第七十五話 必要資格
「中級冒険者試験受験者必要資格!!」
今日は甲賀の家で行われている特訓の最終週1日目だ。
目の前では甲賀が本を片手にどこかの教官のように中級冒険者試験の事を説明している。
俺はそれを床に置かれた座布団の上で体育座りをして聞いていた。
「必要資格その1!!冒険者になって半年以上が経過している!」
そう大きな声を発すると、こちらに白い棒のようなものを向ける甲賀。
「うん、大丈夫」
なんだか今日はへんなテンションだな、と思いながらも俺は答える。
「よし……」
どうやら問題はなかったようだ、よかった。
「必要資格その2!迷宮石の換金総数が定められた金額を超えている!」
そういうと、甲賀はまたしても俺に棒を向ける。
「定められた金額……?」
わからない俺は質問した。
「この軟弱者!」
すると甲賀は待ってましたと言わんばかりにこちらを睨みつけて平手打ちをしてきた。
「いたいっ」
ポーズだけだと思ったが、それなりの威力だった。
「どうしてしっかり読んでいないのだである!貴様!中級冒険者試験を受けるものなら、しっかり応募要項を読んでおくのだ!」
「え、すいません……」
何なんだと思いながらも、言っていることはごもっともなので俺は謝る。
「うむ、では続ける……」
そうして、恐らく昨日の夜にやっていた軍隊もの映画に影響されたであろう甲賀の講義がしばらく続いた。
「ようはさ、アンタはリザードマンの討伐数が足りないのよ」
「みたいだなぁ……」
一通り必要資格を聞いた俺はそう呟いた。
いくつかある資格のほとんどはクリアしていたのだが、その一つであるDランク以上の迷宮石納品数が足りていなかった。
モンスターが落とす迷宮石には一応ランクのようなものが定められており、色とか大きさで見分けている。
そしてDランク以上の迷宮石は二層からのモンスター、もしくは一層のリザードマンからしか落ちない。
これは冒険者人生のほとんどをスライム倒しに費やしていた俺の弱点というか、まぁ資格を満たしていなくて当たり前なのだ。
「というわけで、残りの1週間は迷宮でひたすらリザードマン倒しだから!まぁ多分、というか普通にやってれば間に合うから余裕ね」
「ああ、目指せ!資格達成だぜい」
そうして、俺と甲賀は実に数週間ぶりに迷宮に足を向けた。




