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亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
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異獣と砲と銃

この世には異獣と呼ばれた生き物がいる。

文字通り、異質な獣。

魔物や魔獣などとも呼ばれるが、共通して明らかにただの野生動物とは違う何かがある。

無から生まれ、その時すでに完成した姿で、成長しない。

飛ぶもの、地を這うもの、人を襲うもの、動かずただそこにいるもの。

それらすべてがどこか異質でありながら、「我々は自然な生き物だ」と言わんばかりに巣をはり、食べ物を探す。

その不気味さを人々は恐れた。

討伐隊を組んで駆除したり、剥ぎ取った革や骨を魔術の道具として使うこともあった。

しかしそれも昔の話、警備や武器の技術が発展した今、人々にとっては異獣も野生動物も等しく獣。

『敵ではなくなった』のだ。

科学の時代が少しづつ始まり、魔術が廃れ始めた現代に置いて骨や革の価値も下がり。

異獣はただのおかしな見た目をした獣。

という認識がこの数十年で世界に広まっていた。


「――っていうのが俺の知ってる異獣の知識だったんだけどなあ!!」

砂埃の舞う荒野をコルとナノンが走る。

目的の荒野に到着し酔いを覚ました後、いざ捜索と意気込んだ途端に、岩の陰からコルの背丈の3倍はあろう猪が飛び出してきたのだ。

「ひぃ……ひぃ……研究者の驕りっす、勝てるって言っても弱い種類の話っすねそれ!この猪くらいだと武装した兵士数人掛かりってところじゃないすかね!」

「じゃあ逃げて正解だった!……なあところで異獣ってビーム吐くと思う?」

コルが後ろを指差す。

二人を一心不乱に追いかける猪の大きく開いた口が光り輝いていた。

「……まっさかあ!いくらなんでもビームは出ないっすよ流石に!」

「だよな!俺もまだビーム出せる物作れてないんだから異獣に出せる訳が――」

結論から言って、出た。

光線が一直線に伸びる、ビームを吐く猪を初めて見た二人でも、当たれば命はないと察するには充分の力だった。

「まずいっす……!2号展開!」

掛け声に応じる様に、ナノンが背負っていた鞄から機械じかけの盾が飛び出した。

盾が空中で展開し地面に突き刺さる。

開ききったそれはもはや盾ではなく壁というべき大きさだった。

怪物の顔の様なペイントが異彩を放つ。

壁は猪の様な異獣の放つ光線を受けてもびくともしない。

「これがナノンロイド……聞いてたより派手だ……」

「大丈夫っすか?コル君……あれは逃げただけ追いかけてくるみたいっす、倒しましょう!そして口の中調べましょう!ビーム吐ける構造を調べて参考にしたいっす!」

「賛成!それと後で他のナノンロイドも実物全部見させてほしい!」

「駄目っす、出してからのお楽しみっす!でもこれはおまけっすよ、4号、展開!」

次に飛び出したのは銃、コルの作った片手銃とは違う、両手で使う本来の銃。

――だった物の歯車が回り変形し、瞬く間に大砲になる、当然のように鋭い目のペイントも施されていた。

「うわ、何だそれ」

「こうでもしないと収納できないんすよ……っと!さあコル君もあの銃を出してください、異獣が怯んでるうちにここからボコボコにしてやるっすよ!」

言われた通りに銃を懐から取り出す。

「俺もそういう展開!みたいなの欲しいなぁ……考えとこ」

アロルの小銃に針を装填し構える。

「ミクノ、俺が先に撃つよ、こので撃ち出した針は当たればどんな生き物でも一瞬痺れさせる、命中精度は微妙だけど、あんだけ大きければここからでも当たるから、動きが止まったところを確実に仕留めて」

「了解っす、急に真面目になられるとびっくりするっす」

「まあ危ない物を構えてるから多少は……よし、行くぞ!」

異獣は本能敵対心を察知したのか、先程よりも殺気を込めて突撃してきた。

狩りの対象から命のやり取りをする相手へと認識を変えたのだ。

「当たれっ……!」

引き金を引く、パチッと音を立てて針が銃口を向けた先に飛んでゆく。

しかし針は異獣の横の岩に刺さった。

外れたのだ、次弾装填が間に合わずに計画が狂う。

普通の銃であればそうなっただろう。

だがアロルの小銃はそんな常識を壊す、シタ神話に置いて悪魔の群れを退けた小さな銃、その再現。

銃使いアロルが連続で六匹の悪魔を撃ち抜いた伝説をコルは長い月日をかけて擬似的に再現した。

6連射、それがこの銃の真の強みである。

3本の針が猪に突き刺さる。

ほんの一瞬の痺れとはいえ勢いの乗った猪は足が動かなくなっただけで盛大に転倒した。

「今だ!」

「っす!ナノンロイド4号の火力を見るっすよーッ!ってーーーーッッ!!」

ナノンの掛け声を轟音がかき消され砲弾が発射される、そしてすぐに隙だらけの巨大が爆炎に包まれた。

煙が晴れるとそこには燃えた猪が横たわっていた。

「倒した……のか?」

「みたいっすね、でもこれじゃあビームの謎は解けそうにないっす……」

ナノンは心の底から残念そうにしている。

「そりゃあんな大爆発させたらこうなるだろ、というかあの威力、壁が無かったら俺達も吹っ飛ばす勢いだったな、やっぱり大きいとその分火力も出せるのか……」

「呼んだら飛び出すってギミックにリソースを割いてますからね、色々調整できない分安定して高出力な物が私の十八番っす!……結果としてどんどん荷物が重くなるんすけど、ほら2号と4号しまうから離れてほしいっす」

「もうちょっと、もうちょっとだけ……」

ナノンは大砲の外側の構造を舐め回す様に見るコルを剥がしてナノンロイドを鞄に収納する。

「ああっ……」

「私だってコル君の銃をじっくり見るの我慢してるんすからね、さっさと目的のブツを回収しに行くっすよ」

「ああそうか、異獣退治に来たわけじゃないからな」

「そうっす、我々の目的地はこの荒野を進んだ先、『ナドスト村跡地』っす!」

「邪魔な異獣もいなくなった事だし、いざ再び、出発!」

今回の任務である『部品』の回収に向けて二人は西へ進もうとした、するとあたりに香ばしい香りが広がる。

先程燃やした猪からだ。

どこからともなくぐぅと音が鳴る。

「……異獣って食べてもいいらしいっすよ」

「……昔は魔術の触媒に使われてたって話だし、やめたほうがいい気がする」

ナノンは鞄から小瓶を2つ取り出した。

「塩と胡椒……どっちもあるっすよ?」

「いやそういう問題ではない、やめときなって、ナノンさんや、目が怖いよ」


異獣猪肉は不味くはないけど明日の夜まで口の中に味と匂いが残るのが結構辛い。

コルは後にそう語った。




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