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職業冒険者は半額シールが好き。  作者: 語谷アラタ
第一章 全てが変わる一週間
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第二十九話 薔薇十字団2

「それで、ワタシに何かご用かしら?」


 俺があたふたとしていると、その男性が聞いてきた。


「あ、いや、川田さんにちょっと用事がありまして……」


 何かようですか?ってのはいきなり目隠しをされた俺のセリフな気がするが、とりあえず答える。


「あら、平ちゃんのお友達!?私に黙ってこんな坊やとお友達になるなんて!平ちゃあん!平ちゃああん!」


 俺の返答を聞くと、男性はそう叫びながら薔薇十字団専用の部屋に通じるドアを開けた。


 川田さんはここでは平ちゃんと呼ばれているのだろうか、と言うか、もしかしてこの男性も薔薇十字団のメンバーなのか。


 そんなことを思いながら、男性にがっしりと肩を捕まれている俺もそのまま中に入る。


「平ちゃん!貴方にお友達が来ているわよ」


 中は普通の部屋のようになっていた。

 一般的な家具やキッチンまで備え付けられている。


 想像よりもアットホームというか、庶民的な雰囲気に少し驚いた。


 そして、男性にそう言われた平ちゃん、川田さんはテレビを見ながら煎餅を食べていたらしく、少しもぐもぐとしながら、おっ!と言う顔をした。


 ちなみに川田さんの他にも、奥のキッチンでは長髪で和服を着た侍のような男の人が料理をしていて、右端に置かれているソファでは、人が毛布にくるまって寝ている。


 毛布にくるまっている人はチラッと見えてる髪の毛からするに女性だろうか。


 俺が入ってきても、料理をしている男性は真剣な目で鍋をかき混ぜていて、寝ている人はもちろんそのまま寝たままだ。


 川田さんは俺に気がつくと、おおーという感じで近づいて来てくれた。


「古森くんじゃないですかぁ、いやぁお元気なようでなによりです、ええ」


「平ちゃん!この坊やとはどこであったのかしら!?」


「はは、ティーノさん、今朝話した遭難の件ですよぉ、彼が一緒に手伝ってくれた冒険者の古森君です、ええ」


「あらぁ!じゃあこの子がスライムの迷宮装備を持ってるラッキーボーイね?」


 と、俺の目の前で展開される会話に少し気遅れしていると


「それで、古森くんどうかしたのですか?」


 と川田さんが助け舟を出してくれた。


「あ、この前のお礼を改めてちゃんとしようと思って、捜索の。川田さんが居なかったら城までたどり着く前にどこかで倒れてたと思うし、四人が無事だったのも川田さんと右田さんが居てこそだと思うので。本当にありがとうございました!」


 俺はその助け舟に乗っかって、ここに来た目的であったお礼をし、頭を下げた。


「いやぁ古森くん、そんなそんな、古森くんこそ女王蜘蛛から遭難者を救出したじゃないですかぁ。こちらこそありがとうございます、ええ」


 川田さんがそう言ってくれて、じゃあまた何処かで会ったらよろしくお願いします的なことを言って帰ろうとした瞬間


「偉いわ!!」


 という叫び声が部屋に響き渡る。


「遭難した見ず知らずの人を助けに行くだけじゃなくて、手伝ってくれた平ちゃんにお礼まで言いに来るなんて偉いわ!ワタシ好きよ!そういう子!」


 続けてそう話す声は俺の後ろで今もなお、俺の肩と胸の辺りを撫でるように触り続けている男性だ。


 少し身の危険を感じた俺は


「じゃ、じゃあまた何処かでお会いしたら……」


 と言って帰ろうとすると


「出来たぞ」


 と今度はキッチンに立っている男性がぼそっと声を上げた。


 そして良かったら坊やも食べて行きなさいなという後ろの男性と、そうですねぇ、どうですか?という川田さんの誘いを断れず、俺は気がつけば椅子に座って料理を待っていた。


「……」


 なんだこの状況。

 俺は川田さんにお礼を言ったら右田さんを少し探して帰ろうと思っていたのに、どうして料理をご馳走になろうとしているんだ。


 そんなことを思っていると、キッチンにいた長髪の男性が俺の前に皿を出してくれる。


 その皿にはカレーライスがよそわれていた、とてつもなく良い匂いが漂ってくる。


 俺はとりあえず、あ、どうもと頭を下げた。


「そう言えば、自己紹介がまだでしたねぇ」


 長髪の男性が配膳をしている間に川田さんがそう言うと、俺の前に座っている剃り込みの男性の自己紹介が始まった。


「ワタシはティーノ、ティーノ曽根ソネよ。この辺りでは剣姫ティーノって呼ばれているわ。坊や、よろしくね」


 確か、さっき川田さんにティーノさんと呼ばれていたな、本名なんだろうか。


 にしても、剣姫って誰が呼んでいるんだろう。


 そして川田さんが、あちらで料理をしているのが宮本剣道ミヤモト ケンドウ君、と長髪の和服男性を指差して言うと、その男性は何も言わずに頷いた。


 そんなこんなで配膳が終わり、川田さんとティーノ曽根さん、そして宮本剣道さんが俺の前に座る。


 そして俺の席の横には空席が一つ、その一つにもカレーが置かれている、多分寝ている人の分だろう。


 どうするんだろうか、なんて思っていると


「ご飯よ!ヒナちゃん!!」

 とティーノさんが手を鳴らしながらそう言った。


 振り向いて後ろを見ると、寝ていた人はむくりと起き上がっていた。


 黒いロングヘアーで、寝起きだと言うのにキリッと大きい目、そして色の白い肌のその女性はすごく美人だ。


 いや、美人というより美少女と言うべきなんだろうか。


 顔つきからして多分俺よりも年下、高校生ぐらいに見える。


「もう出来てたのね、あれ、団長は?」


 と目を擦りながら席に近づいてくる。


「団長ならもう別の迷宮に行ったわよ」


 とティーノさん。


 俺が座っている椅子を含めて全部で五つあるから、その団長という人を含めて、薔薇十字団は5人メンバーなんだろうか


 それにしても、この女の子も薔薇十字団のメンバーなのか?川田さんよりも意外だ。


 タピオカミルクティー片手にウィンドウショッピングでもしてそうな今時の若い子にしか見えない


 と、まさか俺のそんな思考が漏れたわけではないだろうが、女の子は俺の隣の席に座ると、大きい瞳でキッと俺を睨みつけて言った。


「それで、この男は誰よ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 剣姫の読みが「けんき」なら、剣鬼と誤解していい二つ名ですねとか言いそうかなと思いました。
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