利害の一致というか
コルは目が夜に慣れたからか暗闇に倒れるそれが亜人であると気づくことができた。
「……生きてる……?」
返事がないが、気を失っているだけみたいだ。
(そういえば「痛っ」て……どこか怪我したのか……?ここじゃ見づらいな……)
そう考え先程までいた開けた場所に抱えて連れて行こうとしたがこの男、コルトリックはとても力持ちとは言えない、引きずっていこうかとも考えたがもし足を怪我していたら亜人とはいえ、見てて可哀想な事になるかもなと思い、少しづつ慎重に運んだ。
やっとの思いで目的地についたが相変わらず暗い、今にも寝てしまいそうだが、さすがに明かりが恋しくなり火をつけることにした。
「こんな時ばっかりは魔術の勉強すればよかったって思うよな……っと」
枝を集め鞄から油の実と残り少ないマッチを取り出し火をつけると女の赤く短いハネっ毛と真っ直ぐな二本の角がしっかりと見える。
(逃亡者の割に綺麗な色だ……しっかし明るい……いざという時って本当にあるんだな……備えといてよかったぁ……)
久しぶりに見た灯りに安堵し、この人が起きたらどうしようと考える。
(森を抜けるのに協力してもらえないかな……)
(……備え、か……)
コルは先人の言う準備の大切さを再確認し、応急の塗り薬と趣味で使っている小道具を取り出して、亜人の娘に近づいた。
木の燃える音がする。
目を覚ますと紫色の髪をした男が焚き火をしていた、純人の世間に疎い私でも知っている。
(短髪に見えて後ろで少し纏める髪型……一昔前に流行ったやつだな……見た感じ私と同い年くらいか……?)
頭がうまく回らない中、見えた物のことだけとりあえず考える。
「お、起きたか、足軽く手当しといたけど、あんまり動かない方がいいよ」
男の言うとおり枝の刺さっていた足には、本当に軽く、簡単な治療がされていた。
頭がまともに動き始め、疑問や不信感、何より人に対する敵対心が湧き上がってくる。
だがその前に、礼を言うにしろ何にしろ、聞いておかなければいけないことがある。
「お前、私をどうするつもりだ、亜人狩り共に付き出す気か?それとも直接奴隷にでもするか!?」
聞いてから動くつもりが、感情に流され男をにらみつけてしまった。
「私は縛られたくらいじゃ折れたりしねえ……お前がどうしようと抵抗してやるぞ……!」
男は頭を掻く。
「鎖なら外したよ」
「あ……?」
腕を見ると先程まで自分を縛り付けていた鎖が無くなっている、足ばかり気にしていて気づかなかった。
よく見ると焚き火の横に止めていた鍵と一緒に転がっているじゃないか。
ますますわからなくなる、亜人狩りに付き出すんじゃないのか……?
「なんで……?」という呟きに対して
「解錠とか細かい作業は得意なんだよ 趣味でな」
得意気だがそうじゃない、どうやったかは聞いてない、なんでやったかを聞きたいんだ。
男は続ける。
「さて、俺はあんたの足を治療したし鎖も解いた、俺の頼みも聞いてもらうよ」
「……頼みって?」
「俺は今遭難してんだ、見ての通りな、だからこの森を抜けるのを手伝ってもらう、あんたが捕まっても逃げても別にどうでもいいけど、ソレにしたってここは深すぎる……浅いとこまででいい、簡単だろ?」
正直理解できなかった。
まさか遭難してるだけの馬鹿とは思っていなかったし、二人になったからって脱出が確実に早くなるわけでもない。
でも馬鹿だとすればこいつは嘘をついてないのはわかる。
本当に浅いところまで行けば私を森へ逃がすだろう。
そこまで考えての簡潔な要望かと考えると腹立たしいし、
私が捕まって奴隷になってもどうでもいいというのも本当であろうことも腹立たしいけど。
「はぁ……わかった、手を組んでやる」
「よっし、じゃあよろしく」
強い風が吹く、揺れる焚き火の前で二人は握手をした。
「私はラニ、ひとまずよろしくなコルトリック」
「……なんで俺の名前知ってるんだ……?」
焚き火の灯りに青くなった顔が照らされる。
「なんでって私が気失う前に叫んでたろ、お前じゃないのか?」
青かった顔がじわじわと赤くなる所まで焚き火は照らす。
「……長いからみんなコルって呼ぶ……あんたは亜人だけど逃げ続けてるタイプだろ、さんづけとか様とか知らなそうだからそれでいいよ」
コルトリック……コルは早く寝よう!と言い捨て横になってしまった。
そんなに自分の名前叫んだのが恥ずかしかったんだろうか、などと考えてると虫達の騒音に静かな寝息が交じる。
ラニも少し離れた所で、座って顔を伏せると糸が切れたように眠ってしまった。