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第七十九話 再戦、女王蜘蛛2

 1.2.3……


 俺は女王蜘蛛を中心に弧を描くように走りながら数える。


 何を数えているかというと、女王蜘蛛が口から放つ糸玉だ。


 想定通り、というか甲賀に教えてもらったように女王蜘蛛の放つ糸玉はそれほど速くない。


 これなら十分に避けれるな。


 8.9.10……


「今だっ」


 そして10まで数え切ったところで俺は横に走るのをやめて、女王蜘蛛に向かって一直線に走り出した。


 女王蜘蛛は口から吐こうとして何も出てこないのが苛立ったのか体を震わせ、前の脚を2本あげる。


 そしてその脚が俺に向かって降り注いできた。


「っ!!」


 俺はその一本をバリアーで横に流す。


 そしてこの部屋に入る前に魔力を貯めておいた剣で斬りつけた。


「ギェアアアアアアアア」


 耳の鼓膜がおかしくなるほどの雄叫びが目の前で聞こえる。


 魔力で切れ味の増した剣は確実に女王蜘蛛の脚を切り落とした。


 俺は一瞬雄叫びにくらっとしたが、切り落とされた女王蜘蛛の脚から鮮やかな青色の迷宮石が落ちたのを見逃さない。


「っしゃ……」


 女王蜘蛛が怯んでる間にその石を拾い上げる。


 そして石を手に取った瞬間、俺はほんの少し気を緩めてしまった。


 今の俺なら気付いたはずなのに、横薙ぎのようにこっちに迫ってきていた女王蜘蛛の脚に気が付かなかった。


「しまっ……」


 た、と言うときにはすでに目の前に来てきた攻撃に俺は反射的に目を瞑る。


 が、攻撃は来ない。


「油断しすぎっ!!」


 その声とともに目を開けると、女王蜘蛛の動きは止まっていて


 甲賀が手のヒラをかざしながら短剣を女王蜘蛛の頭に突きつけていた。


「復活したばかりだけど、このままひくわよ!後は討伐隊に任せる!」


「お、おう!」


 そうして女王蜘蛛の悲鳴とともに、甲賀と俺は足早に階層主の部屋を後にした。


「いい!?野生の動物が一番油断する瞬間ってのは獲物を捉えたときなの。さっきのあんたはまさしくそう!迷宮石を手に取って完璧に油断してた。こんなのディスカバリーチャンネル見てる子供でも知ってることだわ」


 帰り道、甲賀はそう言ってずっと怒っていた。


 それでも、怪我をせずに迷宮を後にする事は滅多にないので、それは少しだけ褒められた。




「よし、これで応募完了だよな」


 迷宮の外に出て、隣の委員会で迷宮石を納品する。


「そうね、あとは明日、当日までゆっくり体を休めること」


「よし、じゃあ俺は一旦帰るかな」


 ずっと甲賀の家に世話になっていたからしばらく家には帰ってない。


 もちろん米も何も炊けていないので、久しぶりにスーパーで弁当でも買って帰るか。


 そう思いつつ歩いていると


「帰るの?多分、ゆながご飯作ってるけど」


 と甲賀が言った。


「え、いいのか?ずっと世話になりぱなっしだけど」


「まぁ、あんな家だからね。2人だと寂しい….



 ってゆなが言ってた」


 続けて、少しぎこちなくそう言うと、チラッとこちらを見てすぐにまた前を見る。


「じゃあ……、お言葉に甘えようかな」


 甲賀の妹、ゆなちゃんが作るご飯は正直めちゃくちゃ美味しい。


 それに、スーパーで弁当を買うと言ってももう時刻は21時を過ぎていた。


 おそらくロクな弁当は残っていないだろう。


 そんなこんなで、また甲賀の家に世話になる。


 これだけ世話になって感謝してもしきれない。


 明日の中級冒険者試験も、甲賀の助けがなかったら辿り着けなかっただろう。


 それだけに必ず合格しなくちゃいけない。


 そして、無事に合格したら、恩返しも兼ねて何かご馳走しよう。


 2人で歩いて帰る道で、俺は密かにそう決意した。


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