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職業冒険者は半額シールが好き。  作者: 語谷アラタ
第一章 全てが変わる一週間
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第三十話 薔薇十字団3

「じゃあ、アンタが低級の分際で迷宮装備を持ってるって冒険者?」


 どうやら薔薇十字団の間では迷宮装備を持っている奴として知られてるみたいだ。


「えっと、古森中也(コモリ チュウヤ)です、よろしく」


「ふんっ、生意気ね。私だってまだドロップしてないのに」


 俺が自己紹介すると女の子はそう言って俺を品定めするようにじーっと見つめる。


 彼女いない暦年齢の俺はついドキドキしてしまう、

 顔が微妙に近い。


「ほらヒナちゃん、お客様に失礼なこと言わないの」


 女の子はじっと俺を見た後、ティーノさんにそう言われ、


「ふん、まぁ私の足元にも及ばないわね」


 とカレーを食べ出した。


「この子は甲賀陽菜(コウガ ヒナ)ちゃん、可愛いでしょ?」


 続けてまたティーノさんが俺にそう言う。


「ははは……」


 こういう時、なんて言えばいいのかあんまりわからないんだよな。


 可愛いです、って言うべきなのかどうか、


 初対面で可愛いですねはちょっとキモい気もするが、可愛くないですね、なんてのも失礼な気がする。


 そもそも年下の女の子に対して可愛いですねぇ、なんて緊張して言えない。

 というコミュ障御用達のどうでもいいことで悩んだ俺はとりあえず苦笑いを選択した


 すると、カレーを食べる手を止めた女の子が俺の方をキッと睨んだ。


「はははって何よ!はははって!まるで私が可愛くないみたいな苦笑いね!」


 いや、そういうつもりはないんだが、もしかして可愛いって言って欲しかったのだろうか。選択を誤ったか。


「まぁ、その、可愛い……ですね」


 そう思った俺は、緊張して照れながらも言った。まぁ可愛いのは事実だからな。

 女の子に可愛いなんて初めて言ったからめちゃくちゃ緊張したが。


「はぁー!?バッカみたい。口説いてるつもり?」


 女の子は今度は顔を赤くして俺にキレた。


 いや、全くわからん。

 今の流れ的に可愛いって言う以外ないだろう、なんで照れてるんだ。


「ま、まぁ、いいわ!本当のことだから!そんなことよりティーノ!明後日の依頼本当に私1人なわけ?」


 女の子はふんって感じでそう言うと、話を逸らすようにティーノさんと話し始める。


 女子ってのは難しい、特に年下との会話なんて小学校のボーイスカウト以来だから余計だぜ。


 と思いながら、久しぶりの年下女子との会話に少し辟易した俺もカレーを食べ始める。


 食べて少ししたら早く帰ろう。


「うーん、ワタシたち第3迷宮の階層主討伐に呼ばれちゃってるのよねぇ、だからそうなっちゃうかしら」


 2人の会話を聞きながら、カレーを一口食べる。


「もう、なんで私はそれに呼ばれないわけよ!それに!絶対階層主の方が楽しいわ」


 なんだこのカレー、美味いなんてもんじゃないぞ……。


「こーら、お遊びじゃないのよ?それに依頼だって薔薇十字団の大事なお仕事」


 確か和服の男性、剣道さんが作ったって言ってたよな?プロレベルだ……。


「ほんっと、未成年だからって規則が厳しいのよ!規則が」


 これはタッパーに詰めて持ち帰りたい……。


 カレーを食べる手が止まらない。


「そうだわ!今度の依頼、チューヤちゃんと一緒に行ったらどう?」


「えっ」


 カレーに夢中になっていたが、今俺のこと言わなかったか?


「えっと、なんですか?」


 あまり会話を聞いていなかった俺は尋ねる。


「今度ね、ヒナちゃんが一人で依頼受けることになったのよ。それでチューヤちゃんどうかしらって」


 依頼……、薔薇十字団が受けるレベルの依頼に俺がついていけると思えないが


「どんな依頼なんですか?」


「確か一層リザードマンの洞穴の調査だったわよね?チューヤちゃん丁度いいんじゃないかしら?」


「そうですねぇ、古森くんならリザードマンぐらいは倒せるんじゃないでしょうか?女王蜘蛛の攻撃を受け止められたぐらいですし、もちろん危険なので無理にとは言いませんがねぇ、ええ」


 俺のその問いにティーノさんと川田さんが答える。


 一層か、まだリザードマンは倒したことがないが確かに行けるかもしれないな。


「まぁ、1人よりも2人の方がまだマシかもね、どうする?アンタが来たいんなら一緒に連れて行ってあげてもいいわよ」


 女の子も意外にその提案に乗り気なようだ。


「じゃあ、是非連れて行ってもらおうかな」


 初リザードマンだし、どんなモンスターか知るには丁度良いかもしれない。


「決まりね!」

 俺がそう言うと、女の子は声高らかにそう言った。

 ご飯粒が飛んだのが見える。


「ヒナちゃん、年の近い子と探索に行けるから嬉しいんでしょ?」


「べっ、別に嬉しくなんてないわよ!ただ1人だと退屈なだけ!」


 ティーノさんに茶化されるようにそう言われた女の子はまたもや口からご飯粒を出しながらそう言う。


「もう、ツンドラねぇ、ヒナちゃんは」


「それを言うならツンデレよ!って、ツンデレじゃないわよ!」


 そんなこんなで話が進み、明後日の月曜日、俺は薔薇十字団メンバーの女の子と一緒に依頼を受けることになった。


 川田さんにお礼を言いに来ただけなのに、ずいぶん変なことになったもんだ。


 俺はその後カレーを全て平らげて、タッパーに詰めて持って帰りたい欲をグッと抑えながらお礼を言った。


 ずっと無言でカレーを食べていたシェフの剣道さんは、俺が美味しかったですと言うとすごく嬉しそうにしながらも


「ふふ……」


 の一言だけだった。クールな人のようだ。



 そして、薔薇十字団の部屋を出てから少し右田さんを探すもやっぱり会うことはできず俺はそのまま家に帰った。


 帰宅後、俺はあのカレーの味をもう一度味わいたいなぁと思いながら少しだけテレビを見て、夜のタイムセールまでまだ時間があったのでベッドに横になる。


「あ、そういえば謝礼貰ってたんだった」


 薔薇十字団のキャラの濃い人達との遭遇で完璧に忘れていた。

 思い出した俺は上着のポケットから謝礼の封筒を取り出す。


 本当に俺が貰って良かったのかなぁと思いながらも中を見ると福澤諭吉がピッタリと並んで入れられているのが見えた。


「ええ!?」


 驚いて中から取り出し、数を数えると全部で二十枚。


「ええ……っと、一万円札が二十枚ということは」


 脳をフル回転させて即座に計算して割り出す。


「二十万!?!?」


 計算ののち俺はそう叫んでベッドにダイブした。


 二十万ってことは半額弁当いくつ買えるんだ!?

 ええっと、一つ五百円が半額で二百五十円で


 わからない!


 とにかくとんでもない大金だ……。


「返しに行くか……?」


 いやそれは失礼だろ、でもこんな大金どう使えばいいんだ。

 貯金か?それともパーっと何かに使うか?


 いやそれはダメだろう、やっぱり貯金……。


 と突然舞い込んだ大金にしばし苦悩して俺はあることを考えついた。


 すぐに俺はパソコンの前に座り、前に貰った右田さんの名刺を見る。


 そして、下に書いてあるURLからホームページにアクセスすると渋いフォントで


 〜迷宮商人右田甚五郎のホームページ〜


 と出てきた。


 そのまんまだな、と思いながらも下にスクロールし、問い合わせ欄からメッセージを打つ。


 今日会えなかったから、一昨日のお礼を書いたのちに俺はお金の使い道で思い付いた事を書く。


「防具の件で、一度お話を……っと」


 俺は、このお金の使い道を防具の新調に決めた。


 これが最も有意義で、今後のためになると思ったからだ。


 そしてメッセージを確認してから送信ボタンを押した。


 これでよし、あとは右田さんからの返信を待つだけだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだろねこのあったかさ すごい好き まず主人公が無双してワーワーってのじゃなくてちょっとだけ特別なことが出来るけどそこまで強くない・・・けど頑張るって感じですごい好感持てる [一言] …
[一言] チョマテヨ、半額弁当が250円ってどういうことだよ? 真の半額(以下)弁当は150円~200円ダルォォ!? ていうか自炊をしろよぉぉぉお!!!(貧乏人の嘆き) 焼きそばなんてトータル1…
[良い点] ファンタジーと現実部分のバランスがいいです。 主人公の性格が変にこじれてないのも入りやすいですね。 [一言] ツンドラってシベリヤかよって思わず突っ込んじゃいました。 あと、弁当は800個…
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