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第五十六話 二層へ2

「行け風の如く〜、孤高の剣士よ〜闇に〜ふんふんふんふ〜」


 昨日の深夜にやっていた仮面ライダーみたいなドラマの歌を口ずさむ程度には一層探索は余裕になっていた。


 というのも、どうも不思議なことに、道中で出会う超下級のモンスターがあまり俺を襲ってこない。


 甲賀と歩いている時も確かそうだった。

 もしかして確実に勝てないと解る相手には襲ってこないのだろうか。


 が、しかしそれでも、しばらく歩いていると現れるトリコやグレムなんかの人型系モンスターは俺をみると問答無用で襲いかかってくる。


「邪神剣ッ!」


 だがしかし、もはや俺の相手ではない。

 俺は入院中に考えていた新しい決めセリフを吐きながら襲ってくるモンスターを相棒の黒銅剣で切り倒して先に進む。


 ちなみに、邪神剣というのはかつての俺の決めセリフ【邪神龍撃迅雷剣】を縮めたものだ。


 決めセリフは気分が上がるので大事なのだが、それなりに強いモンスターと戦う時にこんな長いセリフを言う余裕は無い。


 だから縮めて邪神剣である。我ながらかっこいいと思う。それに黒銅剣の黒い刀身とよくマッチしている。


「にしても、今日は人が多いな」


 そんな事を思いながら歩いて、ついそう呟く。


 迷宮に入って2.3時間は歩いているのだが、この辺りでも今日は狩りをしている冒険者が多くいた。


 いつもなら、というかこの辺りに来たのも正直まだ数回だが、そんなに人がいた記憶はない。


 大抵の冒険者はバットピグとかそれよりも少し強いモンスター止まりだと思っていたが、案外そうでもないようだ。


 俺は幸運にも迷宮装備を手に入れて、魔力を感じられるようになったからこうして戦えているわけだから、他のそうでない冒険者は正直凄い。


 俺はそう思いながら戦っている冒険者たちを見た。


 同年代か、それよりも若い人達がグループを組んでモンスターと戦っている。


 どれも皆んな冒険者の初心者セットのような装備に毛が生えた程度なので、やはり俺と同じ低級冒険者だろう。


 だが、よく目を凝らして見てみると、たまーにいい装備をつけた人が辺りを見ながら歩いている。


 もしかして冒険者狩りか?と初めは思ったが、その中の1人が昨日の夜に槙島さんと共に俺を助けにきてくれた人だと気づいた。


 カネキだったかなんだったか忘れたが、昨日は槙島さんのほかに男性と女性がいた。その男性の方が、数人引き連れて周りを見ながら歩いている。


 多分みんなチェイサーなのだろう。


 その剣呑な眼差しは迷宮に異常がないか見ているようだった。


 昨日に続いて今日もいるなんて、何かあったのかなと一瞬思ったが、多分、見回り強化月間なんだろうなぁと特に気にも止めず、昨日はありがとうございました、と言いに行くか少し迷ったが怖いのでやめた。


 そうしてさらに歩いてリザードマンが生息している森に着いた。


 この森を抜ければ一層の城があり、その城の中に二層に降りる階段があるはずだ。


 5.6時間ほど休みつつ歩いたから少し疲れていたが、迷宮の中では魔力のおかげで俺の身体能力は向上している。


 だから昼休憩にどこかでお弁当を食べようと思ったが、そのまま突き進むことにした。


 左手の腕時計をチラッとみると、時刻は13時を過ぎたところだ。


 この迷宮の中の時間は、おおかた外の世界と同じなので腕時計は役に立つ。


 今は冬だから、大体6時過ぎに日が暮れると考えても二層につく頃はまだ明るいな。


 そうしてしばらく森の中を歩く。


 森の中は他の場所とは違って少し薄暗い、どう言う仕組みなのかは不明だが、迷宮を照らしている太陽のような謎の光が木に遮られているからだ。


 俺は少し警戒しつつも、昼間は群れをなさないリザードマンの習性を信じてガンガンと突き進んだ。


 そうして幸運なことにリザードマンに会うこともなく城の前に到着。


 実に2ヶ月ぶりほどの城だ。


 前に来た時は川田さんと遭難者の探索をしている時だ。


 あの時は暗かったから月の光とたいまつの明かりでしか全景を見ることはできなかったが、改めて明るいうちに見てみると、本当に凄い。


「ディスイズザキャッスルって感じだな……」


 アニメや洋画で出てきそうな城そのものだ。


 俺はそんな事を考えながら森と城とを繋ぐ橋を渡る。


 橋の下には水が流れている。


 そして、城の中にもリザードマンがうろうろしているから慎重に歩みを進めて、俺は例の祭壇場まで来た。


「ふぅ……」


 このまま階層主の部屋まで行って二層に降りようかとも考えたが、城で唯一モンスターが近寄らないこの場所で休憩しようと考えたのだ。


 祭壇場の扉を開けると、2パーティの冒険者がそれぞれ談笑していた。


 俺が扉を開けた瞬間、一瞬チラッとこちらを見たが冒険者たちはすぐに談笑を再開する。


 やっぱり、パーティって良いよなぁ。


 なんて思いながら、楽しげな雰囲気を邪魔しないようになるべく隅に腰を下ろしリュックの中からお弁当を取り出した。


 剣道さんから貰った食料も取り出して中を見るとサンドイッチが入っていた。


 どちらを先に食べるか迷ったが、俺はとりあえず自分の用意したお弁当に箸をつけた。


 サンドイッチは二層に入ってからのお楽しみだ。

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