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いつメン4人、この世界がギャルゲーの舞台だと気付いた時にはもう遅かった

作者: 亜麻色葉



 ――私立ガーデン学園。

 生徒達の表現力を高めるために自由と権利を尊重したその学園は、学力だけではなく礼儀作法を含めたありとあらゆる面で優秀な生徒のみが入れるという、一度通えば孫の代まで自慢話として花を咲かせることが出来る超名門学園である。そしてそのガーデン学園には学園の最高権力でありトップに君臨する、通称"花の冠(フラワークラウン)"と呼ばれる生徒会執行部のメンバーがいた。



「では、これより生徒会執行部会長"風雲(かざぐも)"の名のもとに、来月度に行われる文化祭の最終チェック及び活動報告会を始めます。気をつけ、礼」



 4人だけしかいない静まりきった生徒会室に、少女の透き通った声が響く。

 

 彼女の名は生徒会執行部会長、風雲 藍(かざぐも  あい)。3年生。

 海のように深く綺麗な青色のロングヘアに、水色の凛とした瞳を持った彼女は"花の冠(フラワークラウン)"の証である青色の薔薇のピンバッジを付けており、真面目で優秀で人望も厚く父母共に政治家なこともあってまさにこの学園の頂点へ立つに相応しい人物であった。



「では、まず始めに文化祭の――」


「あ、あのね、藍ちゃん。……"お兄ちゃん"が、まだ来てないの……」


「お兄ちゃん?……あぁ、"彼"のことですね。そういえばまだ来ていないようですが……」



 会議の本題について話を始めた葵の声に被せるようにして聞こえたのは、甘く天使のように可愛らしいソプラノボイス。


 彼女の名は生徒会執行部書記、舞園 桃子(まいぞの  ももこ )。1年生。

 愛らしい桃色のツインテールヘアに、零れ落ちてしまいそうなほど大きく綺麗な赤色の瞳を持った彼女は"花の冠(フラワークラウン)"の証である桃色の薔薇のピンバッジを付けており、大好きな"お兄ちゃん"から貰ったのだという猫のぬいぐるみを大切そうにぎゅっと抱きかかえている。



「"アイツ"のことだから、どーせ遅刻でしょ?気にする必要無くなーい?それよりさっさと終わらせて、皆で遊びに行こ?」



 "お兄ちゃん"が来ないせいか不安そうな表情になっている桃子に声を掛けたのは、どこか気怠げな表情の少女である。


 彼女の名は生徒会執行部副会長、椎名崎 黒美(しいなざき  くろみ)。3年生。

 宵闇のような黒髪ショートヘアに鋭い金の瞳を持ったまるで猫のような彼女は"花の冠(フラワークラウン)"の証である金色の薔薇のピンバッジを付けており一見やる気がなさそうな素振りをするも、実は藍に匹敵するほどの実力と才能を兼ね備えた上で今もなお高みを目指して奮闘する影の努力家だった。



「ふみゅぅ……で、でも、黒美ちゃ……っ……あう……」


「皆、ごめんね?私の"幼馴染"が迷惑掛けちゃって……後で私からガツン!と言っておくからねっ」



 一向に会議が始まらない原因である"幼馴染"を思い浮かべ、口を開いた4人目の少女は拳をぐっと固めた。


 彼女の名は生徒会執行部会計、藤井 翠(ふじい  みどり)。2年生。

 明るい茶色のポニーテールをシュシュで飾り、パッチリとした緑色の瞳を持った彼女は"花の冠(フラワークラウン)"の証である翡翠色の薔薇のピンバッジを付けており、生徒会執行部メンバーのムードメーカー的存在だ。また、ハキハキとしていて活発的なその姿は先生や生徒達からも非常に良く評価され、今では次期生徒会執行部の会長候補とまで言われているらしい。



「うんうん、翠の鉄拳でガツンとシクヨロ〜」


「っみ、翠ちゃんまで?……うぅ……どうしよ、お兄ちゃんが……」



「――そこまで。今、私の元に"彼"からメールが届きました」


「……メール?お兄ちゃんから……?」


「はい。……どうやら化学実験の神咲先生のところで資料のお手伝いをしているようですね。今日は来れるか分からないから自分抜きで会議を始めてほしいそうです」



 藍がそう言うと桃子をはじめとした他のメンバーは心当たりがあったのか、何かを思い出すような表情を浮かべる。



「そういえば神咲先生、次の発表会で凄いのを作るって言ってたよね?それのことかも!」


「……はぅ、良かったぁ……お兄ちゃん、遅刻したわけじゃないって……安心したの……」



「じゃあ、アイツも居ないことだし?そろそろ本題に入ろー?」


「それでは改めまして、文化祭の――」


「そうじゃなくって、さ。もっと大事な方の話しなーい?」



 ようやく本題に入ろうとした藍の発言を、黒美がわざとらしく肩を竦めながら遮った。

 一度ならず二度までも話を遮られた藍は黒美のその様子に対し、少し困ったように首を傾げる。



「……黒美?大事な話とはどのような内容でしょうか?」




「そりゃあ、当然アレのことだよ?







 この世界がギャルゲーの舞台で、




 あたし達がヒロインであり、攻略対象だーって話」






「「「……………………え?」」」






* * * * * * * 





「ち、ちょっと待って!理解が追いつかないよ……!?」



 黒美先輩から聞いた、衝撃的な話。

 私達4人はとある男性向け恋愛ゲームに出てくるヒロインで、しかもそのゲームの主人公は私の"幼馴染"で……!?

 そんなことあるわけない!って思う反面、もしかしたら最近見えるようになった()()のことかも……なんて思う私もいて……!!!!

 ああもう、どうしようっ!?



「黒美、その話が本当だという証拠は?」


「藍には見えないの?頭上に浮かぶ、コ・レ・が?」


「「!!」」



 つんつんと黒美先輩が風雲先輩の頭上に浮かぶ"アレ"を指でつついたことで、私と桃子ちゃんはハッと驚いて声を失ってしまう。

 し……信じたくなかったけど、やっぱり、黒美先輩の話は本当だったんだ……。



「…………これ?いえ、私には何も見えませんが……?」


「ふみゅ?……藍ちゃんには、見えないの……?」



 どうやら風雲先輩には、自分の……ううん、私達全員の頭上に浮かぶ()()()()()()()()()()()()()が見えていないらしい。

 黒美先輩が何を指したのか分からず、天井を見ながら考えこんでしまった。


 ――そう、私達の頭上には、数字の書かれた不思議なハートマークがぼんやりと浮かんでる。

 つい最近見えるようになったこのハートマークは謎だらけだったけれど、日に日に中の数字は少しずつ増えていくことだけは理解出来た。

 これは何の数字?そもそも何をすれば数字が増えるの?なんてことを考えたりもしたけど他の子には見えていないみたいだしって思ってたら、まさかこれが……



「……これが、"好感度ゲージ"……?」


「そーゆーこと」



 「翠あったりー」と、どこか愉快そうに黒美先輩が頷いた。

 正直、当たって欲しくなかったよ……!!



「好感度ゲージ?それは一体……?」


「あー、藍はゲームやらないもんねー。分かりやすく言うと、あたし達が"アイツ"をどれくらい好きかってのが数値化されててー、その数値が高ければ高いほど"アイツ"のことが好きで好きでたまんなーい状態ってわけ」


「そ、そうですか……ということは黒美の話の通りであれば、この中の誰かは数値が非常に高く、いずれ"彼"と……そ、その……お付き合いをする、と……?」



「いやー、ところがどっこい現実は甘くなかった感じ?全員好感度激高だしねー」



「…………全、員……!!?」



 信じられないと言った表情で藍先輩はわなわなと震える。

 そう、藍先輩には見えてないみたいだけど……私達の好感度はかなり高い数値を叩き出している。

 私が85、黒美先輩が82、桃子ちゃんが90で、藍先輩は――



「ちなみに藍はー、ぶっちぎりの98。多分100までいったら攻略完了だろうし、もう目前ってことだねー」


「100になったらどうなるのかな?」


「そりゃあーもう、メロメロのデレデレ?」


「わっ、私が!?そ、そんなっ……そんなことに……!?///」


「ふぇえっ!?藍ちゃんとお兄ちゃんは付き合っちゃうの……!?桃も、お兄ちゃんとずっと一緒にいたいのに……うっ……うう……」


「……桃子ちゃん……」



 顔から火が出そうなほど真っ赤になった藍先輩は恥ずかしそうに顔を両手で覆い隠し、桃子ちゃんはショックのあまり泣き出してしまった。

 どうしよう、もう場が滅茶苦茶だよ……!!



「まあ、その辺は大丈夫じゃーん?ハーレムエンドって感じになりそうだし、皆仲良しこよしではい終了ーってね」


「ぐすっ……ほんとに……?桃も、お兄ちゃんと一緒……?」


「うんうん、一緒一緒」


「……あうぅ……良かっ、たぁ……!」



「いいえ!!ちっとも、良くはありません!!」



「ひゃうっ!?」


「藍先輩!?」



 声を張り上げて勢い良く立ち上がった藍先輩!!その背後には今までに無いほど怒りの炎をメラメラと燃え……えっ、藍先輩凄く怒ってる……!?



「おっ……お、お付き合いとはですね!!?もっと清きものであり、いくら"彼"が望んでいたとしても認められるものではありません!!ですので私が"彼"にハッキリと……――きゃっ!?」


「藍ちゃん!!」


「藍先輩!!?」


「っ、藍!!」



 早足でドア開けた藍先輩が生徒会室から出ようとするや否や突然ドンッと何かにぶつかり、よろけてしまった!!

 このままじゃ藍先輩が危ない!!

 咄嗟に駆け寄ろうと身体を動かす私達だけれど、この距離じゃ間に合わな………………



 その時だった。


 倒れる寸前の藍先輩の身体を守るように、とある人物が藍先輩を庇うようにぎゅっと抱きとめたのだ。


 藍先輩を助けた、その人物の正体は…………



「……あっ、お兄ちゃん……!」



 そう、噂をすれば何とやら。

 私の"幼馴染"だった。


 恐らく生徒会室を出た藍先輩と部屋に入ろうとしていた"幼馴染"がぶつかったせいで転びそうになったんだろうけど、ちょっと登場するタイミングが良すぎない?そう思いながら私はじっと"幼馴染"を見つめる。

 すると、"幼馴染"の前にいつの間にか【心配する】【注意する】なんて書かれたタッチパネルが出てきていることに気付いた。

 ……あれ?これってもしかして、ゲームでよく見る選択肢みたいなものなんじゃ……!?



「……ご、ごめんなさい!急ぐあまり、ぶつかってしまって……」


「………………」


「(あっ、今【心配する】って方のタッチパネルを触った!)」



「えっ、『大丈夫か?』って?……私は大丈夫よ、貴方が受け止めてくれたから。……それにしても私としたことが、貴方の事になるとこんなにも冷静さが欠けてしま……あっ、い、いえ、なんでもありません……///」



 恥じらう藍先輩と私の"幼馴染"は、絵になるくらいお似合いだった。

 ……ピコンッという音と共に藍先輩の頭上に浮かぶ好感度ゲージが99になったことさえ!!目に入らなければの話だけれど!!



「……あ、藍ちゃっ……99、なの……!!」


「……っ!?」



 桃子ちゃんが藍先輩に駆け寄り、小声で数値が上がったことを伝えると藍先輩は慌てたように"幼馴染"から離れていく。



 藍先輩99、黒美先輩82、桃子ちゃん90、……そして私が、85。


 気付いた時にはもう既に、好感度MAX直前の私達。



 ……これから先、一体どうなっちゃうの……!?






主人公→生徒会執行部庶務。翠は幼馴染で桃子は従姉妹。無意識なのかハーレム狙いなのか全員の好感度を上げている。


風雲藍→マドンナ枠。学園と両親からの期待が心の奥底でプレッシャーになっていたところを主人公に支えてもらい、恋に落ちる。恋愛にはとことん初心。


舞園桃子→ロリ枠。主人公の従姉妹で彼をお兄ちゃんと呼び慕う。重度の人見知り&寂しがり屋だったため主人公から貰ったぬいぐるみを無くすと大泣きする。


椎名崎黒美→大人のお姉さん枠。主人公をからかって遊ぶのが好き。わりと序盤から好感度ゲージが見えていたが「別に傍に居るの嫌じゃないしー」と気にしていなかった


藤井翠→幼馴染枠。小さい頃に主人公と結婚の約束をしている系の王道タイプ。ポニテ元気っ娘って可愛いよねがテーマ。



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