第七話 バットピグ討伐2
攻めてくることを予想して、俺は咄嗟にバリアーを発動しようとした。
が、発動する前に鳩尾に強い衝撃と激しい痛みが走る。
「いっっだっ!!」
痛い!とも言えずに俺は後ろに倒れ込む。こいつ!胸当ての下の何も装備してないところをっ。
しかし痛みに身を任せている場合でもない、次の攻撃が来る。俺はなんとか立ち上がり、頭を数回横に振った。
先ほどの鳴き声攻撃のせいでまだ耳鳴りがするが、視界は元に戻った。すると少し離れたところでバットピグが後ろ足を地面に擦っているのが見えた。
「さっきの鳩尾への攻撃は突進攻撃か…」
まだ痛むお腹をさすりながら俺は呟く。
というかこいつやっぱり飛べないのか、羽根は飾りか!
今度は食らわないぞ、そう思いながら俺は左腕を前にしてバリアで体を守る態勢をとった。
バリアはまだ発動していない、バリアを見ると攻撃を変えてくる可能性があるからだ。
「こい…、もう一度突進攻撃で…」
ボソリと呟くと同時に、バットピグは後ろ足で地面を蹴りこちらに向かって走ってきた。
地味に羽根をパタつかせている。
そして俺まで後2メートルというところでピュンっとジャンプした。
そのまま魚雷みたいにさっきと同じ鳩尾へと向かってくる。
今だっ!
「バリアーーーーー!」
俺はバットピグが来るギリギリでバリアを発動した。目の前で青く半透明のバリアが展開され、バットピグと俺との間を遮る。
空中で突進してくる形のバットピグは、そのままバリアへ向かって突進し、さっき食らった攻撃よりも強い衝撃がバリア越しに感じられた。
勢いよくバリアにぶつかったバットピグはギェアという鳴き声とともに地面に倒れ落ちた。
「やった…のか…?」
バットピグは倒れ込み、体を痙攣させている。
頭に強い衝撃が走って麻痺しているようだった。
それにしても、1度目の攻撃よりも数段威力が強かったあの突進を受けていたら、痛いでは済まないかもしれなかった。
バットピグは多分2回目の攻撃で俺を仕留めるつもりだったのだろう。
しかし、俺にはバリアがあった。
バットピグ、お前の敗因は警戒心の無さだ。いや、1度目の攻撃で倒れ込んだ俺をみて油断した慢心さ…か。
俺は倒れ込んだ時に落とした短剣を拾い上げた。
「悪く思うなよバットピグ」
そう呟き、俺は剣を振りかぶり
「邪神!竜撃!!迅雷剣ッ!!!!」
と必殺技を叫びながら普通に剣を振り下ろす。
するとバットピグはそのまま動かなくなり、煙のように蒸発していった。
そして…
ちょっと期待したがアイテムのドロップはなし。
「ふぅ…」
俺は周りにモンスターが居ないことを確認して剣を鞘に収めた。
冒険者として迷宮に潜り始めて半年、初めてスライム以外のモンスターを倒した瞬間だった。
「やったぞおおおおーー!」