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職業冒険者は半額シールが好き。  作者: 語谷アラタ
第二章 再スタート
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第三十三話 依頼探索

前回記述した低級冒険者は一層までしか入れない、と言うのを二層までに変更しました。三層からが中級冒険者以上でないと入れない層です。

前回の後書きにも書いたのですが、ストーリーに関わる変更ですのでこちらの前書きにも書かせて頂きます。

「神様……、どうしてっ……、俺が何か悪いことをしましたか?お願いです、どうかこの痛みを取り除いてください……」


 月曜日、今日は薔薇十字団メンバーの甲賀陽奈という女の子と一緒に依頼探索、通称クエストを受ける約束になっている。


 しかし俺は今朝からとんでもない腹痛に襲われていた。


「あああああああぁああ……!!」


 出るタイプならまだマシだが、激しい痛みと共に出ることを知らない便。最悪なタイプの腹痛だ。


 待ち合わせ時間は朝の9時、左手に握りしめて手汗で濡れたスマホで確認すると、今は8時50分。


 そろそろ出ないと間に合わないが、便が出ないためにトイレから出ることができない。


 二つの意味で出たいのに出られなかった。


「こんなことなら連絡先を聞いておくべきだった……」


 便座に座りながら、居るかもわからない神様に祈り続けてもう1時間。そろそろ出ないと本当に間に合わない、折角連れて行ってもらうのに無断で遅刻なんて最悪だよな。


 俺はそう思い、なんとか腹痛を我慢してトイレから出て、気休め程度に胃腸薬を飲む。


 そして迷宮に入るための支度をして、新調した防具をつける。


 木曜日に遭難者の捜索から帰ってきて、久々の迷宮だ。リュックの中の必需品も確認しておくか、とりあえず胃腸薬も入れておきたいしな。



 そう思いながらリュックを開けた瞬間、


「ふぁぬんぶっ!」


 とてつもない異臭が部屋中に広がり、直に嗅いだ俺は思わずのけ反った。


「なんだこれ、なんでこんな匂い……、あっ!!」


 匂いを嗅がないように異臭の正体を探ろうとリュックの中を見ると、そこには見覚えのある小さな小袋が入っていた。


「においぶくろ……、完璧に忘れてた」


 捜索に行く前に夏目さんからもらったモンスターを引き寄せなくなる迷宮アイテム。


 確か、城の近くでリザードマンの群れに遭遇した時に、匂いでバレちゃダメだと思って咄嗟にリュックに入れたんだよな……。


 それがリュックの中でおよそ四日間熟成されて、まるでリュック自体がにおいぶくろかというほど中に匂いが充満していた。リュック自体もかなり匂いがこびりついていて臭い。


 最悪だ、最悪な1日だ。


 このにおいぶくろに関しては完璧に俺のミスだが、こんな臭いリュックを背負って腹痛を抱えながら迷宮に行くなんて最悪だ。


 しかも、初めてのパーティでの探索、初めてのクエスト。


 そしてなにより、初めて女性と二人で何処かに行く、迷宮だけど。


 こんな肝心な日に限ってこんな不幸が続くなんて最悪だ。


「くそぉ……、くそぉ……」


 昨日、気持ちを新たに冒険者として頑張ろう!と思ったのに出鼻を挫くどころかへし折られた気分だ……。


 そう思いながらも、もう待ち合わせ時刻の9時になったのを確認した俺はリュックに大量に消臭スプレーをかけて、コートを着てからそれを背負う。


 そして急いで迷宮に向かった。


「遅いっ!!」


 迷宮扉の前に着くと、すでに待っていた甲賀陽奈がすごい剣幕で俺にそう言った。


「す、すまん……、ちょっとゴタゴタしてた」


 年も近いから敬語じゃなくていい、私も敬語使わないけど。と、この前帰り際に言われたので、俺は普通の口調でそう謝った。


「アンタね!これは仕事なのよ!?迷宮探索!クエスト!国から依頼された大事な任務!せっかく連れて行ってあげるんだから自覚を持ちなさいよ!自覚を!」


 腰に手を当ててそう言う甲賀は、まるで昔働いていたバイト先に居たバイトリーダーみたいだった。


「あぁ、わかってる……。朝からめちゃくちゃお腹痛くてさ、本当にごめん」


 そう言いながら気付いたが、家に出る前はかなり痛かったのに今は何故か痛くない。胃腸薬が効いたのだろうか。それとも神様へ祈りが届いたか。


「お腹……?そ、それならそうと言いなさいよ!てっきり寝坊でもしたかと思ったじゃない」


 俺がそう言うのを聞くと、甲賀はえっ、て顔をしながらそう言った。


「いや、遅刻は遅刻だ。本当にすまん」


「で、その、もう大丈夫なわけ?もし酷いようなら私1人で行くけど……」


 甲賀は少し悲しそうな顔をしている。腹痛のことを言ったのは失敗だったか、変に心配させてしまったかもしれない。


「いや、もう大丈夫だ。それで今日のクエストってリザードマンの洞穴調査だっけ?」


 あまり心配ばかりされるのもアレなので、俺は話を変えるようにそう言った。


「大丈夫ならいいけど……、そうね、今日のクエストはリザードマンの変異体出現を防ぐための調査」


「変異体?普通のリザードマンじゃないのか?」


 普通のリザードマンなら俺でもなんとかなるかもと思っていたが、変異体って大丈夫か。


「そう、モンスターの中には一定以上の数になると共食いして変に強いのが出る厄介な種類が居るのよ。で、一層ではリザードマンがそれなの。もしも変異体が現れたら一層を拠点にしてる冒険者だと太刀打ちできないでしょ?そのために定期的に調査依頼が出るわけ」


 そんな種類が居るのか。


「俺も低級冒険者なんだけど……大丈夫か?」


「大丈夫よ!あくまで今回は調査、まぁ変異体が現れないためにリザードマンがどれぐらい居るか調べたり、多かったら何体か倒すって感じ。そもそもこの程度なら低級冒険者でもやれるわよ。洞穴まで見に行くのを面倒くさがって誰もやんないけど」


 要するに変異体が出ないために間引きに行くって感じか。


 面倒くさがってやらないってのは、仕事のわりに報酬が不味いとかそういう事だろうか、リザードマンは群れだと厄介って川田さんも言っていたしな。


 薔薇十字団はそういう余った依頼なんかも引き受けているんだろうな。


「じゃあ、早いとこ行きましょ」


「了解」


 そうして、俺は冒険者になって初めてのクエストに向かった。

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― 新着の感想 ―
[一言] スカトロはちょっととおもっていたら、虫垂炎じゃねぇの?主人公よ病院行け、死ぬぞ。
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