、指先で触れたら痺れさせるとか、軽い傷を塞ぐとか、その程度のことしかできないわよ、悪かったわね」

「そっか、どうしたもんかなあ、手探りで進む……のはさすがに危ないか、一旦休憩だなこれは」



コルとエミイは壁にもたれかかって座った。

コルは手探りで鞄を漁り、中から小さな袋を取り出して、エミイがいるであろう方向にそっと差し出した。

「はいこれ、中にお菓子が入ってるから食べな」

「……貰うわ」

エミイが袋を手に取ったのが感触でわかる。

「何?これ、固くて小さくてブツブツしてて……石?」

「なわけないでしょうよ、ナノンから貰った白星ってお菓子だよ、名前の通り白い星みたいなんだ、見えないけど」

「甘すぎるわ」

「まあかわいいだけで他は砂糖の塊だからね」

「これは噛んでもいいの?」

「いいよ」

暗闇からボリボリと、小さな星が砕ける音がする、何も知らないとちょっとしたホラーだろう。

「……きらいじゃないわ」

「それはよかった、気に入ったなら俺の分も後で渡すよ、そういえば一人一袋あったのに渡しそびれたなあ」

星を噛み砕く音が止まる。

「鈴を使ってあの二人に報告しておいたほうがいいんじゃない?こういう時使うべきじゃないかしら」

「確かにもう地に足ついたしね」

コルが先程聞いた通り鈴についた紐をつまみ回してみる。

次第に鈴の音が消え、中から別の音が聞こえる。

「これで起動するのは間違いなさそう、もしもーし」

返事がない。

代わりに地鳴りのような音が聞こえる。

その音は鈴の中からだけでなく、コルとエミイの耳にも直接的流れ込んできた。

『……ろう……んで……に……!』

「!ラニ!オリセ!聞こえる!?」

『……ル……と……待っ……』

「雑音がひどいな、もしもし、もしもーし!」

「……雑音すら聞こえなくなったわ、どういうこと?」

「この鈴の事は後でちゃんと調べよう、それよりさっきの音も急な雑音も、二人が心配だ、引き返そう」

「それで、私が壊した棒の代わりはあるの?」

「ないけど、絶対に良くない雰囲気だったから、手探りでも行かないと」

「それは危険だってさっき自分で言ってたじゃない」

「何にせよ動かなきゃだろ、こうも暗いと新しく作ったり直したりもできないから、多少危険でも行くしか……」

「……はぁ、まあそれもそうね、でもちょっと待ちなさい、後ろを向いて」

エミイが立ち上がった音がした。

「後ろ?」

「いいから、本当はやりたくないけどこれしかないの、いい?絶対に振り向かないで」

コルの背後から音がする。

形容しがたい、強いて言うならば『奇妙な音』としか表せない異様な音がする。

それはおおよそ人体から出る音ではなかった。

「エミイ!?何して――」

「振り向かないでって言ってるでしょう」

エミイは体ごと後ろを向きかけたコルを止め――。

「……チッ!!」

大きく舌打ちをした。


「今何してるの説明は?」

「しないわ、黙ってそのまま前を向いて進んで、二人にはこの奥で会えるわ」

「なんでわかるのか説明は……」

「しないわ、それと二人と会う頃貴方は痣だらけでしょうけど、何もなしに進むよりはマシとだけ言っておくわ」

「……うん、一つもわかんないけどわかった、信じよう、痣は後で治してくれよ」

コルは光一つない暗闇に向かって大きく踏み出した。

「そこ段差あるわよ」

盛大に転び、早速痣ができる。

「先に言って欲しかったなあ!」





「今……」

「はぁ……はぁ……どうした?」

「……コルの声がしたような……」

「あ?また鈴か?でも今それどころじゃないだろ」

オリセが頷く。

二人はここが地下だと忘れてしまいそうなほど天井の高い空洞にいた。

そんな広い空間の隅の岩陰に身を潜めている。

「クソッ……でもあいつらに引き返すぞって言わねえと……」

「……今は駄目だろう、鈴の音で見つかってしまう……」

「わかってるっての、どうする?『あれ』、二人がかりでやれるか?」

「……難しい……と自分は思う……」

「私もだ、じゃあ一旦引いてコル達と合流――オリセ避けろ!」

隠れていた岩に衝撃が走り、崩れ去る。

「クソッ!いい体当たりだな畜生!やるぞオリセ!撤退優先、できればぶっ倒す!」

「……了解した」

崩れた岩の下から『あれ』が這い出てくる。

対してラニとオリセは怯むことなく戦闘態勢を取るのだった。




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