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職業冒険者は半額シールが好き。  作者: 語谷アラタ
第一章 全てが変わる一週間
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第三話 迷宮装備3

 4件の中でも一番低級だと思われるモンスター、リザードマンからドロップした迷宮装備、上半身の鎧をクリックした。


 現在価格877万と表示されている。


「はははははは、877万!?!?」


 入札件数177件で、残り時間まだ1日あるのにこの金額かよ!


 リザードマンの迷宮装備、しかも防具でこの値段だと、上級モンスターの武器とかじゃ億行くんじゃないか…。


 迷宮装備がそもそも何故こんな価値があるかというと、超低確率ドロップだけじゃない。


 迷宮装備にはその装備固有のスキルが付いており、それはまるで魔法のような力を発揮すると言われているからだ。


 聞いた話じゃ、上級モンスタードロップの迷宮装備の中には、傷を受けてもすぐに癒してくれる鎧とか、炎を纏って放出できる剣があると聞く。


 その装備にどんなスキルがついているかは装備してからじゃないと分からないから、上級にはもちろん及ばないにしても、低級モンスタードロップの品でも、かなり役立つスキルがついているかもしれない。



 そして、迷宮装備は一度装備すると、その人間以外が装備したとしてもスキルを使用できない。


 つまり魔法のようなスキルと、一度装備すると専用装備になるという流通不能さ、そして超低確率ドロップという三つがこんなに値段を跳ね上げている。


 それにしても…高すぎだろ…。


「スライムでも1000万ぐらい軽く行くんじゃないか…」


 そう考え、思わず唾を飲み込む。


 大学4年のとき、俺は就職活動を諦めて、半ば現実逃避で冒険者試験を受け冒険者になった。


 それから半年、周りが普通に就職して働いている中で、俺は、命の危険もあり、明日食べていける保証もない冒険者を仕事にしている。


 勿論、これが天職な人もいるだろうし、テレビなんかにも出る超有名な冒険者として名前を馳せている人もいる。


 でも、俺ってそんな運動神経良くないだろ?

 おまけに度胸もない。


 だから半年経ってもスライムしか倒せずにいるんだ。


 おかげで毎日半額シールの貼られた弁当を買って、なんとか生活できるレベルしか稼げてない。


 そもそも冒険者の素質がないんじゃないか?俺には。


 ここらでこの迷宮装備を売った資金で、まともな職に就くべきなんじゃないか?


 冒険者として生きるか、まともにサラリーマンとして生きるか、これは神様がくれたラストチャンスかもしれない。


 そう考え俺は、オークションサイトの出品欄を選択し、迷宮装備の出品を選んだ。


 すると、迷宮装備の確認のため、後日委員会から調査員が来るというメッセージが出てくる。


 俺はそれに同意するという選択肢を…





 押そうとして


 踏みとどまった。



 確かに、俺には冒険者としての素質がないかもしれない。


 一流の冒険者として、迷宮の謎なんかを解明したり出来ないかもしれない。


 ずっとこれからも、スライムを狩り続けて、半額シールの貼られた弁当を買い続ける人生かもしれない。


 もしかしたらスライムに負けて死ぬかもしれない。


 それでも俺は、



 冒険者として生きたい。


 この世界には、迷宮にはロマンがある。これまで感じられなかったワクワクがある。


 未知の世界が広がっているんだ。


 俺は、オークションサイトを閉じてPCの電源を切った。


 そしてゆっくりと立ち上がり、机に置いた青く輝くプロテクターを持った。


 これから一生、半額シール生活でも悪くはない。


 そう思いながら、俺はプロテクターを左腕に装着した。




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