団長のセレクト
イーリスから例のパーティーの話を聞いたあと、バハメロはそのまま情報管理室にいるロナザメトを訪ねた。
「かくかくしかじか、ということでまず一人指名にきたのである」
「……なるほど、ですが団長。僕はマナーに詳しくない……というかその、ご存知の通り……根が『アレ』ですが……大丈夫でしょうか」
「何を今更!既に国とお偉いさんと何度も言葉を交わしてきたであろうに。それに、もう随分と昔のような言葉遣いは聞いてないし、ロナザメトは今やノヤリスを代表する紳士である」
「……近くで騒ぎ散らす男がどこかに行ったっきりなもので。……失礼。では、護衛の任、承りました」
「うむ、いざというときは頼りにしているのである!」
そう言ってバハメロは次の目的地へと向かった。
「……赤色の聖剣士で本体に攻撃、魔術で打点を追加するわ」
「うーん……土壁生成でガード」
「では伏せカード、伏兵部隊」
「読んでたよ、リサイクルゴーレムの効果を……」
「うむうむ!お前達は大体いつも一塊である故に都合がいい!」
「お、団長」
バハメロが訪れたのは、コル達の自室。
この日渡月は全員予定が空いていて、最近ノヤリスの中で流行の兆しを見せているカードを使ったゲームで遊んでいた。
トーナメント形式で、現在はエミイとコルの決勝戦が白熱しているところだった。
「乱入か!」
「どう見ても仕事でしょう。いいところだったけど片付けましょう」
「そんなぁ……オレの温めといた切り札が……」
コルが嘆くのを見たバハメロは、そのゲームに少し興味を示した。
「ふむ、流行っているとは思っていたが、そんなに面白いのであるか。ではその試合は続けて見せてほしい。何、それほど急ぎの話でもないのである」
「あらそう?ではお言葉に甘えるわ。……とはいえ、決着はそう遠くないけどね」
実はカードを片付けようとしたエミイこそ、
この場で最もゲームを楽しんでいた。
彼女の頭脳が導き出した完璧なブラフにまんまと引っかかったコルが、理想的なリアクションをしながら敗北した事により、この日、渡月の初代カードチャンピオンが誕生する。
余談だが、最下位は深読みのし過ぎで勝機を逃し続けたオリセであった。
「見事である!ルールも見てなんとなく理解したが、これ程の戦術を使いこなすのはエミイの才に他ならんのである!素晴らしい。……と、いうことでそんなチャンピオンと戦士達にパーティーの招待状である!」
バハメロはその場の雰囲気に合わせつつ、例の件について話した。
「うまい飯?」
一番最初に飛び出した言葉だった、もちろん声の主はラニである。
「うむ、うまい飯だ」
「行きてえ!」
「……団長、もっと礼儀正しい面子を集めた方がいいのではなくて?」
「まあ聞け、もちろん4人にはそれぞれ同行してほしい理由がある」
「というと?」
「まずエミイだが、こういった場ではなんだかんだ一番強い。観察眼と対応力という意味でな。次にオリセ、デカい男が一人いると舐められにくい」
「……」
オリセは物言いたげな目線をバハメロに向けた。
「冗談ではないぞ、うちに大男は数いるが、オリセなら余計な事を言ったりもせぬであろうという信頼からである……あえて上げるなら、チャシ等は絶対に連れていけんのである」
その瞬間全員がそれぞれ、廊下で酔いつぶれて寝ているチャシを思い出し、頷いた。
「……納得した」
「続いてコル、以前のミスタルの交渉での経験がある。それにコルにしかできん事も多そうであるからな」
「俺にしか……ああ、なるほど。『そういう』……」
「?」
「そして最後にラニだが。まあ正直、護衛戦力の面がほとんどであるな。あと、コルが行くとなればしがみついてでも同行するのであろう?」
ラニは『それはそうだ』と言わんばかりに胸を張っている。
そして困りつつも満更でもなさそうなコルを見ながら、ラニがため息を零した。
「……はあ、せめて大人しくするように私が見張ってるわ」
「うむ、では4人とも、頼むのである!」
「さて……ふむ」
ラニはバハメロの手元を覗き込む。
名簿にはパーティーに参加するメンバーの名前が記されていて、空欄が二つ残されている。
「ロナザメトも来るんだな。あと二人も決まってるのか?」
「否、決めていたのはここまでである。むむ、誰にしたものか」
そう悩んでいると、コルが妙案ありと言わんばかりの表情で手を上げた。
「団長、じゃあ二人組推薦してもいい?」




