だーーーーーーー!
あちこちから、煙が立ち上る。
木々が燃えた事による煙だけではない。
拠点周り数カ所から上る、応戦の印。
ラニはその中の一つ、最も拠点から遠い位置にあるその方角へと走った。
というのも少し前、バハメロと共に押し寄せる雑兵をなぎ倒していたはいいものの、どうにもきりが無く、その場をバハメロに任せて他の援護に向かうべきだと指示を受けた。
ラニはバハメロと、生き物かも怪しい雑兵数十体の力量を比べ、それで問題ないと思った為、こうして走っている。
(とりあえず、爆発音が聞こえた方に向かってるが……あれから交戦の音がしない。罠の可能性もあるのか?……考えたくは無いが既に……)
ラニは足を止める。
脳裏に過ぎったネガティブな考えのせいではない。
仮に手遅れだったとしてもその目で見るまでは止まらないのがラニだ。
そんな彼女が足を止めた理由はただ一つ、会敵した時だ。
「よーーーーやく!よーーーーやく見つけた!」
先程まで相手にしていた雑兵と同じ黒いフード。
それと違うのは蛇の様な画面に大きな体格、そして何より大声で喋る所だろう。
「ブーーーーーネビムの言ったとおりだ!仲間を助けに来る奴がいるーーーーと!だーーーから俺は探してたのさ!」
「変な喋り方だなあお前……待て、ということはやっぱこの先には誰かいるんだな?」
魔人会の男はにやりと笑って、特徴的な話し方のまま話し続ける。
「そーーーうなんだよね。男が一人、女が一人。そろそろブネビムがしーーーーまつしてる頃だろうね」
(っ……誰だ?戦闘員ならそう簡単にやられてはないだろうけど……関係ない!とにかくこいつは邪魔だ!)
なにはともあれ、目前にいるのは敵だ。
ラニは隙を見て拳を腹の中心に叩き込む。
一瞬、一撃で鎮める為に放たれた全力の拳は速度、威力、精度共に完璧であった。
だが手応えが無い。
「いいい、いいーーーーーたくない!」
魔人会の男は少し怯んで見えたが、無傷のままラニの腕を掴む。
「っ!?このっ!」
以上に硬い相手。
ラニはこういった場合の対処法も、既にバハメロから習っている。
腕は掴ませたまま、相手の腕に飛び乗るように纏わりつく。
「うーーーおおお!?」
(このまま重心を倒して……!)
こうすることにより、相手はバランスを崩し、大きな音を立てて勢いよく後ろに倒れ込む。
ラニが邪魔で受け身は取れず、後頭部を強打し、その衝撃で掴んだ手も離してしまう、まさに最善のカウンター技だ。
「……敵は魔術が大好きな連中って聞いたぞ?それもそういう魔術か?」
男は後頭部を気にする様子もなく立ち上がる。
先程の柔術は腕にもかなりの負担をかけるはずだったが、それも全く気に留めていない。
「そうだ!魔術とはすーーーーーーーーーーーばらしいだろーーーーー!古式魔術、『暴堂』!」
その瞬間、男の姿が見えなくなる。
消えた訳では無い、その巨体が視界から外れる程の超低姿勢での高速突撃。
その不意打ち気味の意外性も含め、ラニですら、『護鉄塊』を用いない素のガードがギリギリだった。
「ぐっ……!?」
「その素晴らしい効果は!身体能力超強化!」
守りを無視して押し飛ばされる程の強烈な拳。
それは武術の類ではなく、ただ溢れる力を奮っただけの単純な『暴力』の様な攻撃。
自身の頬を叩いて意識を気付けなおす。
(意味わかんねえ……!ガードしてこの威力?それでもって固くて早い。まるで団長だ)
「俺はあーーーんまり女を殴るのは好きじゃないんだけどなーーー……あれ?女だよね?そういえばなんで男物の服を着てーーーーる?男装にしては装えてないけど」
「余裕フカシやがってよお……」
苛立つ気持ちはあるが、現状、文字通り有効打が見つからない状況で、攻めるに攻めれないのも確かだ。
(関節技……?いや、あんだけ早いともう捕まえるのも難しそうだ……なんか弱点があるはずだ。例えば時間制限があるとか?)
「うーーーーん?赤髪、額から二本の角、身長は高めで男物の服の女?」
敵の攻略法を考えるラニとは真逆に、無警戒にも男は懐から取り出した手帳を取り出す。
そしてペラペラと捲ったかと思うと、手帳とラニを交互に見始め、そして大声を上げた。
「あーーーーーーーーー!お前!お前お前!『ラーニンダム・ラックラー』だなーー!?」
「ああ!?なんで知ってんだお前!」
ラニは男を纏っていたオーラが変わるのを感じた。
一見様子は変わらないが、先程までよりも『真剣』に、何かをしようとしている。
「ふびょうどーーーーーーだから名乗ろう!俺はバーディー・ンー!ラーニンダム・ナックラー!お前は殺さず連れて来いと言われているから、そうする事にしたーーー!」
「なんか知らねーけど、いっぺんシメて吐かせなきゃな事があるみてーだなぁ!」
なろうのサイトがリニューアルされて初の予約投稿です。
投稿の仕方がわかんなくてだいぶ困りました。
できているはずです できてなかったらこまります
できてますように




