第八十三話 二次試験
「各自この時計を受けとれ。二次試験はCランク以上の迷宮石を時計の記すタイムリミットまでに一つ持ってくること。簡単だろ?モンスターの討伐方法も問わないし、モンスターからドロップさせなくても構わない。とにかく一つ、Cランク以上の迷宮石を持ってくる。以上だ」
次の日の朝、試験官は俺たちにそう言って腕時計を渡すと、宿の前にあるベンチに座り込んでそのまますぐに寝た。
「ほや、、眠ってしまわれてしもうたですぞ」
横でキミヒコがつぶやく。
周りでは残った受験者たちが少しざわめいていた。
「二層でCランクの迷宮石といやぁ、奥地に行かねえと手に入らねえな」
「おい、誰か俺と組まないか!」
受験者たちはそれぞれ、いろいろな方法でこの二次試験を乗り越えるために話し合いをしていた。
パーティか、、、。
「ふみぃ、古森殿、パーティを組むと言うのは確かにいい案ですな」
「ああ、そうだな、、、。」
キミヒコはそう言うが、俺は少し迷っている。
確かに試験官の言ったことは一人一つ迷宮石を持ってくること。
その入手手段は一切問わない。
パーティを組めば強いモンスターでもそれだけ楽に倒せるが、、。
「古森殿、拙者は信頼しているでござるよ……」
俺が問いに答えずに、難しい顔をしていると、キミヒコがそう言った。
「あ、いや……、そういうことじゃないんだよ、ごめん」
「確かに、即席のパーティで迷宮石を手に入れたとして、それを最初に誰のものとするか。仮にそれをパーティメンバーに渡したとして、次の迷宮石を手に入れるために共に戦ってくれるとも限らない。でも拙者は古森殿を信頼しているでござる。だから古森殿も拙者を信頼してほしいですぞ」
キミヒコのいう通り、俺はまさにそれを心配していた。
以前からの知り合いならまだしも、ここで出会ったばかりの、しかも同じ受験者であるライバルを信じていいのかと。
だが、キミヒコはそんなやつじゃない。
短い付き合いだが、わかる。
少しでもそんなことを考えた自分を情けなく思った。
「ああ、そうだな!ごめん、一緒に迷宮石を……」
そう、続けて言おうとした瞬間だった。
ズォオオオオン
と後方ですさまじい爆音が鳴り響いた。
「!?なんだ、、あれ、、、」
驚いた冒険者たちの声が聞こえる。
ほんの少し遅れて俺も音の方を見た。
視線の先には、先ほどまでいた宿が半壊し砂煙をあげている景色が写っていた。
そして、その砂埃から3人の男が出てくる。
「ダイナマイトォ〜!全壊とはいかねえなぁコレ」
「迷宮の中じゃ銃火器は威力が落ちますからね。魔物が相手では効果すらない。不思議なものですよ。まったく」
「しゃあない。まぁでも今回の俺らの仕事は人間退治やから、それならコレが一番や」
男たちはそう話しながらスタスタと俺たちの方へ歩みを進める。
そのうちの一人は肩にバカでかい大砲を抱えていた。
「おいなんなんだ、一体……」
ちらほらと聞こえる困惑の声
「……」
俺はというとすくんでしまって言葉も出ず、足も動かない。
こいつらはやばい。
俺の危機察知能力がそう言っている。
一人の男が持っているゲームでしか見たことない大砲のような武器も確かにやばいが
こいつらの纏っている魔力は、これまで味わったことがない肌を突き刺すような邪悪さを秘めていた。
「ここ、、古森殿、、、あやつらは、、」
キミヒコの怯える声が聞こえる。
そして
「悪いがお前ら全員、ここで死んでもらうぞコラ」
と大砲を担いだ男が言うと同時に、銃口が俺たちに向けられた。




