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亜人解放団ノヤリス  作者: 荒神哀鬼
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プロローグというのか

プロローグとでも言うのか


綺麗な月の夜でもない 星1つ見えない大自然の下

綺麗な音とは言えない 野生的な虫の鳴き声

そんな特別でもロマンチックでもなんでもない森の中から 世界はほんの少しだけ変わり始めるのだった。


暗い森の中、魔術灯のぼんやりとした灯りが草木をかき分けゆらゆらと進んでいく。

「こんな明るさじゃ何も見えないな…帰ったら新品を買う予定だったんだけど、もってくれなさそうだな…」

時刻は夜、太陽はすでに沈んだために木漏れ日すらもない。

使い古された魔術灯を持った青年は深い暗闇の中、遭難していた。

「周り道なんてしようとするんじゃなかった…」

そう呟いた青年はとても後悔していた。

数刻前、帰り道に亜人の奴隷を載せた馬車が止まってるのを見た青年は面倒事を避けたいためだけに森を抜けて行こうとした、だが道中足を踏み外したり野生動物に追いかけられたりしている内に深いところまで迷い込んでしまったのだ。

(大体あんなに堂々と奴隷商人が止まっているのが悪いんだ、馬がついてなかったし見張りの商人が1人だったし、恐らく逃げた馬を追いかけ回してるんだろ――)

灯りが消える、魔術灯の寿命が完全に尽き、辺りが薄暗くなる、だが先程までよりは暗くない、不幸中の幸いか青年は少し開けた場所に辿り着いていた。

(……まあ亜人の奴隷なんて誰に咎められる訳でもないし今時そんなにコソコソしてないのかもな……)

青年は鞄から取り出した水を一口飲み、一番大きな木にもたれかかって座る。

(でもあの奴隷達、傷だらけだったな……亜人だったとしても……そこまでやんなくても……)

疲れ切った体が自動的に眠ろうとする、青年が意識を手放し、目を閉じようとした時。

「痛っ……」

森の奥から誰かの声と転ぶような音が聞こえた。

「今の……おーい!誰かいるのか!俺だよコル!コルトリックだ!」

眠気が一瞬で無くなり、助けを求め声のする方へ歩く。

冷静ではなかった、一瞬帰りが遅いのを心配して知り合いが探しに来てくれたと勘違いし、自分の名前を叫んでしまった、そんなはずがないのに。

少し顔を赤らめながら咳払いをし、声の聞こえた方へ進む、思っていたよりも近かった。

そこにいたのはもちろん友人でも家族でも無く、森に住む人ですら無かった。

「女の人……?」

大きな鎖で手を縛られた紅い二本角の亜人。

青年は直感で理解する。

(さっきの奴隷商止まってた理由……この人か……結局俺は巻き込まれたんだな……)




少し時は遡る、コルが山道にそれるより少し前。


「おい!馬が外れたぞ!留め具点検しろって……ああ待てクソッ!お前らそれ見張ってろ!!」

馬が2頭、奴隷8人と男3人の馬車から馬と男が一つづ放たれる。

男達は亜人を捕まえ奴隷として売る売人、この辺りでは亜人狩りや奴隷商などと言われている

荷台に載せられている8人は全て亜人と呼ばれる者、人のようでありながら角や羽、尻尾などを持つ、この世界に置いて最も虐げられている存在。

物語や信仰、地域よって差異はあっても、亜人と呼ばれる存在は『人にも自然にもなれなかった者』や『前世で犯した罪への罰として異形となった者』と呼ばれ、人から隠れ住むか奴隷として買い手がつくのを地下牢で待つかの生活を強いられている。

荷台の亜人達も最初は抗ったが皆逃げ続ける生活で疲弊し、鎖で縛られ荷台に積まれてからは抵抗しなくなった、できなくなった、心が折れ、諦めたのだ。

1人を除いて。

その紅い目は死んでいなかった、1人機会があればすぐに逃げ出してやろうという気のある娘がいた。

彼女の名はラニ、角の亜人であるラニはおでこから二本の赤い角を生やした170以上はあろうという背の高い女だった。

そこらの男より腕っぷしのいい彼女でも疲弊には勝てず亜人狩りに捕まってしまったのだ。

だが馬車に揺られて数時間、その間で休ませた体は、馬車が止まり商人が減った瞬間を逃さない。

「ッ!」

ラニは見張りの筋肉質な男を体当たりでふっ飛ばし森の中へ逃げていった。

「この野郎……!」

筋肉質な男が追いかけて森に入る。

「みんな何か追いかけてっちゃったなぁ……」

と取り残された男が呑気にぼやいている時、道の向こうからも森に人影が入って行くのだった。



ラニは森の中を走った、筋肉質な男をまいた後も、宛もなく走った、途中足を踏み外したり魔物に襲われたりしながらもひたすらに逃げた。

足が止まる頃にはすっかり日も落ち夜の虫の大合唱がギギギギと鳴り響いていた。


それでもラニはふらふらと歩く、止まると何かに捕まる気がするのだ。

「痛っ……」

通常の亜人は人より丈夫な体を持つ、だがろくな生活ができない体は通常の人間と同じかそれ以下、尖った枝を踏むだけでも血が流れ転んでしまうのだ。

地面に顔をつけこのまま眠ってしまおうと考えた、その時。

「おーい!誰かいるのか!俺だよコル!コルトリックだ!」

男の声がした。

(コルト……?さっきの亜人狩り達ではないな…どちらにせよ純人だろうな……結果同じ……か……)

ラニは目を閉じ、意識を手放した。

「女の人…?」

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