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亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
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雑音

放たれた猿の異獣は全部で3匹。

その場にいる団員もまた3人。

それぞれ一匹ずつ相手をすれば、そう難しい戦闘でもないだろう。

しかしそれはあくまで、それなりの回数共に戦っていてこそ成し得ることでもあった。

彼らの共通点。

それは全員が同じ部隊、『酔鳥』であること。

そのくらいのものだった。

実績はあれど、作戦参加回数の少ないデールとヨンヨン。

そして内気なカロロ。

志を共にする組織に所属するとはいえ、突発的に発生した事態に対処するだけの協調性がこの3人には足りていなかった。


「待ちやがれってんだこの猿!」

デールは3匹全てを1人で相手取ろうと、猿達を追いかけ回す様に部屋中を暴れ回る。

「ちょっ……射線が……」

ただ素早いだけなら、ヨンヨンの投石技術の敵ではないのだが、そこにランダムで味方が割り込んでくるのであれば、彼も攻撃ができない。

そんな2人を見たカロロは、やや慌てつつも冷静に辺りを見回し、いつの間にか目の前から消えていた亜人狩りのボスを探した。

(そう遠くには……!)

カロロが視界を上に向けると、探していた人影がそこにあった。

何やら魔道具をかざし、こちらを覗いている。

(いた……!あれは……ボク達を見ている?攻撃手段には見えない……異獣のサポート?それとも何か……わからないけど、止めなきゃ!)

カロロは走り出した。

デールとヨンヨンが戦っている間、敵の意識もそちらに向いているだろうと踏み、彼女なりに戦況の改善を狙っての行為だった。


カロロの身長は平均的な16歳の少女より僅かに低い。

手足や尻尾を使い器用に跳ね回る猿達を相手にするデールの目線は、やや上向きにあった。

極端な夜行性でハイになりやすい彼の視野は狭く、勢い任せに地面を蹴る彼は急には止まれない。

「バ……ッ!」

「きゃっ……!」

大柄な青年と小柄な少女の衝突。

カロロは少し弾き飛ばされ、反対の柱に打ち付けられたが、ギリギリで減速が間に合ったのか、運良く『それだけ』で済んだ。

当然、デールには傷一つない。

「大丈夫!?リーダー!」

「……っ……!足元でチョロチョロするから……!蹴飛ばしたのは悪かったが、謝罪とかそういうのは全部後だ!もうそこでじっとしていろ!」

「なっ!そんな言い方ないだろう!リーダーだって……」

「だからそういうのは後だって言ってんだろ!……ほら、来やがった!」

一触即発の雰囲気を醸し出す敵を、猿の異獣は見逃さない。

好機と言わんばかりに、新しい動きでデールを攻め立てる。

「俺は師匠や団長みたいなタイプ以外とは共闘できねえ!」

「……っ……」

そう言って飛び出すデールに対し、ヨンヨンはカロロを守る様に立つ。

結果として、デールの言うことは間違ってはいなかった。

2人を気にせず気ままに戦うデールは、更に勢いを増しているようだった。

その証拠に、片腕を軽く負傷しながらも猿を高所から蹴り落とし、同時に飛び降りた勢いのまま拳を叩きつけ、1匹をダウンさせる。


衝突により痛む体を抑えながら立ち上がるカロロ。

ダメージとしてはそこまで大きなものではないのだが、今の彼女は酷く落ち込んでいた。

立ち上がってまでやることが、ただ思考を巡らせるだけで、何の行動にもつながらない程に。

(ボクが邪魔になったのは事実だ……)

目前ではヨンヨンがいつでも攻撃できるように構えている。

(ボクのせいで……足手まといになっちゃった……何か……何かしなきゃなのに……)

雑音をかいくぐるように頭の中を動かし続ける。

ようやくの思いでたどり着いた場所は、『走り出した理由』という記憶であった。

(そうだ……!あの人のところに行かないと……っ……行って……どうするの?)

カロロはその場に崩れ落ちる。

正面のヨンヨンが気づかないほど、静かに座り込む。

(ボクの音魔術じゃ2人を巻き込んじゃう……それに……仕組みはわからないけどあの柱が割れでもしたら……異獣が増えて2人がもっと危険な目に……)

そうカロロが考えたのを知ってか知らずか。

彼らを見下ろす男が青いボタンを押した。

2匹目の猿を打ち倒し、傷の増えたデールを更に追い込む様に、新たな異獣の影が彼を覗く。

「新手……っ!こっちにも来たぁ!?逃げて!」

「……っ……!」

迫り来る異獣を前に気を取り戻し、なんとか初撃を回避する。

カロロを見つめる巨大な蟹のような異獣はそのまま鋭利な爪を突き立てようとした。

「ふんっ!」

少し離れた場所から飛来した鉄の欠片が爪を凹ませ、それに怒った蟹はカロロを置いて攻撃の主へ横向きに突き進む。

(あぁ……またボクを守って……敵は次々に補充される……逃げ道もない……こんなとこまで誰かが来るまでには時間もかかる……)

カロロは無力感に苛まれ、力無く俯いた。

彼女の青い髪が垂れ、視界が暗くなり、冷たい床だけが目に映る。

(ボクだって創設メンバーなのに……リーダーなんて……無理だったんだ……チャシさん……こんなときチャシさんがいれば……っ……)

カロロが大変な事になってるこんなタイミングですが

来週は更新お休みします

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