表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
153/186

国内残党殲滅 開戦

亜人の保護が進んだ今、亜人狩りで今までと同様に利益を得ることは難しい。

それでも組織が三つ、国内に残ったのにはそれぞれの訳がある。

あるものは国境警備の隙を付くための潜伏のつもりで、あるものは正面から国家に反旗を翻す為、またあるものは将来的な利益を見据えた為。

そのうちの一つ、亜人狩り組織、ズィルド。

強力な力を持った長、その者が信頼を置く複数の幹部、そしてその下には大勢の部下達。

それらに加えて秘匿性と防衛力を持った拠点、裏社会から仕入れた多様な武装を持つ。

そんな彼等は、己の持つその力がどれほどのものかを理解していた。

故に国の法を無視し、亜人狩りを続けようとしていた。

彼らこそが、国家に反旗を翻し、奴隷商から革命軍へと変貌しようとしている大組織である。


「では、予定通りに初めてください」

ズィルド拠点を前方に、軽く武装したイーリスが杖を振り下ろす。

魔術に用いるでは無く、ただ後ろに控える軍への合図として。

イーリスの引き連れた騎士団の兵士達、凡そ100人に対し、ズィルドの亜人狩りはその数約400。

亜人を保護という名目で国に差し出してなお、亜人狩りをやめることができず流れ着いたものが集まると予想はされていたが、その数はイーリスの予想を遥かに上回っていた。

倍以上の兵力差で、中には魔術を収める者も多くいる。

この状況を見て、騎士団に勝ち目があると思う者はいなかっただろう。

しかし、王に反逆せんとする賊を前に屈しては、騎士団がある意味がない。

王を、国を、あまねく民を守るべく日頃から鍛錬を続け、騎士の象徴である鎧を身にまとう彼等は、勇ましい雄叫びと共に突き進む。



それからわずか十数分後、兵のうちの一人がボロボロの男を掲げ、瓦礫の上で高らかに叫んだ。

「敵将の確保を確認!」

騎士団によるズィルド拠点制圧が完了。

アドバイザーとして同行したロナザメトが目を丸くするのも無理はない。

よく訓練された陣形で正面から真っ向勝負を挑むその制圧方法は、少数精鋭のノヤリスでは成し得なかった方法だったからだ。

(兵士達は特化した技こそ持ちませんが、それぞれの平均は我々の戦闘員に勝るとも劣らない……団長とかはともかく、僕レベルだと普通に勝てるか怪しいな)

「ロナザメトさん、いかがしましたか?」

「……いいえ、女王陛下。あなた方が味方で良かったと思ったまでです」

「こちらも同じ考えです。ロナザメトさんに話を聞いていなければ、陣形が崩れ、ここまで数で押されていたでしょうから」

「お褒めに預かり光栄です……さて、では次に移りましょう。亜人は恐らく地下に――」


今作戦において、巨大かつ最も反抗的態度を見せているズィルドが最も危険視されていた。

しかしそれでも、残り二つの攻略が容易という訳では無い。


ミスタル領土西方、エヌエー砦。

それは遥か昔、異獣被害によって廃棄された小さな砦。

今でも野生の異獣が我が物顔で闊歩するその地域は、国が進入禁止領域として厳重に管理している。

そんな場所にいつ、どうやって潜り込んだのか。

二つ目の組織、『ライフラ』は砦を占領し、亜人狩りを行っていた。

彼等がどうやって商売を成立させているのかすら不明だが、いくつかある確かな事の一つとして、『今作戦では亜人狩りより異獣に気をつけろ』というのが、ライフラ襲撃を担当するノヤリスの方針だ。


異獣が魔物と呼ばれなくなってはや数年。

領域の入り口を警備する兵士達は口にしたという。

『異獣、もはや恐るるに足らず』という者のは、この魔境を見ても同じで居られるのだろうか、と。

だがそれでも進むものを、兵士は見た。

長である龍を戦闘に個性豊かな者たちが、奇妙な咆哮轟く魔境の中に、臆する事無く向かっていく姿を見た。


「では皆のもの、目標地点まで逸れぬように気をつけるのである!」

「了解!」

「その後は作戦通りである!」

「は、はい!了解、です……その、もし本当に異獣が出たら……?」

「ぶっ倒す!そして腹ごしらえとして食ってやろう!ふはは!」

そんなバハメロを言葉を受けてか、茂みから三つ目の大が姿を現し、瞬く間に飛びかかる。

「ほっ」

鋭いの牙がバハメロの肌に食い込むより早く、バハメロは蛇の頭を掴んで勢いよく地面に叩きつけた。

「ううむカロロ、やはりこいつらは揃いも揃ってデカすぎると思わんか?」

「えっと……異獣の強さは大きさに比例するとかなんとか……小さい異獣は基本的に大きい異獣に従うそうです。ですがこの環境では小さい生き物は異獣かどうかに関わらずそうそう――あの」

「む?」

「もしかして本当に食べる気ですか?」

「駄目であるか?」

「……せめて毒があるか調べてからにしてくださいね……」


結局、蛇には毒があった。

ある程度の毒なら食べられるとバハメロは言ったが、その場にいる団員達が全員でなんとか止めることができた。

何匹かの異獣を目にした頃、団員達の目には古く所々崩れかけた砦が目に入った。

そばに眠る巨大な異獣と共に。


「では改めて行くぞ皆のもの!作戦開始!である!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ