同盟
「つまりアレだ。もうじきコイツら……亜人狩り共は国の決めた法に逆らう罪人になる。だから国の兵で堂々と『成敗』できるってワケだ」
コルはバハメロの言葉を噛み砕いてそう言ったパッケンも一応海賊という罪人にあたるのでは無いか、と考えた。
それが表情に出ていたのか、パッケンは慌てて弁解を始める。
「おっと、先に言っとくが、俺は今例外だぜ?女王様と『個人的に』約束があってな」
「約束?」
「ああ、それがこれからの話に繋がるって訳だ。騎士の嬢ちゃん、説明頼んだぜ」
「チィッ!」
約束についてはコルには知り得ない事だったが、リラーテが敵意を隠そうとしない辺り『個人的』な話であることは真実なのだろう。
不愉快そうにパッケンを睨みつけながらも、リラーテは職務を全うする。
「この三つの亜人狩りはほぼ間違いなく抵抗を続けるでしょう。このうちの一つを、ノヤリスの皆さんに攻撃していただきます」
「残り2つはミスタルの兵士がやる……ってことっすか?」
「『亜人狩りは正式に罪である』という意を示すため、必ず一つは我々騎士団が対処せねばなりません。しかし、保護区の警備等で人員がやや心許ないのも事実……」
「そこで、俺達の出番。ってわけだぜ」
「まさか、海賊団が強力してくれるのか?」
「おうとも!……とはいえお前さんも知っての通り、船員は最近ごっそり新しい海へ旅立っちまったからな。一番弱いところで頼むぜ」
「ふむ……コルから聞いた話によるなら、戦力としては申し分ないであろうな」
「だがな、団長さんよ。ここで相談があるんだ」
パッケンは椅子から立ち上がり、バハメロを見つめ向き直る。
座ったままどっしりと構えるバハメロに対し、上から圧をかける様な形になったパッケンの視線は、どこか先を見据えるような深みがあった。
「俺は女王様からちょっとした『お小遣い』を貰う代わりにこの戦いに協力する。報酬はそれだけじゃねえぜ?あんたとの紹介も報酬に含まれてるんだ」
「……うむ、賢いイーリスが通したのであるからには、その理由を話した上で正当性があったのであろう。それで、吾輩に何か用が?」
「二つだ。一つは今回の作戦、見張りも兼ねて騎士の嬢ちゃんが付く事になってるが、俺達には亜人狩り組織襲撃のノウハウって奴が足りねえ。だからお前さんとこの団員を……見知った奴がいいな。コルとあと数人をこっちに貸してくれ」
「ふむ……」
視界の端でコルが頷くのを見たバハメロは、パッケンに返事を返そうとする。
しかしパッケンはそれを遮り、話を続けた。
「おっと、返事は二つ目も聞いてからだ。二つ目は……まあコルから聞いてるんじゃねえか?」
「なるほど、『魔人会の討伐』か」
「ああ、俺はお前さん達の敵を討つ手伝いをする。だったらお前さん達も俺の敵を討つ手伝いをしてくれたっていいだろう?」
「……おい海賊。貴様、それは女王様に要求をしているのか?」
リラーテは今にも斬りかかりそうな形相で剣に手をかける。
「私は構いません」
「っ!女王様……」
「これからも魔人会は看過できない組織として活動を続けるでしょう。此度の件で暫くはあまり公に動くことは難しいでしょうけれど……バハメロさん。あなたの意見も聞かせてくださいますか?」
「悩むことなど無い。魔人会は我々の敵でもある。無論、協力しよう」
「よし来た、これで俺達は暫く同盟関係ってわけだ。よろしく頼むぜ」
「ではそうであるな……コル、渡月は次の戦いでパッケンについてやってくれ。それとちょうどいいからナノンもついていくのである。鋼華であればベーズとアリッサが共闘経験があったか?その二人も配備せよ」
「了解っす!……そういえば、私はなんで呼ばれたんすか?」
「この国の亜人狩りとの戦いが終わった、『その次』のお話があるのです。コルさん、ナノンさん。あなた方お二人の力が必要です――」




